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米国防総省がMicrosoftとの100億ドルクラウド契約を撤回した理由 JEDIの行方は「JEDI」から「JWCC」へ 変動の米国防総省クラウド【前編】

クラウドプロジェクト「JEDI」でMicrosoftと交わした契約を撤回し、新たに「JWCC」という取り組みを始める米国防総省。契約撤回の背景は。JWCCの狙いは。

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 米国防総省(DoD)はクラウドプロジェクト「JEDI」(Joint Enterprise Defense Infrastructure)において、2019年にMicrosoftと交わした100億ドル規模の契約を解除すると発表した。この契約については、競合他社によるロビー活動と法的な争いが何年にもわたって続いていた。同省は今回の声明で「クラウドサービス利用の拡大や要件の変化、クラウド市場の進歩により、JEDI契約はもはやニーズを満たしていないことが明らかになった」と述べている。

 JEDIに代わり、DoDはJWCC(Joint Warfighter Cloud Capability)という新しい取り組みを始める。MicrosoftとAWSの両社に提案を求め、他のクラウドベンダーも要件を満たせるかどうかを検討するという。

「JEDI」撤回の背景に“あの人”の影響が?

 2017年9月にJEDIが発表された当初、専門家はMicrosoftとIBM、Oracle、Googleを抑えて、AWSがこの契約を受注するとの見方でおおむね一致していた。OracleはDoDの契約先の選定プロセスに問題があるとして連邦裁判所に提訴したが、この訴えは2019年7月に棄却された。

 AWSも2019年に訴訟を起こし、当時のドナルド・トランプ大統領が調達プロセスに不当な圧力をかけたと主張した。2021年4月、同社の訴訟の継続が認められたが、JEDI契約が解除された場合にこの訴訟の行方がどうなるかは明確でなかった。

 JEDI契約の解除は、DoDの技術的なニーズを満たすために契約内容を刷新する狙いがあることに加え、政治的な影響を受けている可能性がある。コンサルティング会社Network Communications Architectsのプレジデント、フランク・ズベック氏は「JEDIにはトランプ前大統領が多少関与していたと推測する。こうした前政権と関わりのある政府プロジェクトは破棄される傾向にある」と話す。

 ズベック氏は、DoDがJEDIなどの大規模契約を単一ベンダーに発注して、教訓を得たのは「良かった」と考えている。JEDIで当初計画していた単一のクラウドサービスを用いたインフラよりも、クラウドサービスとオンプレミスインフラを組み合わせたハイブリッドクラウドを選択した方がメリットが大きいと判断したら、同省が複数のクラウドベンダーと契約する理由になる、と同氏は見ている。「JWCCは、JEDIの教訓を生かして複数ベンダーの契約が前提となるだろう」と同氏は語る。

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