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クラウドにアプリ8割移行の空港が明かす「オンプレミスに残すアプリ」とはベルファスト・シティー空港のクラウド戦略【前編】

英ベルファスト・シティー空港は、アプリケーションの大半をクラウドサービスで稼働させる見通しだ。ただし一部はオンプレミスインフラに残すという。同空港のIT幹部にクラウド移行の道筋を聞く。

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 英国の北アイルランドにあるジョージ・ベスト・ベルファスト・シティー空港(George Best Belfast City Airport)のシステムは、IaaS(Infrastructure as a Service)とオンプレミスのインフラの比率が、すでにほぼ半々に達した。2030年ごろにはワークロード(アプリケーション)のインフラの80%がIaaSになる見通しだ。

 空港のシステムは複雑で、膨大な数のアプリケーションやベンダー、パートナーが関わっている。ベルファスト・シティー空港のITディレクターを務めるブライアン・ロシュ(Brian Roche)氏によると、空港に常駐するパートナーは45社、アプリケーションは約600個に上る。

「クラウドにアプリ8割移行」でもオンプレミスに残すアプリとは?

 各アプリケーションは、クラウドサービスへの移行のしやすさという観点から、幾つかのカテゴリーに分類できる。例えばオンプレミスアプリケーションの中には、SaaS(Software as a Service)に移行できるアプリケーションがある。このカテゴリーのアプリケーションには、Salesforce(salesforce.com)の顧客関係管理(CRM)アプリケーションやDocuSignの電子署名アプリケーションなどが挙げられる。

 ロシュ氏は可能な限りSaaSを使用する方針を掲げる。ただしクラウドサービスを最優先に検討するクラウドファーストは「われわれにとって重要なわけではない」と同氏は強調する。「アプリケーションに最適なインフラを採用して、総所有コスト(TCO)と投資利益率(ROI)を極限まで効率化することを重視している」(同氏)

 ベルファスト・シティー空港は、セキュリティ強化とコンプライアンスのためにセキュリティベンダーQualysの製品とサービスを利用しており、脅威検知にはIBMのXDR(Extended Detection and Response)製品群「IBM Security QRadar XDR」を採用している。

 一部の要素をIaaSで実行しながら、他の幾つかの要素をオンプレミスインフラに残しているアプリケーションもある。Azinqの空港業務支援製品群「Airport Hive」とOracleのデータベース管理システム(DBMS)「Oracle Database」で構築した空港運用データベース(AODB)が、その一例だ。信頼性とセキュリティを理由に、中核業務に利用する機能はオンプレミスインフラで実行している。ただしOracle Databaseをアップデートする必要がある場合、DR(災害復旧)やテストのために、IaaSにオンプレミスデータベースをバックアップできるようにしている。

 監視カメラの運用は、コンプライアンスのためにオンプレミスシステムとクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドを採用している。具体的には、個人の特定が可能なオリジナルのカメラ映像はすべてオンプレミスインフラで保持し、AI(人工知能)技術を用いた匿名化処理をIaaSで実行している。


 後編は、ベルファスト・シティー空港がオンプレミスインフラで稼働させているアプリケーションと、その理由を説明する。

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