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クラウド推進の空港が明かす、脱オンプレミス困難な「空港特有のシステム」とはベルファスト・シティー空港のクラウド戦略【後編】

ベルファスト・シティー空港は各種アプリケーションのクラウドサービス移行を進める一方で、一部のシステムはオンプレミスインフラに残さざるを得ないと判断している。そのシステムとは何か。移行が難しい理由とは。

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 英国の北アイルランドにあるジョージ・ベスト・ベルファスト・シティー空港(George Best Belfast City Airport)は、クラウドサービスへのワークロード(アプリケーション)移行を進めている。ただし全てのアプリケーションをIaaS(Infrastructure as a Service)に移行させるのではなく、一部をオンプレミスインフラに残す見通しだ。前編「クラウドにアプリ8割移行の空港が明かす『オンプレミスに残すアプリ』とは」に続く本稿は、その理由を説明する。

 ベルファスト・シティー空港はNutanixのハイパーコンバージドインフラ(HCI)で稼働させているアプリケーションを、必要に応じて「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などのIaaSに移行させる。ただしベルファスト・シティー空港のITディレクターを務めるブライアン・ロシュ(Brian Roche)氏は、アプリケーションによってはオンプレミスインフラで運用し続けた方が、運用コストを抑制できると説明する。

脱オンプレミスが難しい、空港ならではの“あのシステム”

 NutanixのIaaS「Nutanix Xi Services」に移行する選択肢もある。「これまでNutanix製品をIaaSに移行する必要性はなかったが、必要があれば検討する」とロシュ氏は語り、「セットアップにそれほど時間はかからないだろう」と推測する。

 ベルファスト・シティー空港はVeeam Softwareのバックアップ製品で各アプリケーションのデータのバックアップを取り、そのバックアップファイルをIaaSで保管している。これにより、バックアップファイルをランサムウェア(身代金要求型マルウェア)から保護する狙いがある。

 空港には、クラウドサービスへの移行が困難なシステムもある。具体的には手荷物受け取り用のターンテーブルやX線装置など、空港特有のシステムだ。「典型的なITシステムの寿命が3年から5年、または7年ほどであるのに対し、これらのシステムは15年から30年使われる」とロシュ氏は説明する。同氏によると、例えば手荷物受け取り用のターンテーブルを新調する場合、1500万〜2000万ポンドのコストが発生する。

 これらのシステムは事実上、インターネットから「エアギャップ」(物理的に隔離)された状態だとロシュ氏は説明する。「今後は仮想的に隔離されたクラウドインフラを構築して、そこにシステムを移植できないかどうか、幾つか方法を検討していきたい」(同氏)

 ベルファスト・シティー空港にとって重要なことは、インフラの総所有コスト(TCO)の削減だけではない。アプリケーションを最適なインフラで利用することで、価値を発揮させることだ。現状、ベルファスト・シティー空港にはIaaSで運用するアプリケーションもあれば、オンプレミスインフラで運用するアプリケーションもある。ロシュ氏は2025年〜2030年ごろには、同空港のIaaSとオンプレミスインフラの比率が8対2ほどになると見込んでいる。

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