「スマホ寿命を意図的に短くする」あの悪習を、5Gベンダーはやめるべし:5Gユーザーの行動と電力消費【前編】
英国のサセックス大学は、「5G」とエネルギー消費に関する研究論文を発表した。同大学が5Gベンダーに対して発する重要な問題提起とは。
サセックス大学(University of Sussex)の研究者らは、「5G」(第5世代移動通信システム)がエネルギー消費に与える影響を調査した。5Gと環境破壊の問題に対して、同大学は興味深い問題を提起した。
5Gに求められるスマホ寿命やネットワーク設計の見直し
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低エネルギー社会の実現を支援する英国の研究機関CREDS(Centre for Research into Energy Demand Solutions)の出資を受け、サセックス大学の研究チームは「Renewable and sustainable energy reviews」(再生可能で持続可能なエネルギーの調査)と題した研究論文を発表した。この論文は人々の行動の変化や、消費と生産に関するエネルギー使用の変化など、5Gが与える影響を幅広く分析している。
サセックス大学の調査では、5Gがエネルギー使用に与える影響に関して評価するための情報が、驚くほど入手しにくい事実が明らかになったという。一方、明るい話題としては、5Gの普及でトラフィック(ネットワークを流れるデータ)が増加したとしても、ネットワーク全体のエネルギー消費量を横ばいで維持するか、減少させることができる可能性が分かった。
5Gのエネルギー消費への影響について、サセックス大学の研究者が具体的に警告を発しているのは下記の点だ。
- 研究の根拠とすべきデータや仮定が十分に開示されていない
- ネットワークインフラや端末だけでなく、5Gによってユーザー行動が変化する場合のエネルギー消費への影響が的確に説明されていない
- 経済活動や社会活動に対して、5Gが間接的に与えるエネルギー消費の影響が十分に説明されていない
新世代のモバイルネットワークが登場すると、ネットワークインフラの大規模な更新が必要になり、スマートフォンなど端末の交換も必要になる。この点は環境問題への重大な懸念だとサセックス大学は指摘する。同大学はこの問題に対して、下記を提案している。
- 互換性の高い部品を組み合わせてネットワークインフラを作る「モジュール設計」の検討
- 消費者が端末の修理をメーカーに通さず、自身でできるようにする「修理する権利」に関する法律制定
- スマートフォンの寿命をベンダーが意図的に短くする「計画的陳腐化」の禁止
ネットワークインフラに仮想化技術を取り入れるなど、システム全体の最適化につながる取り組みは、省エネルギー化や二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながるとサセックス大学は分析する。ただしこの点を含め、同大学の研究者らは、包括的な評価を下すにはまだ研究対象の範囲が十分に公開されておらず、重要な問題を見落とす可能性があると警告している。
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