「HDD」が再び売れまくる日 “30TB超”突入で何かが起きる?:転機を迎えるHDD【後編】
2022年にHDDベンダーの売上高が大幅減になり、HDDが売れない状況が明らかになった。だがHDDベンダーは状況をそれほど悲観しておらず、むしろ大容量HDDの開発を急ぎ出した。その意図とは。
HDD主要ベンダーの売り上げが2022年後半に驚くほどの大幅減となり、HDDの時代がついに終わるのではないかという予感を強くさせる。だが市場には浮き沈みがあり、結論は急げない。着目すべきは市場が減速することを受けて、大容量HDDの開発ピッチが加速したことだ。何が起きているのか。
HDDは“売れなくなった”だけでは終わらない
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連載:転機を迎えるHDD
HDDの将来予測
コンサルティング会社Coughlin Associatesのプレジデントを務めるトーマス・コフリン氏は、HDDの購入パターンは周期的だと指摘する。企業が保存するデータ量が今後も増加を続けることを想定すれば、HDDにはまだ需要があると考えられる。「SSDに比べて、HDDがコスト効率の良いデータ保管方法であることに変わりはない」とコフリン氏は付け加える。
2022年に主要HDDベンダーの売上高は落ち込み、直近のHDD市場は振るわない。ただしコフリン氏は「2024年以降、データセンターでHDDの購入が再び増える可能性がある」と話す。
調査会社NAND Researchのプリンシパルアナリストで、創業パートナーのスティーブ・マクダウェル氏も、「HDDのコストがSSDよりも割安なことが重要だ」とみる。企業がSSDの読み書き性能を必要としない限り、HDDに分がある。HDDは一般的にはSSDよりも容量単価が安く、同じコストでSSDよりも多くのデータを保存できるからだ。「市場が好転すればHDDは依然として有力なストレージの選択肢だ」とマクダウェル氏は語る。
HDDベンダーSeagate TechnologyのCEOデイブ・モズレー氏は、2023年度第2四半期(10〜12月期)の決算説明会で、市場が改善する兆しがあることを指摘した。中国では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の抑止を目的とした規制が解除され、サプライチェーンがゆっくりではあるが正常な状態に向かって進んでいる。「大容量のニアラインHDDの販売状況が徐々に改善されている」ともモズレー氏は話す。ニアラインHDDとは、頻繁に利用するデータを保管するHDDと、データを長期保存するためのHDDの中間的な役割を持ったHDDだ。
Seagate Technologyは、工場の稼働率が低下する状況を利用して、熱アシスト磁気記録(HAMR)の技術に注力し、プラッタ(データを保存する円盤)1枚当たり5TBを実証した。モズレー氏によると、Seagate Technologyは30TB超のHDDを、計画よりも早く2023年に発売できる見込みだという。
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