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小学校が困る「プログラミング教材」3大課題とは? 学芸大付属小金井小に聞く東京学芸大学付属小金井小学校に見る「プログラミング教育」の可能性と課題【中編】

プログラミング教材は、小学校がプログラミング教育を効果的かつ効率的に進める上で大いに役立つものの、幾つかの課題があることに注意が必要だ。どのような課題があるのか。東京学芸大学付属小金井小学校に聞いた。

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東京学芸大学付属小金井小学校の小池翔太教諭

 2020年度施行の学習指導要領は、小学校におけるプログラミング教育を必須化した。各校は「算数」「理科」「総合」など、各教科の中でプログラミング教育の要素を取り入れた授業を実施。児童のプログラミング的思考の育成に加えて、各教科の理解促進を図る。

 ITベンダー各社が販売するプログラミング教材をうまく利用することで、教員はプログラミング教育を効率的かつ効果的に進めやすくなる。ただしプログラミング教材の活用に当たっては、幾つかの課題がある。具体的にはどのような課題があるのか。どのような視点でプログラミング教材を選べばよいのか。東京学芸大学付属小金井小学校(以下、小金井小学校)の教諭を務め、教育現場におけるIT活用やプログラミング教育を精力的に推進する小池翔太氏に聞いた。

教育現場が使う「プログラミング教材」に潜む3つの課題

 小池氏は、プログラミング教材を活用する上での課題を大きく3つ挙げる。

 1つ目は「運用の負担」だ。教育機関向けのプログラミング教材として、プログラミングによってロボットを制御する「ロボットプログラミング」教材など、ハードウェアを使ったプログラミング教材が充実している。こうしたプログラミング教材は、ハードウェアを教室に持ち込んで配布したり、授業の終了時に回収して保管したりするのに労力が掛かる上、故障のリスクもある。

 アイコンなどの視覚的な画面要素を組み合わせてプログラミングする「ビジュアルプログラミングツール」の場合、ハードウェアの配布は必要ないものの、運用の負荷がなくなるわけではない。「Scratch」をはじめとする一般的なビジュアルプログラミングツールは、さまざまな用途に利用できる半面、教員が授業での具体的な活用方法を検討しなければならない。

 2つ目は「IT環境の制約」だ。例えば教育機関は、授業で使用するPCについて、セキュリティポリシーでUSBデバイスの利用をブロックしていることがある。この場合、USB端子経由でPCから制御プログラムを転送する必要があるプログラミング教材は、利用できなくなる。

 利用可能なWebブラウザを限定していたり、Webフィルタリングによって接続先のWebアプリケーションを制限していたりする教育機関は珍しくない。こうした制約下でも利用できるプログラミング教材でなければ、授業に生かすことは難しい。

 3つ目は「教科書の情報不足」だ。出版社によって、教科書に掲載するプログラミング教材関連の内容には濃淡があるという。教科書がプログラミング教材の活用方法に関する十分な情報を掲載していない場合、教員が自発的にプログラミング教材について調べ、実践する必要がある。

コラム:そもそも小学校の教員には時間も余裕もない

 プログラミング教材を活用するための準備や、授業内での活用には、それぞれ相応の時間が掛かる。小学校の教員にとって、こうした時間の確保そのものが大きな課題となっている。学習者が使う端末やネットワークを整備する「GIGAスクール構想」への対処に追われているだけではない。「道徳」の教科化や「英語」の必修化といった変化に対処する中で、時間的な余裕がなくなっているのだ。

 小学校では、各教科の授業内容にプログラミング教育の要素を組み込む必要がある。ただでさえ限られた授業時間の中で、新たな取り組みを進めることは容易ではない。プログラミングそのものに対する理解を深めることを目的とした授業をする場合は、各校が通常の授業とは別に時間を確保する必要がある。

プログラミング教材をどう選ぶか

 これら3つの課題をいかに解消するか――。プログラミング教材ベンダー各社は、自社製品/サービスにさまざまな工夫を凝らし、それぞれの課題に対処しようとしている。教育機関は、解消もしくは回避したい課題を明確にした上で、適切なプログラミング教材を選定することが重要だ。

 運用の負担については、ハードウェアではなくソフトウェアやWebアプリケーションを中心としたプログラミング教材を選ぶことで、少なくともハードウェア管理の負担からは解放される。その上で活用方法を検討する負担を軽減する上では、授業での具体的な活用例が明確なプログラミング教材を選ぶことが役立つ。

 小池氏が研究委員を務める特定非営利活動法人、みんなのコードが提供するビジュアルプログラミングツール「プログル」は、平均や公倍数といった具体的な学習内容に関するドリルを用意。「授業にプログラミングの要素をいかに盛り込むか」といった検討の負担を軽減できる。

 IT環境の制約を解消できない場合は、現状の制約を踏まえた上で、利用可能なプログラミング教材を探すことが必要になる。例えばScratch向けの音声センサーボードであるスイッチエデュケーションの「いぬボード」は、USB端子ではなくヘッドフォン端子とマイク端子によってPCと接続する仕組みを採用。USBデバイスを利用できないPCでも、問題なく接続できる(写真)。


写真 いぬボード(出典:スイッチエデュケーション)

 教科書の情報不足を補うには、プログラミング教材ベンダーをはじめとする外部の知見を活用する手がある。例えばLINEが出資する一般財団法人のLINEみらい財団は、オンライン形式の出張授業だ。「オンライン出前授業」を無償で提供する(2024年3月に提供終了)。「どんなに機能面で優れたプログラミング教材があったとしても、人的資源やツールの活用方法までをセットとして提供して支援しなければ、教育現場におけるプログラミング教育は定着しない」と小池氏は話す。


 後編は、小金井小学校が考える理想のプログラミング教育と、その理想を実現する事例を紹介する。

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