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QLCより「SLC」のSSDにあえて期待したくなる訳新たなSSDの道を開拓?【後編】

SSDの種類が多彩になり、SSDの用途を一言で語ることはできなくなった。「SLC」や「QLC」といった記録方式の違いを踏まえつつ、Micronが発表した新SSDで用途を考えてみよう。

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 企業が「SSD」をさまざまな用途に使うようになってきたのと同時に、SSDの種類も多彩になった。記録方式としては「SLC」(シングルレベルセル)や「TLC」(トリプルレベルセル)、「QLC」(クアッドレベルセル)などがある。Micron Technologyが新たに発表した2つの新SSDは、SSDの用途において興味深い選択肢を提示した。具体的に見てみよう。

QLCじゃなく「SLC」でSSDの使い方が変わる可能性

 Micronが2023年5月に発表した、データセンター向けの新SSD「Micron XTR NVMe SSD」(以下、Micron XTR)には、記録容量が960GBと、1.92TBの2つのラインアップがある。Micron XTRは、メモリセルを176層に積層し、記録方式にはSLCを採用したNAND型フラッシュメモリを搭載する。SLCは、1つのメモリセルに1bitを格納する記録方式だ。

 SLCを採用していることから、Micron XTRはTLCやQLCを採用したSSDよりも、読み書き性能や耐久性に優れることが特徴だ。1つのメモリセルにTLCは3bit、QLCは4bitを格納する。メモリセル当たりのビット数が多くなるほど、読み書き速度や耐久性が下がる傾向にある。

 調査会社Gartnerのリサーチ担当バイスプレジデントであるジョー・アンスワース氏は、「Micron XTRはストレージクラスメモリ(SCM)に近い特性を持つ」と見ている。ストレージクラスメモリとは、メインメモリとNAND型フラッシュメモリの中間的な役割を果たせるメモリを指す。

 Micron XTRをSCMのように使うのであれば、MicronがMicron XTRと同時に発表した新SSD「Micron 6500 ION NVMe SSD」(以下、Micron 6500 ION)との併用も考えられるという。Micron 6500 IONは保管容量とコスト効率を重視し、TLCのNAND型フラッシュメモリを採用したSSDだ。アンスワース氏は「Micron XTRをMicron 6500 IONの『書き込みキャッシュ』(書き込み時の一時保管)として使うことで、SCMの代替になり得る」と話す。

 書き込みキャッシュの他、ブート(起動)用や、OLTP(オンライントランザクション処理)など、ニッチな用途にもMicron XTRを使える可能性があるという。「Micron XTRがSCMを代替する製品として認知されれば、Micron製品の活用用途が広がる一助になる」(アンスワース氏)

 調査会社IDCのリサーチ担当バイスプレジデントであるジェフ・ヤヌコビッチ氏は、「Micron XTRは、SLCのSSDに見合った価格設定になる」と語る。コスト効率を高める上で選択肢になるのは、他のSSDとの併用だ。

 特にQLCが鍵になると考えられる。「Micron XTRのような書き込み性能を重視したSLCのSSDを書き込みキャッシュに使うことで、QLCとSLCの利点を両立できるようになる」(ヤヌコビッチ氏)。こうした使い方が一般的になるには、QLCの活用がより広がっていることが前提になる。

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