KFCはなぜパンデミックでも業績を伸ばせたのか? CTOが語る「DXの理由」:DXを失敗させないための基本【第8回】
世界中に店舗を持つKFCはDXに取り組んだ結果、パンデミックを経験したにもかかわらず売り上げを増加させることができた。その具体的な取り組みを紹介する。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを企業の利益向上につなげるにはどうすればよいのか――。ファストフードレストラン企業Yum! Brands傘下のKFCは、DXを通じて顧客体験と従業員体験の両方を改善し、業績を伸ばしてきた。特筆すべきは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を機に売り上げを伸ばしたことだ。何の取り組みが成果につながったのか。
KFCはパンデミックをどう利用したのか?
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連載:DXを失敗させないための基本
- 第1回:「デジタル化とDXはそもそも違う」問題 まず何を理解すべきか?
- 第2回:「DXで人を動かす」ための3つのポイント
- 第3回:「DXの予算」を賢く使うには? あつれきを生まない“絶妙なバランス”の鍵
- 第4回:アジャイルの次に考えるべき「プロダクト思考」とは何か?
- 第5回:老舗の小売業者に学ぶ「なぜDXをするのか」という本質的な問題
- 第6回:老舗小売業者がAzureと“あのツール”でDXを始めた理由
- 第7回:「DXはなぜコミュニケーションの問題でもあった」のか? CIOが本音を語る
DXと顧客体験の向上
KFCがDXを進める上で設定した目標の一つは、同社の商品を誰もがどこからでも購入できるようにすることだった。同社はこの目標を達成するために、3つの取り組みを軸にした。
- 全ての業務をデジタル化
- パーソナライズされた消費者体験を創出するためのAI(人工知能)ソフトウェアの導入
- 業務の自動化
KFCはパンデミック以前にこれら3つの取り組みを開始した。KFCで最高技術責任者(CTO)を務めるジャティン・チャンドワニ氏によると、同社は2018年からデジタルを利用した流通ルートの開発に取り組み始め、パンデミックを機にその動きを加速させた。その結果、売り上げ全体の5%未満だったデジタルサービスを通じた売り上げは、全体の3分の1ほどを占めるまでになった。
チャンドワニ氏は、KFCにおけるDXの目的を、以下の2つに分類して説明する。これらの取り組みは「デジタルの方がより簡単だ」と同氏は指摘する。
- 消費者体験を最適化すること
- モバイルアプリケーションやレストランに設置するキオスク端末(情報を提供するタッチ操作が可能な端末)といったさまざまな接点を通じて、一貫性を持った消費者体験を提供する。
- より良いサービスを提供し、既存のサービスに付加価値を付けること
- 消費者との接点から収集したデータを通じて、消費者の行動をより効果的に理解する。
DXに取り組んだ結果、インフレによる消費者需要の縮小が見られる英国においてKFCの利益率は向上した。消費者の行動が変わったからだ。キオスク端末を導入した店舗では、消費者は物理的なカウンターで従業員と対面しながら注文する場合に感じるプレッシャーを感じることなく、自分のスペースと時間で注文できる。チャンドワニ氏によれば、注文金額は平均20%上昇した。モバイルアプリケーションを使用した場合には、注文金額は平均35%上昇したという。
第9回は、KFCの取り組みが消費者体験にどのように影響したのかをより具体的に紹介する。
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