「うちのDX、やっぱり駄目ですね」 DXを失敗に導いた誤解とは:11個の“失敗ポイント”から学ぶDX【前編】
DXを進める上では、成功した企業の事例だけではなくDXを失敗に導くポイントも知っておくことが役に立つ。DXに取り組む従業員が誤解しがちなポイントと、失敗するDXのタイプを3つ紹介する。
「デジタルトランスフォーメーション」(DX)は、ビジネスを成功させるために不可欠なキーワードとして浸透した。世界全体の傾向として、企業は今後ますますDXに投資するようになると見込まれる。
投資コストや企業の努力が注ぎ込まれているにもかかわらず、DXの失敗が後を絶たない。コンサルティング会社McKinsey & Companyが2023年5月に公開した調査レポート「How to implement transformations for long-term impact」は、走り出したDXを「走らせ続けること」が企業の課題であると指摘する。同レポートは、2022年8月に地域、産業、企業規模、役職、在職期間を問わず、企業に勤務する従業員908人に実施した調査結果に基づく。同レポートによると、回答者の56%が「自社がDXにおいて定めた目標をほとんどもしくは全て達成できた」と答えた。一方で「DXの目標を達成した状態をどのくらいの期間維持できたか」という質問に対して、「3年以上維持できた」と答えたのは12%だった。DXを進めるプロセス全体を考えたとき、プロセスの後半になるにつれてDXの取り組みが失速し、「DXで定めた目標値に対して平均約42%の利益を獲得できない」という答えもあった。
本稿は、DXに取り組む従業員が誤解しがちなポイントと、失敗するDXのタイプを3つ紹介する。
DXが駄目になるのは“あのせい”ではない
コンサルティング企業PSG Consultingのマネージングディレクター、アントニー・エドワーズ氏は、DXが失速する理由の一つとして、「DXをITの問題だと誤解している」ことを挙げる。DXは企業文化、企業のDNA、ビジネスモデルに関わる問題であるため、ビジネスとCX(顧客体験)の観点からアプローチすることがDXの成功につながるというのがエドワーズ氏の考えだ。
経営コンサルティング会社Lotis Blue Consultingのパートナーであるジョン・キング氏は、「進行中のDXの計画が完了しているかどうかや成果が出ているかどうかを検証せずに、はやりのテクノロジーに飛び付く企業が散見される」と指摘する。
調査会社Gartnerのディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストであるクリスティン・モイヤー氏は、失敗するDXのタイプを以下の3つに分類する。
- ビジネスを進展させない
- 手を付けずに置き去りにしてきた課題を、DXの看板を掲げた上で新しい取り組みとして演出する。
- 規模も効果も限定的
- DXと言えるかどうかの判断が難しい小規模な取り組みを実施し、ビジネスに新たな価値を生み出すことには注力しない。
- 製品やサービス開発の失敗
- DXを通じて新製品やサービスを立ち上げようとしたが失敗し、中止を余儀なくされる。
DXは成果が出るまで時間が掛かる。「自社の状況に即したペースでDXを進めることが大切だ」とモイヤー氏は語る。
モイヤー氏は、DXを実施する中で取り組むべきことについて、次のように指摘する。「まずは顧客数や取引件数といった早期から計測できる指標を使ってDXの成果を測定する。その後、売上高や純利益率といった指標も使ってDXの成果を検証するとよい」
中編は、DXの専門家が語る、DXの失敗を誘発する11個のポイントを紹介する。
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