AWS、Azure、Googleの「IAM」を比較 見落としがちな“微妙な違い”とは:主要クラウドのIAMを比較する【中編】
IT管理者はクラウドサービスのユーザーを管理するために「IAM」を利用する必要がある。主要クラウドサービスが備えているIAMツールを比較する。
「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」(Azure)、「Google Cloud」といった主要なクラウドサービス群は、「IAM」(IDおよびアクセス管理)ツールを提供している。各ベンダーによってサービスの仕組みには若干の違いがある。AWS、Azure、Google CloudにおけるIAMの違いを比較する。
AWS、Azure、Googleにおける「IAM」の考え方や用語の違い
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主要クラウドベンダーのサービスでは、リソースを「階層」に分けて配置できるようになっている。IAMツールによるユーザーのアクセス管理も、階層をベースとしている。IT管理者は組織内の全ユーザー、あるいは特定のグループや、個々のユーザーに対して権限を割り当てられる。
階層に関する用語は、ベンダーによって異なる。AWSでは最上位階層を「アカウント」と呼び、Azureでは「組織」という用語を用いる。Google Cloudではこれを「プロジェクト」と称する。
同じ用語でもクラウドサービスによって意味が異なる場合もある。例えばGoogle Cloudでは、「プリンシパル」という用語はGoogleアカウントを持つエンドユーザーや、アプリケーションなどの人間以外のユーザー、グループを指すことがある。GoogleアカウントはGoogleの各サービスにアクセスするためのアカウントであり、Google Cloud内に存在しないアカウントも対象になる。一方、AWSではプリンシパルはAWS内に存在するIDを指し、外部のユーザーには適用されない。
階層の構成方法
クラウドベンダー間で、ユーザーが階層をどのように構成するかに関して若干の違いがある。例えば、AWSやGoogle Cloudでは、同じ企業が複数のアカウントやプロジェクトを持つことが一般的だ。Azureは、ほとんどの企業が組織を一つだけ構成することを前提に設計されている。ただし、Azureでは組織内で複数のテナントを作成し、異なるユーザーグループやIAMポリシーで区別することは可能だ。
これらの階層の概念や用語の違いは、各クラウドベンダーの運用するエコシステム(協業や競争の体制)の違いを反映している。Azureで利用できるIAMツール「Microsoft Entra ID」(旧Azure AD)は、ID・アクセス管理システムの「Active Directory」(AD)をベースとしている。ADはオンプレミスシステムのユーザーが利用する前提で設計されているため、各企業が単独で運営する構成を前提としている。
Google Cloudにおけるプリンシパルの対象が広いのは、Googleが提供する他製品やサービスとの連携が考慮されているからだ。
価格とサービス制限
主要なクラウドサービス群はIAMツールを基本的に無料で提供している。しかし、アカウントやプロジェクト、組織ごとにサポートするユーザー数や権限セット数に制限がある。その制限の範囲ならば、AWSとGoogle Cloudが提供するIAMは無料だ。
Microsoft Entra IDには有料版が存在する。有料版では無料版よりも高度な認証機能の利用が可能になるが、IAMの基本的な機能を使うに当たっては、ほとんどの場合は無料版で問題ない。
後編はIAMの選び方について解説する。
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