「ローコード」には限界が……それでも“市民開発”が期待される理由:ローコード/ノーコード開発の利点と注意点【第2回】
ローコード/ノーコード開発ツールに対する期待は高まる一方で、「限界がある」という意見も存在する。実際のところ何に役立ち、どのようなリスクを抱えているのか。“市民開発”に踏み切る企業の理由とは。
企業はプログラミングスキルがない「シチズンデベロッパー」(市民開発者)によるアプリケーション開発の実現に興味を示し始めている。これを実現するのが、最低限のソースコードを記述する「ローコード開発」、ソースコードを記述しない「ノーコード開発」といった開発手法だ。さまざまなベンダーがローコード/ノーコード開発ツールを市場に投入する中で、ローコード/ノーコード開発ツールに対する有識者の意見は分かれている。
「ローコード開発」の限界と可能性 企業が“市民開発”に期待する理由とは?
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連載:ローコード/ノーコード開発の利点と注意点
ローコード/ノーコード開発事例
データ統合ベンダーJitterbitのバイスプレジデント兼EMEA(欧州、中東、アフリカ)ゼネラルマネジャーであるジュースト・デボット氏は、ローコード開発ツールに対して批判的な見解を示す。デボット氏によれば、全てのローコード開発ツールは必ずしもローコード開発の原則に準拠しているわけではない。ローコード開発ツールで高度な機能や細かい要件を実装するには限界があり、最終的に誰も使わないアプリケーションを生み出しかねない。「業務アプリケーションと自動的に、かつ過不足なく連携できるローコード開発ツールを使うことで、市民開発のリスクを回避できる可能性がある」と同氏は付け加える。
一方で調査会社Gartnerのシニアマーケットリサーチスペシャリストであるバルシャ・メータ氏は、アプリケーションの迅速な提供と、自動化ワークフローのカスタマイズに対する企業の要求は高まっていると考える。「企業はますますローコード開発に目を向け、ITが専門の開発者と非IT分野に携わる従業員の両方に多様なローコード開発ツールを提供している」とメータ氏は言う。この動きは、現代のビジネスに必要なデジタルコンピテンシー(テクノロジーを効果的に使う能力)と、迅速な開発および提供を目標とするものだ。
音楽配信サービス「Spotify」を運営するSpotify Technologyが、従来のソースコードベースの開発から市民開発に移行した背景にも、同様の考え方が存在する。よりアジャイル(小規模な変更を短期間のうちに繰り返す手法)かつ迅速な市場へのサービス投入を実現するため、Spotify Technologyはロボティックプロセスオートメーション(RPA)の専門部署であるセンターオブエクセレンス(CoE:組織横断的な取り組みを実施する拠点)を設立した。RPAを使用したコーディング、ITガバナンス(管理体制)、開発、セキュリティ、サービスセンターの構築に取り組み、開発能力を向上させるというアイデアに引かれたという。
Spotify Technologyが選んだのは、RPAベンダーUiPathの同社名ツールへの移行だった。移行の目的は、より集中的な自動化を実現するとともに、開発チームの負担を軽減することだった。どの部門でもアプリケーションを開発できるようにすることで、ビジネスをより迅速にし、アジャイルかつ積極的なサービスの提供が可能になるという狙いがあった。
次回は、ソフトウェアベンダーが考えるローコード/ノーコード開発の効果を取り上げる。
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