TLC、QLC、PLCによる「SSD進化論」にもう期待しては駄目なのか:停滞するストレージの技術進化【中編】
ストレージの技術進化が停滞している。これはストレージベンダーの研究開発への投資が消極的になったことに加えて、技術進化が限界に達しつつあることに関係している可能性がある。
ストレージベンダーは2023年、他社とのパートナーシップを通してソフトウェアの開発に力を注いだ。しかしハードウェア面で、画期的な新技術を搭載したストレージは登場しなかった。
ストレージ分野で停滞が見られる原因の一つとしてストレージ製品の購入額が減少したことが挙げられるが、根本的な原因はハードウェアの技術にある。例えば1個のメモリセル(データの記憶素子)に4bitを格納する記録方式「QLC」(クアッドレベルセル)がある。
TLC、QLC、PLCによる進化の現実
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連載:停滞するストレージの技術進化
ストレージ技術の進化
ストレージベンダーが資金調達に苦労していることに加えて、QLCのような、NAND型フラッシュメモリ技術の進化が限界に達しつつあることが問題だと一部の専門家は見ている。
主要なストレージアレイベンダーはQLC方式のNAND型フラッシュメモリを搭載した製品を提供している。QLCは、メモリセル当たりのビット数で「TLC」(トリプルレベルセル)を上回る。TLCは1個のメモリセルに3bitを格納する方式だ。
企業向けQLC方式のSSDは、2018年頃に市場に出回り始め、これを採用するのは一般的になりつつある。しかしQLCよりもセル当たりのビット数が多い「PLC」(ペンタレベルセル)のSSDフラッシュメモリは、導入が進んでいない。PLCは1個のメモリセルに5bitを格納する方式だ。
「PLCは従来の方式よりも動作の安定性が下がるため、ベンダーは冗長性を十分に確保するための仕組みを実装しなければならない」。調査会社Forrester Researchでアナリストを務めるブレント・エリス氏はそう説明する。こうした状況は、ストレージ新技術の導入が進まない要因となっている。
その結果、「ストレージ分野のイノベーション(技術革新)が悪循環に陥っている」とエリス氏は言う。同氏はCPUを例に挙げる。かつては、半導体集積回路のトランジスタ数が毎年または隔年で倍増していたが、2024年現在はそのような状況ではない。
そうした中でCPUのオフロード(負荷軽減)をするための「スマートNIC」や「DPU」(データ処理装置)、AI(人工知能)技術を動かすための「GPU」(グラフィックス処理装置)といったデバイスの進化が目立つようになった。「ストレージよりもサーバ分野のイノベーションが活発になる」とエリス氏は考えている。
次回は、技術進化が停滞する中でも期待が寄せられるストレージ分野の動向を紹介する。
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