検索
特集/連載

CentOS後継争い「Rocky Linux」対「AlmaLinux」の勝負は“あれ”で決まるLinuxディストリビューションの選択肢【後編】

Red Hatが「CentOS Linux」を廃止したことで、企業は「RHEL」の代わりとして利用できる安定したディストリビューションを探すことになった。「Rocky Linux」「AlmaLinux」のどちらが選ばれるのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 「CentOS Linux」は、Red Hat(2019年にIBMが買収)が提供するOS「Linux」のディストリビューション(配布パッケージ)「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の無償版だ。Red HatがCentOS Linuxを廃止する方針を定めたとき、CentOS Linuxユーザーは衝撃を受けた。

 CentOS Linuxの代わりとしてRed Hatが打ち出した「CentOS Stream」は、安定性に欠けるリリース方式を採用しているため、本番環境での利用には不安が残ると考える企業もある。そうした企業にとって有力な移行先になるのが、CentOS Linux廃止宣言後に誕生した2つの新しいディストリビューション「Rocky Linux」と「AlmaLinux」だ。両者の共通点と違いを基に、どちらが選ばれるのかをまとめる。

「Rocky Linux」対「AlmaLinux」の勝敗はこれで決まる

 以下の点において、Rocky LinuxとAlmaLinuxは似ている。

  • 企業の本番環境での運用をターゲットにしている
  • 約8〜10年のサポート期間がある
  • 定期的なアップデートがある
  • パッケージ管理システムとして「RPM Package Manager」(RPM)と「Dandified Yum」(DNF)を使用する
  • RHELと同じ方法でアプリケーションを管理する
  • 同じセキュリティ機能を使用する
    • ファイアウォール管理機能「firewalld」
    • パケットフィルタリング機能「iptables」
    • セキュリティモジュール「SELinux」
  • ハードウェアのアーキテクチャに共通点がある
    • x86_64
    • AArch64
    • ppc64le
    • s390x
  • 以下のデフォルトリポジトリ(保管場所)がある
    • OSのコアソフトウェアパッケージを含む「BaseOS」
    • 追加のアプリケーションやプログラミング言語、データベースを含む「AppStream」
    • その他、RHELでは利用できないパッケージを含むリポジトリ
  • GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)でインストールする場合、デスクトップ環境「GNOME」(GNU Network Object Model Environment)を用いる
  • Webサーバやデータベースサーバなど、企業での用途が似ている

Rocky LinuxとAlmaLinuxが違う点

 Rocky LinuxとAlmaLinuxが違う1つ目の点はセキュリティだ。どちらもOSを安全に起動するためのセキュアブート機能、アクセス制御を強化するSELinuxなどの機能を有する。一方でAlmaLinuxは、安全なシステムを構築するための指標「CIS Benchmarks」に重点を置いている。

 2つ目の違いは資金調達方法が異なることだ。この点は、企業がどちらのディストリビューションを選ぶのかの決め手になり得る。

 Rocky Linuxはコミュニティー主導型だ。2022年、Rocky Linuxの開発を手掛けるCtrl IQ(CIQの名称で事業展開)は2600万ドルの資金を調達した。CIQは2020年設立の企業であり、こうした新興企業との取引を望まない企業にとっては、Rocky Linuxの採用を見送る理由になり得る。

 ただし新興企業が関わっていることは、Rocky Linuxの価値を下げる理由にはならない。CIQは新興企業ながら急成長を遂げ、IT業界では一定の評判を得ている。CIQの創設者兼CEOであるグレゴリー・クルツァー氏は、CentOS LinuxとRocky Linuxの開発者だ。「CentOS Linuxが取り込んだ相当数のファンがいるので、Rocky Linuxのコミュニティーは成長し続けるはずだ」とクルツァー氏は展望する。CentOS Linuxの改善に専念してきた同氏の実績を見れば、同氏がLinuxコミュニティーにどれほど貢献しているのかを感じることができる。

 AlmaLinuxは、非営利団体AlmaLinux OS Foundationが開発と運営を担っている。商用Linuxディストリビューションを扱うCloudLinux、WebツールベンダーWebPros Investments、Webホスティング企業BlackHOSTといったスポンサー企業の出資が、AlmaLinuxを支えている。


 Rocky LinuxとAlmaLinuxは、どちらもCentOSやRHELの代替になり得る。迷っているのであれば、両方をダウンロードしてインストールし、どちらが自社のニーズに合うのかを試してみるとよい。

TechTarget発 先取りITトレンド

米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る