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なぜ「メインフレーム」はいつも“時代遅れ”だと見なされるのかそれぞれの角度から見るメインフレーム【前編】

メインフレームの“独特の話題”には、熟練の筆者でさえも動揺してしまうことがある。その話題は、メインフレームが「時代遅れだ」と批判される状況にも関係している。メインフレームが誤解される理由を説明する。

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 筆者はIT担当者としてのキャリアを通じて、さまざまなOSやプログラミング言語、データベース、さらには多種多様なハードウェアとアプリケーションを扱ってきた。大規模ソフトウェアプロジェクトの成功を体験し、一方ではつまずいて厳しい教訓を学んだプロジェクトもあった。このキャリアも終盤に差し掛かり、ITに関する情報によって心が乱れることはない。

 ただし、例外が1つある。話題がメインフレームに及ぶ場合だ。このときばかりは、メインフレームに関する“独特の話題”に、熟練の筆者でさえも動揺してしまうことがある。これはメインフレームが訳もなく「時代遅れだ」と批判の的になることがあるのとも関係している。その点について以降で触れる内容は、メインフレームに関わってこなかった若手にも知っておいてもらいたい問題だ。

メインフレームが“時代遅れ”だと見なされる原因はこれだ

 IBMのメインフレームの世界に迷い込んだとき、筆者はいつも能力不足を痛感する。その理由は、メインフレームの運用担当者が独特の会話を交わしているという印象を持つためだ。メインフレームには、評価基準がまちまちな多種多様な事象がある。例えば、セキュリティ、スケーラビリティ(拡張性)、回復力についての話題がある。IT分野において最悪かつ深刻で大きな不安になり得る話題であっても、1964年から続くメインフレーム60年の歴史に照らして会話が展開されると、違った様相を帯びてくるのだ。Intelの「x86」系プロセッサ搭載サーバの管理者なら不眠不休の対処を迫られる事態でも、その大半はメインフレームの運用担当者にとっては取るに足らない事態だ。

 とはいえ、人はメインフレーム(もっと正確にいうとIBMの「IBM Z」)と聞けば、古さを感じがちだ。メインフレームは、既に他界したエンジニアが何十年も前に記述したアプリケーションの基盤として使用されている。2024年の現時点で前途有望な開発者には全くなじみがなくても不思議ではない。

 だが、そうした開発者がシステムの仕組みを掘り下げて考える際、

  • LPAR(論理区画)
  • Sysplex(クラスタ技術)
  • JCL(ジョブ制御言語)
  • RACF(リソース・アクセス管理機能)
  • VTAM(ネットワーク制御ソフトウェア)
  • SMF(システム管理機能)
  • ISPF(対話式システム生産性向上機能)
  • WLM(ワークロード管理)
  • RMF(リソース測定機能)
  • SDSF(システム表示・検索機能)

といった言葉を淡々と話すメインフレーム運用担当者を前に困惑して、頭をかきむしることになり兼ねない。こう書きながら、筆者もこうした専門用語の大半を理解していない。

 このような背景から、IBM Zに不慣れなIT担当者がIBM Zについて語るときは、「異なる」「古い」「老朽化」といった言葉を使いがちだ。その表現は状況を的確に捉えているとは言えず、筆者はこれに危機感を抱いている。

誤った通念を打ち破り、現実の懸念と向き合う

 実際には、IBM Zは最先端のシステムの一つだと言える。IBM Zは、相互運用性や可観測性、セキュリティなどのさまざまな機能を備える。従来のスケーラビリティや回復力、セキュリティに加えて、クラウドサービスとAI(人工知能)技術の要素が加わり、最新メインフレームは理論上、企業が抱えるさまざまな厳しい要件に応じられるシステムになるはずだ。

 この見解を裏付ける事例は至るところに存在するので、メインフレームに対して懐疑的な人に少しでも注意を払ってもらえば、この見解を理解してもらうことは難しくない。だが、残念ながら限界はある。

 メインフレームがもたらすメリットについて説き伏せることができるとしても、スキルについては問題に直面することになる。メインフレーム担当者の大多数が定年退職の年齢に近づいているという事実から逃れることはできず、若い世代のIT担当者はその後継者になることにほとんど関心がない。だが、その状況はこれから変わっていかなければならない。


 次回は、メインフレームのスキルの観点で何が求められているのかを解説する。

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