「大容量SSD」がまさに旬? “100TB超え”でHDDを置き去りに:ニーズが高まる大容量SSD【前編】
SSDベンダー2社が、2024年後半にSSD大容量化の進化を象徴する新モデルを発表した。SSDが一段と大容量化する背景にあるニーズと、大容量化に貢献する技術とは。
データ読み書きの高パフォーマンスで注目されてきたSSDだが、近年はむしろ大容量化の進化が際立っている。SSDの容量増大のペースはHDDを優に上回っている。SSD大容量化の進化が加速する背景には、大容量化のための技術の採用が進んでいることと、大容量SSDのニーズが特定の用途で高まっていることなどがある。2024年11月にSSDベンダー2社が発表したSSD新モデルは、まさにそうした背景から開発されたものだ。
「大容量SSD」の最前線を行く新モデル2種
Micron TechnologyとSolidigm(SK hynixの子会社でIntelのメモリ事業を継承)はそれぞれ、NAND型フラッシュメモリのさまざまな技術を採用しながらSSDの容量を大幅に増大させている。
2024年11月、Micronは容量61.44T(テラ)BのSSD「Micron 6550 ION」(以下、6550 ION)を発表した。同SSDでは以下の技術が容量60TB超えに貢献している。
- 容量61.44TB
- 3D(3次元) NAND型フラッシュメモリ最新世代を採用
- Micronの3D NAND型フラッシュメモリ第8世代「Micron G8 NAND」を採用
- 第8世代はメモリセル(記憶素子)を232層に積層
- トリプルレベルセル(TLC)を採用
- TLCは1つのメモリセルに3bitを記録する方式
同じく2024年11月、Solidigmはデータセンター向けSSD「D5-P5336」の新モデルとして容量122.88TBの製品を発表した。同社が2023年に発表していたD5-P5336のモデルは、61.44TBが最大容量だった。D5-P5336の新モデルの特徴は以下の通り。
- 容量122.88TB
- クアッドレベルセル(QLC)
- QLCは1つのメモリセルに4bitを記録する方式
- 192層に積層したNAND型フラッシュメモリを採用
調査会社IDCのアナリストであるジェフ・ジャヌコビッチ氏によると、ストレージ分野では一定のスペースでより多くのデータを保存できるようにする高密度化や、消費電力の削減の必要性が高まっている。その背景にある要因の一つが、AI(人工知能)技術を活用したアプリケーションの台頭だ。そうしたAIアプリケーションの普及はまだ初期段階にあるものの、電力消費と記録密度はすぐにでも対処しなければならない重大な課題となっている。
MicronとSolidigmが発表した大容量SSDは、AI関連では以下のような用途に活用できる。
- AIモデルの学習
- AIモデルのチェックポイント(トレーニング中のAIモデルの状態を一定間隔で保存するプロセス)
- AIモデルの推論
主要なクラウドベンダーを含めて、データセンターを運営する事業者はストレージの密度を向上させる手段を求めている。「需要は今まさに高まっているので、記録密度を高めるための選択肢が増えることは間違いなくプラスになる」とジャヌコビッチ氏は語る。
後編は、SSDの大容量化が一段と求められるようになった背景や、大容量化の最新動向を紹介する。
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