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「学校のスマートフォン禁止」を求める声が絶えない理由スマホ禁止に踏み切る学校【後編】

健全な学校づくりのために、子どものスマートフォン利用を規制する動きがある。ただしその決定が不十分だと指摘する声もある。スマートフォン利用の何が問題視されているのか。

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 スマートフォンの利用が子どもに与える悪影響を懸念する声が強まっている。そうした中、英国では2023年10月にOSA(Online Safety Act 2023:オンライン安全法)が成立。それを受けて学校での利用規制の動きは広がっているものの、一部ではより厳格な法規制を求める声がある。

新たなオンライン規制の必要性

 保護者や教職員だけではなく、市民グループも英国のOSA施行案に対して不満を表明している。OSAに関する協議が続く中、インターネットの安全な利用に関するさらに厳格な法規制の必要性を主張している。

 デジタルセーフティー慈善団体5Rights Foundationは、「起草中の英国情報通信庁(Ofcom)の提案は規制が緩く、不完全だ。子どものニーズや議会議員、市民社会、保護者、教職員の期待に応えられない」と述べる。

 技術省大臣のピーター・カイル氏も、公共放送局BBCのローラ・クエンスバーグ氏に対し、保守党政権が主導するOSAに存在する問題点を解消する意向を明らかにした。「IT業界は製品の安全性を市場に出す前に証明する義務がない唯一の業界だ」というのがカイル氏の見解だ。

 より厳格な法規制を求める声は一般市民からも高まっている。Molly Rose Foundationは2024年7月、英国の成人4263人を対象にしたオンライン調査を実施した。調査対象のうち895人は、18歳未満の子どもを1人以上持つ親だ。調査結果によると、保護者の84%と成人の80%がオンライン安全対策を強化する新法を支持している。新たなOSAが、国民や保護者から支持を得ていることが明らかになった。

 労働党議員のジョシュ・マカリスター氏は最近、一般議員法案を提出した。この法案によって、学校でのスマートフォン使用に関する法定指針が提供されることと、インターネット成人年齢(特定サービスでのアカウント作成に必要な最低年齢)が13歳から16歳に引き上げられる可能性がある。元教師であるマカリスター議員は、この政策が恵まれない環境の子どもにとって特に重要であることを強調した。

 マカリスター氏の一般議員法案は、Ofcomの権限を強化することも目指すものだ。これは「Instagram」「TikTok」などのSNSが持つ、依存性のある設計に対処するための行動規範を執行できるようにすることを目的としている。

 依存性のある設計に対する懸念は、安全なインターネットの利用に関する英米両政府の共同合意にも反映されている。両国政府はオンラインサービスの透明性と説明責任を強化し、リスクに基づくアプローチと安全性、プライバシー、包括性を考慮した設計の採用が重要だと説明する。これらの要素を設計から開発、展開までの全過程で取り入れることが、特に子どもの安全なインターネットの利用と福祉を保護するために不可欠だというのが両国政府の認識だ。

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