「Python」だけじゃない AI時代のエンジニアに求められるスキルとは?:ソフトウェアエンジニアの実態を探る【後編】
採用市場で高い人気を誇るソフトウェアエンジニアやプログラマー。これらの職種を目指す上で求められるスキルとは。プログラミング言語からAI活用のトレンドに至るまで、現場で必要とされるスキルを探る。
ソフトウェアエンジニアやプログラマーは、採用市場で常に高い需要がある職種の一つだ。これらの職種を目指す上で、「実際にどのようなスキルを身に付けるべきか」に悩む人は少なくない。AI(人工知能)やクラウドをはじめとした技術革新が加速する中、いま実際に現場で求められているスキルとは何かを探る。
エンジニアに求められるスキル、Pythonの他は?
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ソフトウェアエンジニアやプログラマーの求人で重視されるスキルは以下の通り。
- 需要が高いプログラミング言語
- 最も需要の高いプログラミング言語とされているのが「Python」だ。習得しやすく扱いやすいことに加え、汎用(はんよう)性に優れる点が評価されている。AI開発に適している点も大きい。「Java」「JavaScript」なども人気がある。
- フルスタック開発
- フロントエンドとバックエンドの両方の開発経験を持つフルスタックエンジニアの需要も増加している。幅広い技術スタックへの理解が求められる。
- DevOps
- DevOps(開発と運用の融合)の実践経験も、特にシニアレベルの開発者には必須のスキルとなりつつある。中でも「Docker」や「Kubernetes」のようなコンテナ関連ツールのスキルは高く評価されている。
- クラウドエンジニアリング
- クラウドインフラの構築および運用スキルも重視される傾向にある。特に、「Microsoft Azure」「Amazon Web Services」「Google Cloud Platform」といった主要クラウドプラットフォームに関する知見を持っていることは、大きな強みとなる。
こうした技術的スキルに加えて、ソフトスキルも重視される。
- 細部への注意力
- ソフトウェア開発ではミスが致命的になりかねないため、精度の高い作業が求められる。
- 思考力と問題解決能力
- バグの特定や要件の整理には、筋道だった思考が欠かせない。
- クリエイティビティ
- 課題に柔軟にアプローチし、革新的な解決策を導き出す力も武器となる。
よくあるプログラマーのイメージとして「ヘッドフォンを着けて1人で黙々と作業している姿」を思い浮かべるかもしれない。しかし実際には、コミュニケーション力が極めて重要だ。ビジネス部門との意思疎通、設計方針や仕様に関する他部署との議論、レビューや相談を通じたチーム内連携など、日々の業務の中で他者と協働する場面は多い。
特にキャリア初期には、積極的に質問し、先輩エンジニアから学ぶ姿勢が成長を加速させる。フィードバックを素直に受け入れる柔軟性も欠かせない。
一部の企業では、若手の育成や品質向上のために「ペアプログラミング」という手法が導入されている。これは、シニアとジュニアの開発者がペアを組み、交互に「コードを書く役」と「レビューする役」を担う開発スタイルだ。この方法は、若手にとって学びの機会となり、シニアにとっても自身のコードに対して第三者の視点によるチェックが入るため、双方にとって有益とされている。
AIスキルは必須なのか?
AI技術の進展は、ソフトウェア業界にも確実に影響を及ぼしている。とはいえ、ソフトウェア開発者は比較的早い段階からAIと関わってきた職種であり、近年は、生成AIを活用したコーディング支援、テスト、自動バグ修正などの実用化が進んでいる。
生成AIを適切に活用すれば、開発スピードの向上や成果物の品質改善といった効果が期待できる。一方で、課題も依然として存在する。生成AIはまだ新しい分野であり、分野に精通したエンジニアは少数派だ。開発プロセス全体における標準的なガイドラインも十分に整備されておらず、現時点では人によるレビューと管理が不可欠だ。
適切なプロンプト(AIモデルへの指示文)を設計すれば、開発の初期段階を生成AIで効率化することは可能だが、現時点ではAIが開発の全工程を自律的に担えるレベルには達していない。
「ソフトウェア開発者になるにはAIスキルが必須か」という問いに対しては、現状では「必須」とまでは言えない。ただし、今後AIの重要性がさらに高まり、活用場面は増えていくと考えられる。
業務で使用するプログラミング言語によってもAIスキルの必要性は異なる。Python、Rust、Goなどの比較的新しいプログラミング言語は、AIや機械学習との親和性が高く、AIスキルの有無が採用やプロジェクト適性に直結するケースもある。
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