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HDDなき未来を見据える「Pure Storage」の次世代ストレージ構想は何がすごい?オールフラッシュPure StorageのCEOに聞く【前編】

オールフラッシュストレージベンダーのPure Storageが打ち出した「Enterprise Data Cloud」は、従来のストレージシステムの常識にとらわれないストレージの新構想だという。同社CEOに具体的に聞いた。

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 データセンターのHDD市場の衰退が近づいている、という強気の見方も公表しているオールフラッシュストレージベンダーのPure Storage。同社は2025年6月にラスベガスで開催されたイベントPure Accelerate 2025で、「Enterprise Data Cloud」(EDC)という構想を打ち出した。これは同社のストレージ製品全体を統合的に集中管理する機能「Pure Fusion」を中心として、データの集約と一元管理を実現するものだ。

 Pure Storageの新たなストレージ構想は、従来のストレージシステムや、他社のストレージシステムとは何が違うのか。同社CEOであるチャールズ・ジャンカルロ氏に、EDCの構想が目指すものや、従来のストレージシステムとの違いを聞いた。

ストレージの常識によらない“次世代ストレージ”構想

―― 「Enterprise Data Cloud」はどのような変化をもたらしますか。従来のストレージシステムとは何が異なりますか。

ジャンカルロ氏 本質的な違いは、「インテリジェントなコントロールプレーン(制御基盤)」を備えている点にある。過去を振り返ると、従来サーバやPCにはストレージが内蔵されており、それがデータを保存する場所として当然とされていたものだった。

 1990年代半ばに、扱うデータ量が爆発的に増えると、複数のストレージをまとめた「ストレージアレイ」を外部ストレージとして使用する概念が台頭した。複数のサーバが同じデータにアクセスできるよう、SAN(ストレージエリアネットワーク)といった仕組みを用いて、外部のストレージ装置とサーバを接続するようになった。ただしこのアーキテクチャは、あくまでデータがサーバに「属する」ものとして設計されており、この発想はいまだに大きくは変わっていない。

 一方で、クラウド時代の要件は異なる。他のストレージベンダーは、「企業ごとやアプリケーションごとに多種多様なストレージが必要になる」として、それぞれのニーズに応じたのストレージを複数開発してきた。例えば、アーカイブ用や高性能用途のストレージなどがそうだ。ただし、こうした構成は特定のサーバ群やユースケース専用ではなく、あくまで共通の仕様で提供されているものが多い。これに対してPure Storageは、あらゆるストレージを統合的に制御できるコントロールプレーンを提供することで、要件の違いに関する課題を解決する。

 個人利用に置き換えてみると、従来は外付けHDDを使ってデータを保存するのが一般的だった。自宅にいなければそのHDDのデータにはアクセスできず、容量がいっぱいになれば新しいHDDを購入してデータを移行しなければならなかった。誰かとファイルを共有したい場合は、メールに添付するなど、手間がかかった。

 今では、クラウドサービスを使えば外出先からでもデータにアクセスでき、ファイル共有も簡単だ。クラウドサービスを利用することで、利便性ははるかに高くなる。Pure Storageのコントロールプレーンも、こうした“クラウド的”なストレージ運用を可能にするという点が大きな特徴となっている。

―― 同じ仕組みを他のストレージベンダーが提供してこなかったのはなぜでしょうか。

ジャンカルロ氏 実際には、他社も試みたことはある。当社が注力してきたのはストレージ全体の最適化であり、それが他社との違いだ。ストレージと一口に言っても、高性能なものから低コスト重視のものがあり、さらにはブロックストレージ、ファイルストレージ、オブジェクトストレージといった種類が存在する。

 多くの企業は、これらの異なる用途に対して別々のソフトウェアを開発するか、あるいは買収によって機能を増やしてきた。結果として、それぞれのシステムが異なるソフトウェアで構成され、全体を一元的に可視化、管理するのが非常に困難になってしまった。

 一方で当社は、全てを自社開発のストレージソフトウェア「Purity」を中心にして構築してきた。最初の製品ではブロックストレージに対応し、そこにファイルストレージとオブジェクトストレージを追加していった。ただし、当社はそれらを単に「ブロック」「ファイル」「オブジェクト」として扱っているわけではない。Purityの核となっているのは、「キーバリューストア」と呼ばれる仕組みで、スケーラブルなメタデータ管理を可能にする現代的な方式だ。

 この仕組みによって、ストレージの種類やファイルサイズにかかわらず、全てのデータは「キー(識別子)」と「バリュー(値)」で参照される。つまり、統一されたデータプレーン(データ処理基盤)の上で動作しているということだ。

 HDDではなくフラッシュストレージのみで構成する「オールフラッシュストレージ」であることも当社のストレージの特徴だ。これにより仮想化されたストレージのクラウドを、個別のストレージアレイではなく、全て一体化された形で提供できるようになった。

 他社にも「クラスタ」と呼ばれる仕組みはあるが、多くの場合それは複数のストレージアレイをただ束ねただけに過ぎない。当社のシステムでは、世界中に分散したストレージアレイの全てが「データクラウド」の一部として機能する。データセットの管理に関するルール(ポリシー)を一元化することも可能だ。

 例えば、レプリケーション(複製)やバックアップ、リカバリー(復旧)、コンプライアンス対応といった要件を満たす「ストレージクラス」を定義し、そのクラスに準拠する新しいアプリケーションに対しては、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)経由で自動的にその特性を継承させることができる。

 従来のようにストレージアレイが別々に管理されている場合、それぞれのポリシー設定は手作業で行う必要がある。結果として、場所やアプリケーションによってルールが一貫せず、「紙に書いただけのポリシー」が形骸化して終わることもある。

 当社はPure Fusionを使うことで、ポリシーを一カ所で変更すればその内容が即座にシステム全体に反映される。管理者は単にポリシーを1つ変更するだけで済み、手間もミスも大幅に削減できる。


 次回はHDD終焉(しゅうえん)説や、関税に対する見解に切り込む。

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