「SSDとHDDの使い分け」はもう存在しない? 急速に変わるストレージの常識:データの保管と運用方法が問い直される(1/2 ページ)
フラッシュストレージの価格下落、生成AIの活用、そしてインフラ運用の自動化――。これらはいずれも、企業のIT部門にとって避けては通れないテーマになりつつある。
オンプレミスインフラの進化が加速する中で、SSDなどのフラッシュストレージや生成AI、そして運用自動化といったテーマは、もはや特定の専門家だけの話題ではない。あらゆる企業のIT部門が直面する“目の前の課題”になりつつある。
IT担当者にとって重要なのは、技術そのものだけでなく、それをどう自社のIT環境に取り込み、業務の改善につなげるかを見極めることだ。ストレージベンダーPure Storageが開催した年次イベント「Pure//Accelerate 2025」は、オンプレミスインフラにおいて“選択と集中”のヒントを多く与えてくれるものだった。ストレージを中心として3つの重要なポイントを紹介しよう。
1.フラッシュストレージ価格の下落で、HDDの存在意義が問われている
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Pure Storageの創業者であり最高ビジョナリー責任者を務めるジョン・コルグローブ氏は、300TBの容量を誇るフラッシュストレージモジュール「DirectFlash」を掲げ、600TB超の提供実現に向けた展望を語った。
DirectFlashとは、転送プロトコル「NVMe」(Non-Volatile Memory Express)ベースのフラッシュストレージモジュール。従来の「SSD」を代替するモジュールとなる。Pure Storageの「FlashArray」や「FlashBlade」などのストレージアレイ製品群を支えるために独自設計された技術だ。
このモジュールも興味深いものだが、ここで押さえておきたいのは、オールフラッシュストレージの領域において、容量単価の低下、記録密度の向上が続いているという点だ。
従来HDDに保存されていたバックアップやアーカイブのデータに対しても、より高い読み書きのパフォーマンスと、予測可能な応答時間や動作が求められるようになっている背景にあるのは、AI(人工知能)関連プロジェクトの増加や、災害およびランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃による被害からの迅速な復旧などのニーズ増大だ。
こうした変化に伴い、従来の「重要なアプリケーションはフラッシュ、そうでないものはコスト重視でHDDへ」といった固定観念を見直す必要がある。フラッシュストレージのコスト効率と記録密度が向上している現在、複数階層構成のフラッシュストレージを活用することで、より高いコストパフォーマンスと運用効率を得られる可能性が出てきているのだ。
2.IT運用に生成AIを導入するなら、今が絶好のタイミング
Pure Storageは今回のイベントで、2024年に開催された前回の年次イベントで発表した「AI Copilot」のデモンストレーションを実施した。「AI Copilot」は、自然言語による入力に対応し、IT管理者が現在のストレージ環境を深く理解するための支援ツールだ。このツールを使えば、データの安全性や保護状況の評価、パフォーマンスや容量、電力の管理などを自然言語で実行できる。従来は専門的な知識が必要だった作業が、対話形式でできるようになる。
インフラ向けAI支援ツールを提供しているのはPure Storageだけではなく、さまざまなベンダーが自社製品に組む取り組みを進めている。現時点では、生成AIは極めて強力な技術ではありつつも、登場からまだ日が浅いのも事実だ。この分野で先行している一社であるPure Storageは、実現可能な機能について積極的に検証を進めているとみられる。
まずは、最適化に関する提案を受けるといった比較的リスクの低い用途から始め、従来の手法で提案内容を検証するのが現実的だ。その上で、将来的には生成AIツールの評価を進め、社内IT運用にどう組み込むかを正式に検討する計画を立てるべきだろう。
3.オンプレミスインフラ運用の簡素化をするなら今が変革のチャンス
今回のPure Accelerateの中心テーマは、同社が推進する「Enterprise Data Cloud」(EDC)」だった。同社はこの構想の下、複数のストレージアレイを集中管理するなどしてストレージ管理の効率化と自動化を実現する「Pure1」と「Pure Fusion」を提供している。これらが担うのは、インテリジェントなコントロールプレーンの構築だ。
こうした取り組みも、Pure Storageだけのものではなく、インフラ分野のさまざまなベンダーが、集中的にな管理によって運用を簡素化する技術を次々と発表している。背景には、企業がAIプロジェクトを積極的に推進する中で、既存のIT管理者を定型業務から解放し、AI導入のサポートに振り向けたいというニーズの高まりがある。
IT部門の意思決定者にとって、今はビジネスプロセスや組織体制を含めて社内運用を見直す好機と言える。特に大切なのは、ベンダーに対して具体的な情報開示を求めることだ。「どの業務が効率化されるのか」「不要になる作業は何か」「コスト削減効果はどの程度か」「成果を評価するためにどのようなデータが提供されるのか」といった問いを通じて、実効性のある対話を進めていくべきだ。
オンプレミスインフラの分野では、まさに今、重要なイノベーションが次々と実現している。IT担当者は、自社が採用しているベンダーからその恩恵を最大限に引き出すための提案を受けられるよう、しっかりと準備を整えておこう。
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