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Microsoftですら31億ドルの打撃 CIOが示すべきAI投資の「生き残り戦略」AIバブルは崩壊するのか【中編】

「取りあえずAIを使ってみよう」という時代は終わった。MicrosoftやAmazon.comですら投資回収の壁に直面している中で、市場は「シビアな実利」を求め始めている。ITリーダーが提示すべき「確実な戦略」とは。

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人工知能 | ROI | IT投資 | 経営


 2022年にAI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」が登場して以降、AI技術への期待は爆発的に高まり、企業はこぞって巨額を投じてきた。しかし2025年、Amazon.comやMicrosoftといった大手ITベンダーでさえ、その投資に見合う収益確保の難しさに直面している。

 「AIは稼げるのか」という疑念は、今や株式市場をも揺るがし始め、投資家の視線は期待から「AIは本当に稼げるのか」という疑念、さらにはシビアな実利へと変化している。この市場の変調は、企業のITリーダーにどのような決断を迫るのか。市場の変調が示唆する「AIバブル崩壊」が訪れたとき、自社を守るために取るべき戦略とは。

Microsoft、Amazon、Meta…… 決算から見える「AI投資の代償」

 企業の増益ポテンシャルは、株式市場に影響を与える要因の一つだ。来四半期や来年度に収益を生み出す可能性は、現在の収益と同様に株価評価にとって重要になる。

 AI関連株に対する投資家の熱狂は、2024年から2025年にかけて市場を史上最高値へと押し上げた。AI技術による将来的な利益の見込みが、新たな投資機会として捉えられたためだ。

 株式市場Nasdaqに上場する全銘柄を対象とした「Nasdaq総合指数」は、2022年末以降大幅に上昇しており、AI技術への期待がその原動力の一つとなっている。主要なAIベンダーは強力な成長ポテンシャルを示しているものの、金融の専門家は非現実的な評価額に対して警告を発している。投資家や市場関係者の反応は、純粋な楽観論と投機的な熱狂が入り交じっており、AI関連株の長期的な安定性を予測するのは困難だ。

 例として、Amazon.comの2024年度第2四半期(2024年4〜6月)決算がアナリストの予測を下回った一因は、AI分野への支出に対して目立った成果が見られなかったことにあり、株価の下落を招いた。Intelも、AIブームに乗じるための大規模な取り組みに数十億ドルを投じた結果、数万人規模の人員を削減すること発表し、その後株価が下落した。

 2025年10月に入り、AI関連の決算に対する市場の反応はますます敏感になっている。Meta Platformsの2025年度第3四半期(2025年7〜9月)決算は、AI主導の広告成長によって売上高が前年同期比26%増の512億4000万ドルとなった。だがAI関連費用の増大を受けて、2026度年の支出が著しく拡大すると警告したことで、株価は10%下落した。Microsoftの2026年度第1四半期(2025年7〜9月)決算は、クラウドサービス群「Microsoft Azure」事業の収益が前年同期比で40%増加して予測値を上回ったものの、OpenAIへの株式投資による損失が純利益に31億ドルの打撃を与えた。

ITリーダーにとって「AIバブル」が意味するもの

 AIバブルが存在するかどうかは、金融市場だけの問題ではない。ITリーダーも直接的な影響を受けている。AIの「ハイプ」(過熱した期待)と「現実」のギャップは、以下に示す複数の意味合いを持つ。

1.資本配分

 2025年6月にイェール大学(Yale University)経営大学院が開催したイベント「Yale CEO Summitでは、参加したCEOの40%が「AI技術への期待が過剰投資を招いている」と考えていた。

一方で、92%の企業が2025年にAI支出を増やす計画だと回答している。課題は、企業がAI技術に多額の資金を費やしていることを認識しつつも、同じようにAI技術に投資している競合他社による破壊的イノベーションや市場シェアの喪失を恐れている点にある。

2.ROI(投資対効果)

 企業がAI技術に対する投資の回収に苦戦する中、ITリーダー自身が確固たる戦略を持つことが不可欠になっている。経営層は、「取りあえず試してみる」といった広範で探索的なプロジェクトを許容するのではなく、予算を投じる前に、現場に対して具体的なビジネス成果に結び付いた「ROI重視のパイロットプロジェクト」の立案を厳しく要求しなければならない。

3.収益モデルと評価軸の明確化

 AI技術が自社にどのような財務的インパクトをもたらすか、そのメカニズムを特定することが極めて重要だ。経営層は、AIツール導入の目的が、自動化や効率化による「コスト削減」なのか、それとも新規事業やサービス向上による「売り上げ拡大」なのかを明確に区別しなければならない。その上で、目的に応じた適切な予算配分やKPI(重要業績評価指標)を設定し、管理する必要がある。

4.リスク管理

 2025年における企業のAIプロジェクトが中止しがちだったことを考えれば、AI市場のセンチメント(市場心理)は明らかに変化している。経営層は、AI技術への過少投資による競争上のリスクと、未検証の取り組みへの過剰投資による財務リスクをてんびんにかけなければならない。大手ITベンダーは、失敗したAIプロジェクトの損失を別の事業で吸収できるが、中堅・中小企業にはそうした失敗をカバーできる材料がはるかに少ない。

5.ステークホルダーとのコミュニケーション

 AIバブルへの懸念が高まるにつれ、取締役会や金融アナリストはAI技術に対する明確なROIを求めるようになるだろう。経営層は曖昧な約束ではなく、具体的なビジネスインパクトを示すことが求められる。


 次回は、バブル崩壊のメカニズムと、過去のバブルから得るべき教訓を解説する。

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