検索
特集/連載

2026年度予算が足りない? 削るべき“無駄”とCFOを黙らせる“投資の計算式”プロジェクトの優先順位を付ける「採点表」

年が明け、新年度に向けた予算編成が大詰めを迎えている。インフレやAI需要でIT費用が膨張する中、却下されない予算計画を作るためのコスト見直し術と、「プロジェクト優先順位の計算式」を紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

関連キーワード

ROI | IT部門 | IT投資 | IT戦略


 2026年がスタートした。ITリーダーにとって、4月からの新年度予算の調整、執行計画の策定は喫緊の課題だ。急速に進化する人工知能(AI)技術、労働市場の流動化、顧客からの要求レベルの高度化など、IT部門を取り巻く状況は厳しくなっている。

 経営層からは「DX(デジタルトランスフォーメーション)で成果を出せ」と圧力をかけられる一方で、肝心の予算枠は増えない。そうした中で、予算配分を見直し、最大限に効果がある場所に投入するための「客観的なロジック」の重要性が増している。本稿は、新年度のIT予算を最大限に活用するために、ITリーダーが今すぐ手元に用意すべき、予算防衛のための4つのアクションプランを提示する。

アクション1.「隠れコスト」の温床を精査する

 予算策定の最終段階では、新規プロジェクトへの資金確保に目が向きがちだ。新規プロジェクト(攻めの予算)の確保に躍起になり、足元の「守りの予算」を甘く見積もるミスが起きやすい。以下の3点は、IT部門が予算を設計する上で再計算すべき項目だ。

1.ハードウェアの更新費用

 現状のITインフラを精査する際は、ハードウェアの更新スケジュールを再確認することが重要だ。新年度に交換時期を迎える機器の台数を把握し、それに伴う費用を算出する必要がある。

2.未使用のサービス

 社内のソフトウェアライセンスの棚卸しも実施すべきだ。古いアプリケーションを新しいバージョンに移行するための費用が発生するケースもある。

 利用中のクラウドサービスも点検対象だ。CPUやメモリの追加割り当てが必要なものが見つかることもあれば、逆に稼働率が低い、あるいは重複しているインスタンス(サーバ)を特定できることもある。こうした状況を整理し、サブスクリプションの解約やライセンス数を削減することによって、費用を節約できる。

3.価格改定のリスク

 サブスクリプション型ライセンスやSoftware as a Service(SaaS)を利用している場合、ベンダーがライセンス価格の引き上げを計画していないかどうかを確認し、予算への影響を見極める必要がある。

アクション2.CFOを説得する「投資の計算式」を作る

 既存のITインフラの維持に必要な費用(ランニングコスト)が確定すれば、将来のITプロジェクトに投じられる攻めの予算の規模が見えてくる。

 経営層や各部門のステークホルダーと対話し、自社のニーズや優先順位、経営戦略を深く理解することは重要だ。これによって、どのプロジェクトが自社の目標に最も貢献するのかを判断しやすくなる。現場のステークホルダーこそ、ITを使ってどうビジネス成果を創出するか、有益なアイデアを持っているものだ。

 しかし、現場から上がってくる要望の全てを通すことはできない。ここで重要になるのが、声の大きい部署の意見を通すことではなく、「どのプロジェクトが会社に利益をもたらすか」を客観的に示す数値だ。感覚値で語るITリーダーはCFO(最高財務責任者)に論破されかねないが、ロジックと数字を持つリーダーは信頼を勝ち取ることができる。

 限られた予算内で、複数の候補からプロジェクトを取捨選択する上では、どのプロジェクトにゴーサインを出し、どれを見送るかを決定するための客観的な手段が必要になる。ここで役立つのが、優先順位を付けるためのスコアリングフレームワークだ。これによって戦略的重要性、ビジネス価値、期待されるROI(投資対効果)に基づいてITプロジェクトを評価できるようになる。

 フレームワークの作成に当たっては、ビジネス価値、技術的な実現可能性、費用、リスク、ROIなどの評価基準を設け、それぞれに対して重み付けをする。以下に評価基準と重み付けの例を示す。

  • ビジネス価値:30%
  • 技術的な実現可能性:20%
  • コスト:15%
  • リスク:15%
  • ROI:20%

 各項目に対して、「高(3点)」「中(2点)」「低(1点)」といった具合にスコアを付け、この点数に重みを掛け合わせて合算し、プロジェクトの総合スコアを算出する。このスコアが高い順に予算を割り当てることで、「なぜこのプロジェクトを選んだのか」という説明責任を、誰もが納得する数字で果たすことができる。

アクション3.思い込みを疑い、コスト構造を変える

 IT予算策定プロセスの要になるのが、IT支出全体の最適化だ。冗長なコンピューティングリソースの排除や未使用ライセンスの回収に加えて、さらに踏み込んだ施策を検討したい。

 業務アプリケーションの稼働場所を見直すことで、運用費が大きく変わる場合がある。ここでは「クラウドファースト」戦略を再考することが鍵になる。特定のアプリケーションをクラウドサービスに移したり、逆にオンプレミスシステムに戻したりすることで、費用対効果が改善する可能性がある。同様に、クラウドサービスにあるアプリケーションを他社クラウドサービスに移行することで利用費を抑えられる可能性もある。

 ただしクラウドサービス間での移行やオンプレミスシステムへの移行には、外部へのデータ移行料金(エグレス料金)や移行作業費といった一時的な費用が発生するため、目先の価格差だけではなく総保有コスト(TCO)を踏まえた慎重な試算が不可欠だ。

 支出の削減策を検討する際、ホスティング先を選ぶ基準は金額以外にもある点に留意が必要だ。データレジデンシー(データの保存場所に関する法的要件)、通信の遅延(レイテンシ)の許容度など、システム要件によっては現在の場所にとどめておくべき場合もある。

 ベンダー契約の再交渉も支出管理には有効な一手だ。価格そのものを下げることが難しい場合でも、支払額に対する価値を高めることはできる。トレーニング講座の受講枠提供、認定試験のバウチャー(受験チケット)、導入支援サポートサービスの割引など、付加価値を引き出す交渉が有効だ。

 自社でデータセンターを運用している場合は、データセンターの電力消費の削減策を探ることも、光熱費などの維持費抑制に直結する。

アクション4.人材への投資を忘れない

 「人」への投資を削ってはいけない。スキル不足による生産性の低下やセキュリティインシデントへの対処の遅れ、「成長機会のない職場」に絶望した優秀なエンジニアの離職コストの方が、教育費よりもはるかに高くつくことは想像に難くない。

 ITスタッフが既存のスキルを維持しつつ、新たなスキルを習得できるよう、教育やトレーニングに対して継続的に投資することは極めて重要だ。技術の進化が速い現代において、スタッフのスキルアップは、結果として企業全体の生産性向上と費用対効果の最適化につながるからだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る