エンジニア報酬「80万円超」が常識? 大企業の“爆買い”に負けない採用術:「エンジニア争奪戦」を制するには
「報酬が高過ぎてエンジニアを雇えない」。この悲鳴は2026年、さらに大きくなる恐れがある。大企業の約7割が月額80万円以上の報酬を提示し、大量採用に動いている。「人材争奪戦」で競り負けない“調達の正解”とは。
「来期の開発予算では、エンジニアを1人も確保できない可能性がある」――。フリーランスエンジニアと企業のマッチングサービス「Midworks」を運営するBranding Engineerの調査からは、そうした恐るべき事実が浮かび上がってくる。同社は2025年11月、システム開発を実施する従業員500人以上の大企業に勤務する319人と、従業員500人未満の中小企業に勤務する321人を対象に調査を実施した。
大企業では、外部委託エンジニアの月額報酬として「80万円以上」を提示する割合が68.5%となり、前年の29.0%から約40ポイントも急増している。募集人数も「31人以上」と答えた企業は3割を超え、2024年の3.3%から約10倍に跳ね上がった。資金力のある大企業が、市場のエンジニアを「高単価」かつ「大量」に“爆買い”しているのだ。
一方で中小企業の月額報酬予算は「80万円未満」が61.6%と過半数を占め、資金力での真っ向勝負は分が悪い。では予算に限りのある中小企業はどう動くべきなのか。調査結果を分析すると、中小企業とは異なる「戦略的シフト」が浮かび上がってきた。
本稿は、大企業と中小企業のエンジニア採用意向に関する調査結果比較から、2026年以降のエンジニア市場で情シスが取るべき「調達戦略」を読み解く。
中小企業が狙うべき「本当に役立つ人材」の条件
外部人材要件に見る「社内の壁」と「実利」
外部エンジニアに求める要素として、どちらの調査でも「実務経験」が約67%でトップとなり、即戦力を最優先する点は共通している。しかし詳細なデータを比較すると、企業の性質による違いが浮き彫りになった。
- コミュニケーション能力
- 大企業46.5%に対し、中小企業は37.4%。
- コンプライアンス(法令順守)意識
- 大企業36.7%に対し、中小企業は26.8%。
大企業は、AI(人工知能)技術活用を含むあらゆるプロジェクトにおいて、既存の社内ルールやガバナンスとの整合性を重視しており、技術力だけではなく「社内調整力」や「リスク管理能力」を求めている。対して中小企業はこれらの数値が低く、「個人の突破力」や「直接的な成果」を優先する傾向がある。エンジニア選定においては、自社の要件やフェーズに合わせて「調整役」か「突破役」か、ターゲットを明確にしておかなければミスマッチを招くことになる。
予算配分から見る生存戦略の違い
大企業の予算規模からは、かつてない投資意欲が見て取れる。前述の通り、月額80万円以上の案件は前年の29.0%から68.5%へと倍増した。これは単なる人員補充ではなく、即戦力の外部人材を「経営資源」として確保しようとする動きだ。
一方で中小企業は資金力勝負を避け、求めるスキルを変化させた。「コンサルティング/PM(プロジェクトマネジメント)」スキルの需要が33.7%となり、2024年から7.2ポイント上昇している。これは、限られた予算内で手を動かす作業者(コーダー)を雇うのではなく、プロジェクト全体をコントロールできる「プレイングマネジャー」に予算を集中させ、実装はAIツールや既存人材で補おうとする意向の表れとも読み取れる。
2026年の展望:二極化する市場への適応
AI技術活用の「実装格差」も無視できない。AI技術活用への注力度自体は大企業(86.5%)と中小企業(77.0%)であまり差はないが、「ChatGPT」などのAIツールを実際の業務で利用できている割合は、大企業の45.8%に対し、中小企業は40.8%とやや後れを取っている。
中小企業で「AI技術を実務で活用したいが進められる人がいない」状況が続いていることは、裏を返せば、ここを埋められる外部人材であれば、高単価でも採用する価値があるということだ。
2026年は、大企業のように「高待遇・大規模チーム」で組織力を強化するか、中小企業のように「PM/上流工程」に予算を集中投下するか。自社の財布事情を直視し、戦う土俵を見極めたマッチングこそが、プロジェクト成否の分岐点になる。
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