“情シスは評価されにくい”は本当? 次の役割をつかむ情シス人材の判断軸とは:情シスキャリアをアップデートする【第1回】
情報システム部門は日々の運用やトラブル対応に追われがちだ。一方、自業務をこなしながら評価され、次の役割を任される人材がいる。評価される人材は何が違うのか。評価の分かれ目を探る。
「今日も一日、対応に追われて終わった」「現場からの問い合わせ、トラブル対応、調整。やることは山ほどある」――。情報システム部門(以下、情シス)で働いていると、こうした瞬間は日常茶飯事だ。システムは止められない。問い合わせは断れない。トラブルは待ってくれない。結果として、情シスの仕事は常に“目の前の業務”で埋め尽くされがちだ。
一方、こんな疑問が頭をよぎることはないだろうか。「これだけ忙しいのに、評価は本当に上がっているのか」「次の役割を任される人と、自分は何が違うのか」
評価され、次の役割を任されてきた情シス人材は、何が違うのか。本連載は、実際に評価され、組織を動かす立場へ進んできた情シス人材が、「何をやってきたのか」だけでなく、「何をやらないと決めてきたのか」という視点から、業務を進める上での判断軸を整理する。
第1回の本稿は、情シスの仕事を俯瞰し、どの仕事が時間を奪い、どの仕事が評価されにくいのかを可視化し、評価の分かれ目になり得る仮説を提示する。
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情シスの時間を奪う業務、評価に残りにくい業務
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情シスの代表的な業務に以下がある。
- 運用業務
- システム監視、アカウント管理、定常作業
- 問い合わせ対応
- ベンダー、他部門、経営層との折衝
- 説明や資料作成
- 障害報告や稟議資料
- 突発的な事象の対応
- 障害や期限付きの緊急案件
- 改善活動
- 業務の標準化、自動化、ルールの整備、再設計
インターネットイニシアティブ(IIJ)は、2025年6月に実施したアンケート調査で情報システム部門で働く従業員488人に「担当している業務の範囲」を尋ねた。その結果、一般社員クラス(116人)の1位は「社内問い合わせ対応」、2位が「システム運用・監視」だった。他にも「セキュリティ対策、対応」「既存システムリプレース検討・検討支援」が上位に並んだ。
「最も時間を費やしている業務」を尋ねた質問では、1位が「既存システムリプレース検討・検討支援」で、「社内問い合わせ対応」「新規システム導入検討・検討支援」が続いた。調査結果は、IIJが2025年8月に公開した調査レポート「全国情シス実態調査2025」に掲載されている。
この中で、時間を奪われやすい仕事は「問い合わせ」「突発対応」「調整」といった“見えにくい”業務だ。一方、評価に結び付きやすい仕事は、改善活動や仕組み化、再発防止といった“見えやすい”業務だ。
“見えやすい”業務、“見えにくい”業務 その違いは
このような違いが生まれるのはなぜか。
第1に、「問い合わせ対応」「突発対応」「調整」といった業務には、いくつかの特徴がある。発生のタイミングをコントロールできない。社内からの問い合わせやシステムトラブルは、情シスの計画とは関係なく発生する。多くの場合、従業員の業務を止めないために即時対応が求められる。その結果、予定していた作業が中断され、業務の優先順位が入れ替わる。
第2に、“見えにくい”業務は成果が形として残りにくい。問い合わせに対応して問題を解決しても、それは「元の状態に戻した」だけであり、特別な成果として認識しにくい。障害対応や調整業務も、問題を解決すること自体は重要であるものの、「何か新しい価値を生み出した」と評価されにくい。
さらに、調整業務は業務時間を分断しやすい。ベンダーとのやりとり、他部門への説明、経営層への報告などは、短時間の打ち合わせやメール対応が断続的に発生する。その結果、まとまった時間を必要とする改善活動や設計作業に着手しにくくなる。
一方、改善活動や仕組み化は、成果を可視化しやすい。運用手順の標準化や自動化ツールの導入、業務プロセスの再設計といった取り組みは、「問い合わせ件数が減った」「作業時間が短縮された」といった形で成果を示しやすい。資料やレポートとしてまとめることもできるため、評価や実績として残りやすい。
つまり情シスの業務には、時間を奪われやすいが評価に残りにくい仕事と、時間を確保できれば評価につながりやすい仕事が混在している。
しかし現実には、“見えにくい”業務ほど優先度が高くなる。問い合わせ対応や障害対応は放置できないため、どうしても先に処理する必要があるからだ。その結果、改善活動のための時間を確保できなくなる。
こうして「日々の業務を回すことに追われる情シスほど、評価につながる仕事に手を付けにくい」という構造が生まれやすくなるのである。
評価につながる情シスは何をしている?
こうした仕事の性質の違いを踏まえると、1つの仮説が浮かび上がる。
評価され、次の役割を任されてきた情シスは、「やること」と「やらないこと」の線引きが明確なのではないか。
「全ての問い合わせに即座に応える」「調整ごとを全て自分で引き受ける」「突発的な対応を最優先で処理する」。それは誠実さであり、責任感の表れでもある。しかし、「自分がやらなくても回る状態」を作らない限り、忙しさは減らず、評価に残る仕事の時間も生まれにくい。
一方評価されてきた情シス人材は、「何をやるか」よりも先に、「どこまでを自分の仕事とし、どこからを仕組みや他者に委ねるか」を考えてきた可能性がある。
もちろん、全てを一度に変えることはできない。現場を回しながら線を引くことは、簡単ではない。だからこそ重要なのは、「全部やる」か「やらない」かの二択ではなく、どこに線を引くかを言語化することだ。
次回は、実際に評価され、組織を動かしてきた情シス人材へのインタビューを通じて、以下を掘り下げる。
- 情シスとしてキャリアを重ねる中で、意識的に「やってきたこと」「線を引いてきたこと」
- 業務を引き受けない、あるいは手放すと判断した際の判断基準や背景
- そうした選択が、もたらした変化
- これからの情シス人材や組織に必要なこと
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