“いつ止まるか分からない”恐怖を克服する「AI駆動型」のストレージ監視:限界を迎えた「事後対処型」の監視
問題が起きてから対処する従来のストレージ監視手法は、複雑化するインフラに追い付けなくなっている。運用効率の劇的な向上と費用削減を両立させる、AIを技術活用した監視手法とは。
オンプレミスシステムとクラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドにおいて、ストレージの複雑化と費用の増加が進む中、IT部門の責任者は常に改善策を模索している。AI技術を用いた予測監視は、現代の企業にとって運用面と財務面の両方で強力な推進力になる。
AI技術を用いたストレージ管理は、事業収益の維持、アプリケーションの処理速度向上、顧客体験の向上、SLA(サービスレベル契約)の達成に直結する。
以下では、従来のストレージ監視手法が通用しなくなった背景や、AI技術を用いた予測分析がストレージの健全性をどう高めるかを解説する。併せて、特定の用途で効果的にシステムを導入する手段、運用効率化によるメリットをKPI(重要業績評価指標)で可視化する方法も提示する。
従来のストレージ監視手法では不十分な理由
従来の監視手法は、データ容量の使用率、処理遅延(レイテンシ)、IOPS(1秒当たりの入出力回数)、データ転送速度、ハードウェアの状態といった指標に上限(しきい値)を設け、それを超えた際に事後的に警告を出す方式が一般的だ。こうした監視ツールは現時点で起きている問題を特定できるものの、障害の予兆や性能低下を予測して検出するような高度な分析は難しい。
プライマリーストレージのシステム構成が、ハイブリッドインフラや仮想マシン(VM)、大量のデータを扱うアプリケーションを取り込みながら複雑化の一途をたどるにつれ、IT部門はシステム全体を把握できなくなり、頻発する警告への対処に疲れ果て、手作業での原因究明に多大な時間を奪われている。固定的な監視手法では、変動の激しい処理の負荷に追従できず、SLAで定めた性能やアプリケーションの応答速度を安定して維持することは困難だ。従来の監視手法では、エンドユーザーに実害が及んでから問題が発覚するのが一般的であり、システム停止を未然に防ぐには限界がある。
こうした運用の複雑化を背景に、AI技術を取り入れて事前にリスクを察知し、保守作業を自動化してストレージの機能停止を的確に防ぐストレージ健全性監視や予測分析の重要性が増している。
AI技術を用いた予測分析がストレージの健全性管理を変革する
AI技術を用いた監視機能と、プロアクティブな自動保守によって、プライマリーストレージの稼働率が高まる。結果として、企業は限られた人材と予算の中で、より効率的に業務をこなすことが可能だ。
高度な予測分析アルゴリズムは、ストレージの稼働データ(テレメトリー)や処理パターンの変化、過去のパフォーマンス傾向を常時監視する。これによって、本番環境やユーザー体験(UX)に悪影響が及ぶ前に異常を検出する。その結果、問題が深刻化する前に先回りして対処でき、障害の予測に基づいた自動的な保守を推奨できるようになる。
AI技術を用いた予測分析のメリットは以下の通りだ。
- ストレージ障害の事前予測と警告
- 稼働データと異常の分析
- プロアクティブな自動保守
- 手作業による原因究明にかかる手間の削減
- SLA達成率の向上
この予測機能を導入すれば、オンプレミスシステムとクラウドサービスを連携させたストレージシステム全体を見渡し、IT資産の全体像を把握できるようになる。予測データを自動化の仕組みと連携させることで、先回りした対策が可能になり、運用の手間を削減してIT担当者の作業効率を向上させることができる。予測分析はシステムの稼働目標の達成と費用の最適化の双方を実現する強力な手段となる。
ストレージの保守における指標とKPI
AI技術を用いたストレージ監視の効果を測るため、IT部門の責任者は、運用面や財務面の成果を事業の目標に結び付けるKPIを設定する必要がある。稼働率や処理遅延といった基本的な指標も重要だが、SLAの順守状況や障害の未然防止率、運用効率の推移も確認すべきだ。
運用実績や可用性を測る具体的なKPIや指標には、以下の項目がある。
- SLAの順守率
- 障害の平均修復時間(MTTR)の短縮
- 稼働率や可用性の向上
- 障害の未然防止率
- 上位部署への報告(エスカレーション)件数の削減
財務面のKPIは、これらとは異なる視点をもたらす。測定すべき主な要因は以下の通りだ。
- システム停止に伴う損失の回避額
- 運用効率化による人員、費用の削減効果
- ストレージ障害1件当たりの対処費用
- 製品寿命の最適化による無駄な設備投資(過剰な機器購入)の抑制
- SLA違反に伴う違約金の回避額
- ストレージの過剰な割り当ての削減
こうした指標を確認することで、予測分析の価値を数値として把握でき、納得のいくインフラ投資の判断を下すのに役立つ。
ハイブリッドクラウドにおける活用例
AI技術を用いた予測分析は、プライマリーストレージの処理能力と安定性を高める。ストレージ機器が製品寿命を迎える前に故障の兆候を把握できれば、IT部門は業務の停止を減らし、アプリケーションの信頼性を向上させることが可能だ。
具体的な活用例として、以下の4つが挙げられる。
- ストレージ障害の予測
- ドライブや制御装置の故障、性能低下の初期の兆候を検出し、本番環境の処理に影響が出る前に対処する。
- データベースの性能維持
- 異常な遅延パターンを即座に特定し、重要業務を担うアプリケーションの速度低下やSLA違反を防ぐ。
- ストレージのプロアクティブな自動保守
- ファームウェアの更新や処理負荷の分散、調整といった作業を自動化し、手作業による運用の手間を削減する。
- データ容量とIT資産の最適化
- ストレージの将来容量需要を予測して非効率な部分を可視化することで、容量計画の精度を高め、容量不足による性能低下を防ぐ。
扱うデータ量が膨大になり、ハイブリッドインフラの複雑化が進む現代において、こうした機能は極めて重要な役割を果たす。
実際の活用例を紹介しよう。数千台のVMを稼働させている企業のシステムにおいて、従来の監視手法では見逃してしまうような、ごくわずかな処理遅延が発生したとする。AI技術を用いた予測分析機能は、SSDの初期の劣化や異常なデータの入出力パターンを直ちに検出する。管理者に警告を出すと同時に、プロアクティブな自動保守を実行する。処理の負荷を均等に分散させ、データ容量を最適化することで、VMの機能停止を未然に防ぐのだ。結果としてSLAの基準を満たし続け、エンドユーザーの作業を妨げる事態を回避できる。
既存のIT運用にAI監視機能を組み込む
AI技術を用いた予測監視ツールは、他のシステムから切り離された単体のツールとして扱うべきではない。より広範なIT運用の作業全体を強化する形で組み込むことが重要だ。AI技術を用いた分析機能を、AIOps(AI技術を活用してシステム運用を自動化する仕組み)、ITサービス管理(ITSM)、可視化ツール、運用管理ツールなどと連携させる。そうすることで、部門を横断して運用状況を共有できるようになり、経営層に向けた報告データの作成も容易になる。
こうしたデータに基づく運用は、単発の警告を発するだけではなく、具体的な対策につながる有益なインサイトをもたらす。提供された情報を踏まえて、処理負荷の再分配といった自動化処理をシステムが自律的に実行するか、あるいは管理者が手動で対処するかは、その企業における業務自動化の仕組みがどの程度成熟しているかによって変わってくる。
AI技術を用いたストレージ監視システムを評価する
AI技術を用いたストレージの監視機能や分析機能を評価する際は、ベンダーの誇大宣伝に惑わされてはならない。自社の事業課題を解決できる、具体的な数値実績があるかどうかに着目すべきだ。
選定時の評価基準には、以下の項目を含めるとよい。
- 予測が正確か
- 自動的な対処・推奨機能が備わっているか
- ハイブリッドクラウド全体を把握できるか
- システムの拡張性があるか
- 既存のストレージや他の運用管理システムと容易に連携できるか
- 報告書の作成機能や分析機能が優れているか
まとめ:事後対処型の監視から、予測に基づく運用へ
予測監視の仕組みは今や、障害に強い企業インフラを構築する上で不可欠だ。これは単にストレージ管理や最適化に多大なメリットをもたらすだけではない。障害が発生してから対処する従来の監視手法では、ハイブリッドクラウドやUXに対する厳しい要求水準に追従し切れなくなっているのだ。企業はいつまでも手作業の運用に頼るべきではない。適切なクラウド費用管理(FinOps)を実践し、投資対効果(ROI)の最大化を追求することも求められている。
ハイブリッドクラウドにおけるシステム停止時間(ダウンタイム)の削減、SLAの確実な達成、運用効率の向上、優れた拡張性。これらのメリットを併せ持つ、AI技術によるストレージ管理は、現代の企業にとって欠かせない技術だ。
AI技術を用いた予測分析によってストレージ運用の最新化を進める企業は、障害に強い安定した運用体制と、数値として測れる確かなビジネス価値の双方を手に入れることができるだろう。
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