Step by Step
仮想化導入ガイドPart1 適切な対象サーバの特定
エンタープライズ仮想化プロジェクトの進め方の連載を開始する。Part1では、どのサーバを仮想化すべきかを選択する上での注意点を見ていこう。
仮想化の導入は、言うはやすく行うは難しだ。特に、単に小規模なテストや開発用の仮想ラボを構築するのではなく、実環境を全面的に仮想環境に移行する場合はなおさらだ。では、エンタープライズ仮想化プロジェクトはどう進めるのか、そしてITマネジャーはその実行中にどんな問題に直面するのか。
この連載では、仮想化の導入を以下のフェーズに分類し、解説していく。
- 対象候補の特定
- キャパシティプランニング
- ROI(投資利益率)の計算
- P2V(物理環境から仮想環境への)移行
- エンタープライズ管理:リソース管理/ディザスタリカバリ/インフラ自動化(プロビジョニング)/リソース監視、リポート
仮想化の導入は、言うはやすく行うは難しだ。特に、単に小規模なテストや開発用の仮想ラボを構築するのではなく、実環境を全面的に仮想環境に移行する場合はなおさらだ。では、エンタープライズ仮想化プロジェクトはどう進めるのか、そしてITマネジャーはその実行中にどんな問題に直面するのか。
この連載では、仮想化の導入を以下のフェーズに分類し、解説していく。
- 対象候補の特定
- キャパシティプランニング
- ROI(投資利益率)の計算
- P2V(物理環境から仮想環境への)移行
- エンタープライズ管理:リソース管理/ディザスタリカバリ/インフラ自動化(プロビジョニング)/リソース監視、リポート
現在、仮想化市場は活性化しているように見えるが、この連載ではその逆の例も紹介する。この市場は実はまだ初期段階にあり、幾つかの分野はまだきちんとカバーされていない。今回は、どのサーバを仮想化すべきかを選択する上での注意点を見ていこう。
仮想化すべき物理サーバの特定は、全社的な仮想化プロジェクトの最初のフェーズで行う作業だ。この作業は想像以上に難しい場合がある。効率的なエンタープライズ管理ポリシーを持っていない企業では、この作業に最も時間がかかるかもしれない。
パフォーマンス測定
このフェーズで行うステップの1つとして、データセンター全体の棚卸しがある。同様に重要なもう1つのステップは、すべてのサーバの包括的なパフォーマンス測定を行い、その重要なデータをキャパシティプランニングフェーズのために保存することだ。だが、このステップは見過ごされることが多い。ITマネジャーは一般に、必要なリソースが少ないサーバはどれかを大まかに把握しており、プランニングを行うにはそれで十分と考えているからだ。
しかし、ベンチマーク分析を行うと、予想外のボトルネックが見つかることがある。これは何らかの問題があるか、あるいは単にサーバのワークロードの見積もりが甘かったということだ。前者の場合、ただちにプロジェクトを中断し、ボトルネックの解決に取り組むのが最も得策だ。パフォーマンスの悪いサーバを仮想環境に移行すると、インフラ全体に深刻な影響を与え、トラブルシューティングが極めて困難になる恐れがある。
パフォーマンスの平均値とピーク値を正確に算出することは、仮想化導入の次のフェーズの基礎となる。これらのデータはキャパシティプランニングフェーズで、どのようにして1台のホストマシンに複数の役割を効率的に集約するかを計画するために必要だ。
仮想化の対象候補を選ぶ
パフォーマンス測定の結果をまとめたら、棚卸ししたサーバの中から、仮想化の対象候補として適したものを特定しなければならない。
一部の顧客の認識(あるいは一部のコンサルタントの触れ込み)とは異なり、現状では、すべてのサーバを仮想化できるわけではないし、そうすべきでもない。どのサービスを仮想マシンで運用できるかを判断する上では、仮想化のオーバーヘッド、特殊なハードウェアへの依存、製品サポートという3つのファクターが極めて重要だ。
仮想化のオーバーヘッドは今後、仮想化技術の改良によって徐々に軽減されていくだろうが、当面は十分に考慮しなければならない。
I/Oワークロードは仮想化の重大なネックであり、データのやり取りに大きく依存するサーバは、そう簡単には移行できない。
データベースサーバとメールサーバは、仮想インフラに特に移行しにくい。どちらの場合も、仮想化によってI/Oストリームがオーバーヘッドとして加わり、パフォーマンスに重大な影響が生じる。その影響の大きさから、移行が見送られることも少なくない。
だが、こうしたサーバの種類に関する一般的な原則はなく、肝心なのはワークロードだ。ケーススタディによれば、難なく仮想化できる場合もあれば、仮想マシンに予想の2倍のリソースを割り当てることで、移行がやっと成功する場合もある。
2つ目のネックは、実サーバが依存する特殊なハードウェアに関連する。現在、仮想化製品は以前から使われているシリアルポートやパラレルポートといった、標準的なポートを仮想化できるが、ベンダーはまだ、新しいハードウェアコンポーネントの仮想化への要望に対応できていない。
その好例として、ゲーム開発やCAD/CAMアプリケーションに必要な最新の強力なビデオアダプタがある。これらは、仮想化がサポートされていないことへの不満が最も高いハードウェアだ。
既存サーバを仮想化の対象候補とするにあたっての3つ目のネックは、製品サポートだ。
現在のようなサーバ仮想化の市場が整ってきたのはここ2年のことにすぎず、ベンダーは、製品が仮想マシン上で利用される場合のサポートに非常に消極的だ。
その理由は簡単だ。仮想インフラでは、製品のパフォーマンスに影響する要因があまりに多いからだ。その数が膨大なため、ベンダーのサポートスタッフがコントロールできないものや、あるいは存在すら分からないものが、アプリケーションの動作に深刻な影響を与える可能性がある。
仮想化ソリューションを提供するマイクロソフトも、自社製品が自社のVirtual Server上で利用される場合をサポートしようとしてこなかった。現在もWindows Server技術の多くはサポートされていない。
こうしたことから、仮想化に適したマシンと思われるサーバがある場合に、最終判断を常に左右するのは、そのサーバ上で稼働するアプリケーションの提供元のベンダーだ。少なくとも、ベンダーのサポートを当てにする限りは。仮想化ソリューションのプロバイダーは皆、たいていは公表していないものの、サポートを提供するベンダーのリストを独自に持っているが、アプリケーションの提供元ベンダーに直接問い合わせて、サポートが受けられるかどうかを確認するのがベストだ。サポートなしで仮想環境に移行するのは、たとえ長期間のテストを行った後でもリスキーであり、お勧めできない。
対象候補の識別を支援するツール
仮想化を支援する製品という観点から見ると、市場で提供されている選択肢はまだ非常に少ない。仮想化の対象サーバの候補を識別するという課題に取り組めるのは、4種類の専門企業、つまりハードウェアベンダー、OSベンダー、アプリケーションベンダー、および独立系の仮想化専門ベンダーだ。
IBMやHPのようなハードウェアベンダーは、仮想化に対応した大型コンピュータに加えてアウトソーシングサービスを提供している。こうしたベンダーは通常、仮想化の対象候補を識別するツールを自社用に持っている。まれにだが、IBMのConsolidation Discovery and Analysis Tool(CDAT)のように、こうしたツールが顧客向けに提供されているケースもある。
OSベンダーは現在、仮想化のためのツールを提供していないが、この状況は間もなく変わりそうだ。マイクロソフトからサンマイクロシステムズ、ノベル、レッドハットまで、OSベンダーはこぞって自社プラットフォームにハイパーバイザーを実装しようとしており、仮想化導入を促進するツールを提供することが今後必要になる。
マイクロソフトは5月のWinHEC 2006カンファレンスで、Virtual Machine Managerという新製品を提供すると発表したが、これはこうした必要性などに対応するものだ。
アプリケーションベンダーは仮想化に特化したツールをほとんど提供していない。だが彼らは、仮想化の対象候補を識別するという課題に最も貢献できる立場にある。彼らに最も期待したいのは、各種の平均値をまとめたデータベースを含むアプリケーションプロファイリングツールの提供だ。こうしたツールがあれば、物理環境と仮想化のテスト環境でのパフォーマンス比較に利用できる。
顧客が現在入手できる最良の実際的なソリューションは、4つ目のカテゴリーに属す、独立系の仮想化専門企業から提供されている。
彼らの中で最も広く知られているのは、PowerRecon 2.0を提供するプレートスピンだろう。PowerRecon 2.0は、データセンターの物理マシンの棚卸しとベンチマーキングを支援する包括的で柔軟なソリューションを提供し、得られたデータを物理環境から仮想環境への移行ツールに渡す。このツールについては、仮想化導入に関するこの連載のPart4で取り上げる。
次回は、プロジェクト全体の成否を左右する難関であるキャパシティプランニングのフェーズについて解説する。
本稿筆者のアレサンドロ・ペリリ氏は、自称「サーバ仮想化のエバンジェリスト」で、大きな影響力を持つブログ、virtualization.infoを2003年に立ち上げた。ITセキュリティ/仮想化アナリスト、書籍の著者、カンファレンススピーカー、企業研修の講師として活動している。セキュリティ技術分野のマイクロソフトMVP(Most Valuable Professional)の受賞経験がある。同氏の保有資格は、CISSP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル)、MCT(マイクロソフト認定トレーナー)、MCSES(マイクロソフト認定システムエンジニア:セキュリティ)、CompTIA Linux+、CCSI(チェックポイント認定セキュリティインストラクター)、CCSE+(チェックポイント認定システムエキスパート+)、CCNA(シスコ認定ネットワークアソシエイト)、CCA(シトリックスMetaframe XP認定アドミニストレーター)など。
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