Column
SOAのライフサイクルはソフトウェア開発とは違う
かつてサンでJavaエバンジェリストを務めたインフラビオ副社長、ミコ・マツムラ氏は、SOAのライフサイクルを3つの期間に分割している。
Webサービス管理ソフトウェアベンダー、米インフラビオの技術標準担当副社長ミコ・マツムラ氏によれば、SOA(サービス指向アーキテクチャ)のライフサイクルと、ITやソフトウェア開発に関して従来いわれているライフサイクルとでは、意味合いが異なる。
ライフサイクルという言葉の意味するところが違うがために、SOAに関する議論の際に混乱が生じることもあり、特に、マツムラ氏の関心領域である「ポリシー」と「ガバナンス」の分野においては、なおさらそうだという。もっとも、これは単に言葉の定義をめぐる問題に留まらない。同氏によれば、SOAのより大きなライフサイクルの中でポリシーのライフサイクルにも注意を払うようにすれば、ビジネスに競争上の優勢がもたらされるはずという。
マツムラ氏はこうしたポイントを明確にすべく、SOAライフサイクルガバナンスに関する50ページに及ぶホワイトペーパーを作成した。このホワイトペーパーは現在、インフラビオのリソースセンターで提供されている。
マツムラ氏はSOAのライフサイクルを論じる上で、そのライフサイクルを次の3つの期間に分割している。
- 設計期間:各種サービスを1つにまとめて、ビジネスアプリケーションを構成する
- 実行期間:SOAの実装が始まり、事業活動も開始する
- 変更期間:SOAのアジリティを発揮させるために、ビジネス要件の変化に伴い、不可避な変更を施す
だがマツムラ氏によれば、このSOAライフサイクルは、開発者が従来、「ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)」という言葉で語ってきたものとは、ほとんどあるいはまったく共通点はない。
「SDLCに関して皮肉なのは、SOAのライフサイクルと何も重なり合う部分がない点だ。従来のSDLCは設計やブループリントから始まり、基本的には、サービスやソフトウェアの導入で終了する。SOAの場合と同様、それがサービスである場合には、サービス公開の時点でサイクルの完了となる。SDLCをもっと大きな規模でとらえる人もいる。だが、伝統主義者の中には、導入をゴールと考える向きもあるだろう。オーケイ、これで終わり、万歳!、といったところだ」と同氏。
マツムラ氏の考えでは、SOAのライフサイクルはSDLCが終わったところから始まる。そして、公開されたWebサービスは、同氏が定義するSOAライフサイクルの最初の段階となる「設計期間」において、ビジネスアプリケーションにアセンブリされる。
「実際には、それよりさらに早期の段階もある。アーキテクチャを構築し、計画を練り、全体像をまとめ、相互運用性や標準、セキュリティなど、あらゆることについて話し合う段階だ。つまり、アーキテクチャ設計の段階がある」と同氏。
だが、マツムラ氏によれば、これはSOAライフサイクルの「設計期間」が始まる前の予備的な段階だ。
「SOAの設計期間には、各種の下位サービスを組み合わせてビジネスレベルのサービスにまとめる、という作業が含まれる。つまり、これは別の種類の設計だ」と同氏。
それがSOAの実行期間および変更期間へと続き、そこでライフサイクルは完了する。そして、ここでは既成概念にとらわれずに考える必要があるが、マツムラ氏によれば、SOAのライフサイクルには2つの面があるという。Webサービスには、設計期間、実行期間、変更期間で構成されるライフサイクルがあるというのがそのうちの1つだ。だがマツムラ氏によれば、SOAのガバナンスに関して言えば、ポリシーレイヤーにも独自のライフサイクルがあり、SOAの実装にはそうした戦略的要素が欠けている場合が多いのだという。
「ほとんどの人には、ポリシーそれ自体にもライフサイクルがある、つまり設計期間、実行期間、変更期間があるという認識が欠けている」と同氏。
ポリシーは、設計し、実行し、変更する必要がある。そしてマツムラ氏は、SOAのアジリティはこのポリシーライフサイクルにおいてこそ発揮できる、と考えている。ポリシーライフサイクルを維持し、迅速に変更を加えられる能力があれば、競争上の優勢を確保できるはずだ、と同氏は指摘している。
「皮肉な言い方をすれば、企業は基本的にはポリシーで勝負できる、ということだ」と同氏。
マツムラ氏によれば、SOAアプリケーションの範囲内での事業活動は、例えば、ビジネスパートナーとどのように情報をやりとりするかといった要素を支配するポリシーによって制約されている。だが同氏によれば、それは悪いことではない。なぜなら、同氏の言葉を借りれば、「それによって、電車はスケジュール通りに運行できるだけでなく、脱線せずにすむ」からだ。
マツムラ氏の考えでは、SOAにアジリティを発揮させるためには、ポリシーによる制約の範囲内でWebサービスを機能させることが重要だ。
「アジャイルで柔軟であることと、完全に抑えがきかなくなることとは別だ」と同氏は皮肉めかして語っている。
再び鉄道に例えるならば、組織はポリシーライフサイクルを維持することで、ビジネス状況の変化に伴い、迅速に別の線路に切り替え、異なるルートを取ることができる。
「自社の制約モデルが他社と比べて、より順応性が高く、より柔軟であるほど、自社の方が競争上の優位を維持しやすいということになる。状況の変化に伴い、ポリシーも変化し、活動の流れも変化する。だが、そうした変化はすべて、企業目標の一貫性を維持する方向での変化とすべきだ」とマツムラ氏は語っている。
(インフラビオは2006年9月、ウェブメソッドに買収された。第4四半期までに同社に統合される予定。)
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