失敗しないBIシステム導入の勘所【第1回】
BI導入の成否はプロジェクト企画段階で決まる!
ITマネジャーのための超実践的なBIシステム導入ガイド(全4回)が、いよいよスタート。導入事例も交えながら、その勘所をスピーディーに解説。BIシステムの導入には、一般的な業務とは違う導入アプローチが必要。第1回は、その具体的なアプローチ法と導入工程を解説しよう。
BIシステムはここ数年で情報システム部門だけでなく、一般ユーザーの間でも認知が広まり、さまざまな企業で開発/運用/活用がなされています。しかし、そのような状況の中でも失敗するBIシステムプロジェクトが後を絶ちません。
この連載では、全4回でBIシステム導入の成否において非常に大きなウェイトを占める企画フェーズにおけるポイントを重点的に説明していきます。第1回目の今回は、なぜBIシステム導入において企画フェーズが重要なのかという点についてBI導入プロジェクトの全体像から説明していき、2回目以降では具体的な企画フェーズの進め方、成功事例などを紹介していきます。
BIシステム導入プロジェクトの特徴
スパイラルアプローチと導入工程
BIシステムの導入プロジェクトは、一般的な業務系システムとは異なったアプローチ=スパイラルアプローチを必要とします。スパイラルアプローチとは図1のように導入当初に計画された「基本計画」を基に開発プロジェクトを繰り返し行っていき、徐々にその規模を拡大していくというものです。当然、個々のプロジェクトの結果やユーザー要望の変化に応じて計画自体も見直していく必要があります。
さらに個々のプロジェクトは図2のように、活用診断・基本計画からなる「企画フェーズ」、要件定義から移行までの「本番構築フェーズ」、リリース・活用の「活用フェーズ」の3つに分かれます。
なぜこのようなアプローチが必要なのかということについては、次に挙げるBIシステムの3つの特徴から考えていただければ納得いくと思います。
(1)ROIの説明が容易ではない
例えば販売系のBIシステム導入を検討する際に、導入した結果売上が増加したとして、その増加に対してどれだけBIシステムが寄与したのかを明確に表すことは非常に困難ですし、事前に計算することもできません。そういった意味で、データ加工や運用コスト削減以外のROIを予算申請段階で明確に提示することができないのが実情です。
(2)ユーザー要件を事前に定義しきることは不可能
BIに不慣れなユーザーにBIシステムに対する要件(要望)を聞いても、具体的な使用イメージがないため、すべてを洗い出すことはできません。実際に使い始めてみて、徐々に業務に生かすためのシステム作りを始めることができるようになります。もし事前に、可能性のあるデータや分析画面をすべて用意しようとすると、開発費の増加を招いた揚げ句、ユーザーがどれを使えばよいのか迷ってしまい、結果的に使われないシステムになってしまいます。
(3)ユーザー要件の変化が激しい
昨今のようにビジネス環境が大きく変化する中で戦略的な情報活用を考えた場合、常に新しいデータや分析視点をユーザーに提供し続ける必要があります。例えば、3年前まで実店舗のみを展開していた企業がネット通販を始め、急激な売上増を実現したとしましょう。そのような状況下で、いまだに実店舗のデータしかない、ネット通販のデータはあるが、ネット独自の分析視点(ex.訪問回数、未ログイン期間)を欠いていたとすると、実際の業務に即した情報活用など見込めるはずもありません。
このような特徴から業務系システムのようにウォーターフォール型の開発を行おうとすると、企画段階でプロジェクトが始まらない、あるいはユーザーの要望とはかけ離れた使われないシステムができてしまい、ユーザーからそっぽを向かれてしまうという結果に陥ってしまいます。
企画フェーズの重要性
前述のような結果に陥らないために、いわゆる「Think Big、Start Small」の思想で、最終的なゴールのイメージはきちんと持ち、かつ周囲との合意を形成しながら、要件が明確で結果を出しやすい部分から徐々に開発を行っていくというスパイラルアプローチが有効なのです。
また、このようなアプローチは予算確保という観点でも、業務系システムと比較した場合、予算を確保しづらいBIシステムには有効です。いきなり大規模なBIシステム開発を行うためには数千万~億単位の予算が必要になることもありますが、要件が明確でなく、かつROIを算出しづらいBIシステムに対して初期段階でそこまでの予算をかけられる企業は少ないでしょう。その際、まずは結果の出やすくアピールしやすい部分(ユーザー・業務)に絞り込んでシステム構築を行うことで、次の予算確保を行いやすくなり、さらに実際に結果が出た後であれば周囲の協力も得やすいというメリットがあります。
このスパイラルアプローチを実現する上で一番重要なのは、企業におけるBI導入プロジェクトの柱となる企画フェーズです。企画フェーズでシステム導入の目的や現状の課題の洗い出し、今後の開発計画を決定しておくことで、継続的な予算・人的リソースの確保、目的に沿ったツール(DB・BIツールなど)選定、ビジネス環境が大きく変わった際の計画の見直し、企業内での投資の重複を防ぐなど、さまざまなメリットを享受することが可能です。
BI企画のポイント
では実際に企画フェーズを行う際のポイントをいくつかご紹介していきます。
現状の診断
より効果的な企画立案を行うには、当然BIシステムの現状を知る必要があります。企業によっては、すでに複数のBIシステムを導入していることもあれば、各担当者が表計算ソフトなどを使った活用を行っているというところもあるでしょう。現状把握の段階では活用レベルの高低が問題になることはありません。ここでのポイントはシステム面だけに偏った視点で診断を行わないことです。
さまざまなBIプロジェクトに係っていく中で、多くのユーザー企業がシステム面だけに気をとられて企画を行ってしまっているという状況を見てきました。これは情報システム部門が主導で行っている場合に陥りがちな状況です。システムだけがどんどん高度になっていっても、業務とかみ合わない、高度すぎてユーザーが使いこなせないという結果になってしまっては意味がありません。そこで現状の診断は「BIシステム化度」、「BI活用度」という2つの側面から行っていく必要があります。そうすることでシステム側に問題があるのか、ユーザーのリテラシーの問題なのか、業務への組み込みが考えられていないのかなどの問題の明確化と次に打つべき一手が見えてくるのです。
基本計画立案
次の段階では、現状の診断結果を元に基本計画を立案します。ここでのポイントは理想を追うことだけにとらわれないことです。
あまりに理想が先行しすぎて、一気に最終的なゴールにまで到達するような計画を立ててしまった場合、まず間違いなく失敗します。そこで最終的なBIシステムを活用した業務のイメージは持ちつつ、現状の予算や関連するシステムの状況をきちんと見極めた上で、「BIシステム化度」、「BI活用度」の2つの側面から最終的なゴールに到達する道筋を明確化していきます。
ゴールまでの道筋が見えた段階で、初めて予算やスケジュール、想定される効果などから直近の開発プロジェクトの開発範囲を決定します。その後は、開発プロジェクトが終わる度に、評価と計画の見直しを繰り返し行っていくという流れになります。
今回は、BIシステム導入プロジェクトにおける企画フェーズの重要性と簡単な概要についてご説明しました。次回は、企画フェーズにおける活用診断と基本計画立案の具体的な進め方についてご説明していきます。
(アイエイエフコンサルティング 岡安 裕一)
IAFコンサルティング
1998年に設立されたDWH、BI専門の独立系コンサルティング会社。金融、通信、製造、流通、サービスなど多岐にわたる業種のDWH、BIシステム構築プロジェクトに参画し、システム分析・設計・導入から運用までをトータルにサポート。 メディアへの寄稿、セミナー講演などを通じてDWH、BIの普及、啓蒙活動を実施。
株式会社アイエイエフコンサルティング
TEL:03-3538-8277
お問い合わせ先:olap@iafc.co.jp
岡安 裕一
株式会社IAFコンサルティング マーケティング部所属。1998年にユーザー系情報システム企業にSEとして入社。その後、通信系企業にて、営業職としてさまざまな顧客の問題解決に従事。現職についてからは、セミナー講演や顧客への提案活動を中心として活動中。
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