失敗しないBIシステム導入の勘所【第3回】
BI導入の成否はプロジェクト企画段階で決まる!【第3回】
ITマネジャーのための超実践的なBIシステム導入ガイドの第3回目。具体的なアプローチと導入工程、企画フェーズの実際の進め方を解説してきたのに引き続き、担当者側からみた発案と経営者側からみた発案、双方のやり方を解説する。今回は、IT部門担当者側からの事例を中心に紹介していく。
前回は、企画フェーズでのタスクである「活用診断」、「基本計画立案」の2つの具体的な進め方について説明しました。
第3回目の今回は、企画フェーズにおける成功事例の中から、IT部門担当者が企画の発案から予算の申請/獲得までを行った「ボトムアップアプローチ」での事例を紹介していきます。
ボトムアップアプローチについて
前回も簡単に触れましたが、企画フェーズを進める上での重要なポイントとして、企画立案者がどの立場にあるかということが挙げられます。企画の立案者の立場によって、大きく2つのアプローチ方法に分けることが可能です。まずは、担当者レベルからの発案である「ボトムアップアプローチ」、そして、経営層レベルからの発案である「トップダウンアプローチ」です。
多くの場合、ボトムアップアプローチの形で企画が練られていくこととなります。このアプローチ方法では、担当者が日々の業務の中での課題を解決する方法としてBIシステムの導入を検討し、企画を作成して最終的には予算の確保を行うという流れで進んでいきます。
ボトムアップアプローチ成功事例
■企業プロフィール
業種:製造業
従業員数:約4000人(連結)
売上:約4500億円(連結)
■背景
この企業では、基幹系システム(販売/物流システム)の再構築のプロジェクトが始まっていました。BIシステムについても、データソースとなる基幹系システムが変更になることから、再構築が必要になることは確実でしたが、一部の人々の間では必要性は感じられながらもリソース不足であること、事前に予算化されていなかったことなどの理由によって、まったく進んでいないという状況に陥っていました。
上記のような背景を踏まえ、まずは企業内部におけるBIシステム再構築に関する「必要性の合意形成」、「予算と社内協力体制の確保」を行うために基本計画を作成することを検討し、内部からの意見だけでは社内の説得力に欠ける可能性がある、情報活用のあるべき姿をまとめるのにはBIシステムに関する経験とノウハウが必要である、ということから外部のITコンサル企業の支援を受けることを決定しました。
■スケジュール
すでに基幹系のプロジェクトが進んでいることから、基本計画策定にかけられる期間は3カ月。その期間と限られた予算の中で企画の策定を行いました。
■具体的な進め方
基本計画策定の進め方を成果物の一部とともに説明していきます。
** 1.現状分析**
本件の主担当者はIT部門のBIシステム担当者であったため、システム面の現状については比較的容易に情報を集めることができ、また、システムのアーキテクチャとしての具体的なイメージはある程度固まっていました。そこで、本件では業務活用面のヒアリングに注力し進めていくという方針となりました。業務活用面のヒアリングを行っていく際には、担当者が個人で欲しいデータではなく、事業部や部門としてオーソライズされた目標値などを中心にまとめていくことがポイントとなります。ただし、担当者の個人的な意見もある程度は盛り込んでいかないと積極的な協力は得られませんので、バランスをうまくとることも必要になります。具体的なヒアリング項目としては、分析目的と分析/モニタリングを実施している数値や切り口、そのデータを得るのにかかるコスト、本来は分析を行うべきだが何らかの理由でできていない分析数値や切り口などが挙げられます。下の図では、単純化した業務活用案をサンプルとして記載しています。
** 2.導入目的・効果の策定**
現状分析結果から下記の3つの大きな目的を決定しました。
導入目的(1):既存BIシステムの移行(現状機能の担保)
既存BIシステムは様々な部門の業務で活用されており、万一使用不能になった場合に業務に大きな支障が出るため
導入目的(2):新基幹系システムの機能補完
新基幹系システムでは、データの保存期間が1年程度であることや予算の関係で帳票(データ)出力機能を大幅に削減したことから、情報活用が十分に行えないため
導入目的(3):情報系システムの基盤整備
既存BIシステムの使用の有無にかかわらず、各部門でBIシステム導入のニーズがあり、情報投資の効率性やユーザー教育を考えた場合に、統一された基盤での統一されたデータの提供が必要であるため
効果としては、定性的な部分と定量的(金額・時間)な部分を具体的にまとめていきました。定量的な効果では、データ抽出や基幹系に保存されない過去データの参照のために必要な人的なコストが2500万円/年間もかかっているという試算から、今回の投資が十分に回収可能なものであることを具体的に示すことに成功しました。
** 3.BIのあるべき姿の検討**
システム面でのあるべき姿は、簡易に利用可能な形でのデータの保管が主な目的であるDWH、目的別にデータをまとめたデータマートを構築し、すでに多くの部署で採用されていたBIツールを標準とするという構成に決定しました。既存BIシステムではDWHが存在せず、データの統一化などに問題を抱えていたためです。また、BIツールについては、すでにユーザーに浸透しつつあり、教育コストを抑えることができること、ライセンスをすでにある程度確保していること、ユーザー要件を十分に満たすことができること、という3つの理由から決定を行いました。
業務面では、各業務を部分最適していくためではなく、全社の戦略に沿った全体最適化を促すための共通のツールとしてBIシステムが活用されることを理想的な形としました。いきなりそこまで到達することは難しいため、BIシステムを個別の業務に生かしつつ、各部門で使用されているKPIの関連を下の図のように仮説としてまとめ、全体最適化するための検証を行っていくことにしました。
** 4.全体基本計画作成+次期スコープ検討**
本件では、全体基本計画と呼べるものまでは作成しませんでした。時間と予算の制約から、まずは再構築される販売物流システムの周辺のデータを次期スコープと決定し詳細をまとめ、それ以外の部分については、以下のようにこの企業における情報活用の全体像と今回の範囲を明確にした資料としてまとめています。
** 5.プロジェクト基本計画作成**
次期スコープの内容を元にH/W・S/W・開発コストなどの具体的な費用とスケジュールなどをまとめました。本件では要件定義終了段階でその後の費用については再見積を行うという方針としたため、全体の費用としては概算レベルにとどめました。
■成果物
成果物として詳細な項目を記載した「基本計画書」と、予算の承認を受けるための役員会で使用する「エグゼクティブサマリー」を作成しました。「基本計画書」は役員層などの決裁権限者へのプレゼン資料としては細かすぎてポイントが伝わりにくくなるため、BIシステムを再構築することでのメリットや具体的な効果、業務での活用案、プロジェクトに対する投資予定額やスケジュール等を簡潔に1枚のシートにまとめた「エグゼクティブサマリー」を作成して役員会に臨みました。
■効果
役員会でのプレゼンの結果、BIシステムの必要性が認められ、BIシステム再構築プロジェクトとして5000万円程度の予算と社内リソースの確保、各部門担当者の協力を得ることができました。
実際のプロジェクトでは、確保した予算以上の投資が必要となりましたが、基本計画書を元に追加予算が必要になった理由を具体的に説明できたことから、比較的容易に追加予算の確保も行うことができたという効果もでています。
このようにボトムアップアプローチでは、いかに具体的な効果を示して予算を確保するかという観点で企画をまとめていく必要があります。
次回はトップダウンアプローチにおける成功事例の紹介を行います。
IAFコンサルティング
1998年に設立されたDWH、BI専門の独立系コンサルティング会社。金融、通信、製造、流通、サービスなど多岐にわたる業種のDWH、BIシステム構築プロジェクトに参画し、システム分析・設計・導入から運用までをトータルにサポート。 メディアへの寄稿、セミナー講演などを通じてDWH、BIの普及、啓蒙活動を実施。
株式会社アイエイエフコンサルティング
TEL:03-3538-8277
お問い合わせ先:olap@iafc.co.jp
岡安 裕一
株式会社IAFコンサルティング マーケティング部所属。1998年にユーザー系情報システム企業にSEとして入社。その後、通信系企業にて、営業職としてさまざまな顧客の問題解決に従事。現職についてからは、セミナー講演や顧客への提案活動を中心として活動中。
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