Column
社員ロイヤリティなくして顧客ロイヤリティなし
社員が自社製品の価値を信じず、会社にロイヤリティを持っていなければ、顧客の心をつかみ、良好な関係を築くことはできない。
特別な体験を提供することで顧客ロイヤリティの向上を図る必要性を認識している企業は多いものの、それが行動に結びついていないことが、コンサルティング会社のストラティビティグループの最近のリポートで明らかになった。
ストラティビティグループは先ごろ、毎年実施している「顧客体験管理調査」の最新のリポートを発表した。世界の経営幹部309人が回答したこの調査では、さまざまな気になる傾向が浮かび上がった。「自社は顧客ロイヤリティに値する」と答えた回答者は40%にとどまり、66%は「自社の経営陣は顧客と頻繁に会っていない」と答えた。また、56%は、「顧客との関係が明確に定義されていない」との認識を示した。同調査は今回が4年目で、ストラティビティグループでは、自社の製品やサービスに関する経営幹部の信頼が、一貫して低下していることに注目している。
「この傾向は全体的なものだ」とストラティビティグループのライオー・アラシー社長は語る。「彼らは自分たちの製品が、顧客に効果的にアピールできていないと思っている」
顧客本位の企業へと変革するための取り組みは、現場の社員が製品や自分の会社を信頼していなければ、失敗に終わる。だが同調査では、「自社は社員のロイヤリティに値する」と答えた回答者は54%にとどまった。
「これは危険な傾向だ」とアラシー氏。「社員が自社製品の価値を信じず、会社にロイヤリティを持っていなければ、顧客の心をつかみ、財布のひもを緩めさせ、良好な顧客関係を築くための競争で、劣勢に立たされてしまう」
これらの傾向は、製品やサービスのコモディティ化が進む中で生じていると、アラシー氏は指摘する。
「現在、企業が顧客に提供する体験では、差別化要素として社員の態度や姿勢に依存する部分がますます大きくなっており、製品やサービスそれ自体は、もう差別化の決め手ではなくなっている」とアラシー氏。「ところが、社員への依存度が高まっているのに、会社に対する社員のコミットメントが低下している」
さらに、上級経営陣が顧客に対するコミットメントを示していなければ、当然のことながら、彼らが顧客体験の向上や、顧客指向の強化を進めようとしても、そっぽを向かれるのがオチだろう。ところが、「上級経営陣は定期的に顧客と会っていない」と答えた回答者が半数近くを占めるのが現状だ。
また、同調査では、企業は顧客ロイヤリティの向上や、顧客本位の経営に意欲を持ちながらも、これらの取り組みに、ツールや数値指標を活用していないことも分かった。
「3分の2の社員が、積極的な姿勢と笑顔だけを武器に、顧客が抱える問題の解決に当たっている」とアラシー氏。「われわれの調査は一貫して、企業の取り組みの成果は急激にではなく、緩やかに現れることを示している。マネジャーは、少しずつ着実に前進していくことでよしとしているわけだ。だがそれでは、顧客がすぐに気付くような、また、経営陣がそのビジネス効果にすぐ気付くような、大きな変化にはつながらない」
例えば、同調査では、回答者の50%が、自社の年間顧客維持率を知らないと答えた。また、年間平均顧客価値を知らない回答者が70%、苦情処理コストを知らない回答者が81%、新規顧客獲得コストを知らない回答者が75%に上った。
客観的な指標で自社の現状を詳細に把握した上で、変革にコミットメントすることが重要だと、アラシー氏は指摘している。
「まず最初に、自社の中核的な価値提案の有効性を評価することだ」と同氏。「そして、新しい製品やサービスをリリースするときは、前もって社内に宣伝し、価値を納得してもらうようにすべきだ。そのためには社内マーケティングが必要になる。一般に、企業は社内の情報配布に関する権限のあり方を、再検討する必要があると思う」
実際、社員のロイヤリティと自社製品への信頼は、顧客指向の先行指標といえる。これに対し、顧客ロイヤリティは遅行指標だ。
「社員は、顧客に何を伝えるべきかを念頭に置きながら、日々の仕事を行っている」とアラシー氏。「自分の会社の社員から、『うちはそんなにすごくない』と言われたら、しっかり軌道修正しなくてはならない」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー