Case Study
顧客満足からカスタマーエクイティに軸足をシフトする米大手銀行
米大手銀行ワコビアはカスタマーエクイティ(顧客資産)を定義し、その向上を図る新しい取り組みに乗り出した。そのための高度なデータ分析にSASの技術を利用している。
顧客満足と顧客ロイヤリティの向上が銀行業務の重要課題とされているのは、今に始まったことではない。
だが、米銀行大手のワコビアは、この考え方をもう一歩推し進めている。同行はミシガン大学の集計による顧客満足度の年間ランキングですでに首位を占めているが、カスタマーエクイティ(顧客資産)を定義し、その向上を図る新しい取り組みに乗り出している。
「コンサルティング会社は、顧客生涯価値に注目すべきだとアドバイスしている。だが、このアプローチで実現できる顧客価値は平均的なものにとどまる」とワコビアの顧客分析調査/ターゲティング(CART)グループの上級副社長兼統計/モデリング担当ディレクター、ダン・ソープ氏は語る。「われわれは顧客の各世帯ごとにカスタマーエクイティを計算している。そうすることが顧客価値の的確な把握と向上に役立つと考えている」
だが、それは容易なことではない。ワコビアの顧客は1300万人以上に上り、これらの顧客を世帯単位で分類してそのカスタマーエクイティを集計するには、各世帯の構成を把握しなければならない。夫と妻だけでなく子供1人1人や、さらには事業用のものも含めて、当座預金や抵当ローンなどを計算の対象にする必要がある。
ソープ氏のチームは、世帯ごとのカスタマーエクイティの集計を年末までに完了する計画だ。ワコビアはその結果と過程のデータを顧客向けのキャンペーンなどに活用できるようになる。
「これらのデータを利用して、キャンペーンや顧客向け商品の強化だけでなく、顧客生涯価値の向上を図っていきたい」(ソープ氏)
例えば、ある世帯がワコビアの当座預金とクレジットカードを利用していて、住宅担保ローンの見込み客だとする。ワコビアはそのローンを提案して単に高額での成約を目指すのではなく、そのローンが、その世帯が今後利用資格を持つ可能性のあるすべての商品にどんな影響を与えるかをあらかじめ検討し、それを踏まえてローンを設計できるようになる。また、世帯ごとのカスタマーエクイティの集計を通じて得られたデータは、最適な顧客対応の実現に向けて、適切なメッセージを作成するためだけでなく、誰にいつ連絡を取るべきか、最も価値ある提案は何かを判断するためにも利用される。さらに将来的には、ソープ氏はこれらのデータを使った広告プログラムやスポンサーシッププログラムも試そうと考えている。
カスタマーエクイティの計算は、ソープ氏が統括する統計/モデリング担当の10人のチームが行っている。このチームは、ワコビアのマーケティング部門と連携して活動するCARTグループに属している。
カスタマーエクイティの計算では、SASインスティチュートの技術を使った高度なデータマイニング、サバイバル分析、多段階モデルが利用されている。SASはワコビアと長年の取引関係がある。
「SASはこれらの分野をすべてサポートできる唯一のベンダーだ」とソープ氏。同氏はワコビアに入社する前の2年間、ゴアテックスを製造するW.L.ゴア・アンド・アソシエイツに勤めていたときにSASの研究開発チームと築いた密接な関係を、現在も維持している。ワコビアはSASの技術を利用して、ホールセールバンキングや、ワコビアダイレクト、電子商取引部門など、個々のチャネルや銀行業務部門ごとに顧客分析を行っている。「多くの場合、銀行のスプレッド(利ざや)データは偏差の数が30もある。単純な統計では正確な結果が得られない。われわれはSASの強力なツールを利用することで、的確な情報分析ができている」(同氏)
ワコビアは1999年から顧客満足に力を注いでおり、カスタマーエクイティに関する取り組みもそこから発展したものだ。実際、広報担当者によると、カスタマーエクイティが指標となる顧客ロイヤリティは、今後5年間にわたるワコビアの7つの優先事項の1つとなっている。ワコビアは以前から顧客ロイヤリティの向上に優先的に取り組んでおり、CEOのケン・トンプソン氏はその取り組みを引き続き推進している。
「われわれは現状に安住してはならないと認識している。顧客満足の次のステップとして顧客ロイヤリティにフォーカスしているのはそのためだ。そして顧客の生涯にわたるエクイティに関する取り組みは、収益のさらなる向上に向けた次のステップだ」とソープ氏。「上級経営陣にプレゼンテーションを行うときには、顧客の生涯にわたるカスタマーエクイティの計算値を、顧客獲得コストとともに必ず盛り込むようにしている。われわれは正確な現状認識を基に、長期的な視点でビジネスを進めることを目指しているからだ」
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