万能ではないが検討の価値あり
Webアプリケーション脆弱性スキャナの勧め
脆弱性スキャナは、開発者が潜在的なセキュリティホールを調査し、発見するのをサポートするツール。手動で行うと時間がかかる面倒な作業を自動化してくれる。
あらゆる規模の企業がWebアプリケーションを利用している。そしてハッカーはこうしたオンラインアプリケーションの弱点を常に探っている。Webアプリケーションは価値の高いバックエンドデータベースへの入り口になるからだ。ブログやWiki、RSSなど、先進的なインターネット技術によるWeb2.0機能の登場に伴い、Webアプリケーションは強力かつ複雑になり、急速な進化を遂げている。そうした中でアプリケーションに新たな脆弱性が発生する可能性が増大している。
開発者が潜在的なセキュリティホールを調査し、発見するのを支援するツールとして、Webアプリケーション脆弱性スキャナが多数提供されている。こうしたツールは、手動で行うと時間がかかる面倒な作業を自動化し、スピードアップすることを目的としている。Webサイト内を巡回して各種の攻撃シナリオを試行することで、スキャナはアプリケーションの応答をセキュリティ脆弱性シグネチャのデータベースと照合する。
普及が進まない理由
Webアプリケーション脆弱性スキャナは便利ではあるが、すべての開発チームにとっての必携ツールとして定着するには至っていない。その大きな理由はコストだ。しかし、無料で入手できる優れたオープンソーススキャナもいろいろある。以下では、Webアプリケーション脆弱性スキャナの導入がなかなか進まない幾つかの理由を検討してみよう。
選択肢が非常に多い
脆弱性スキャナの購入を検討する人の多くは、さまざまなスキャナを比較して選択するのが難しいことに気付く。予算要件と、特定のアプリケーションプラットフォームに対応する機能要件の両方を満たすスキャナはなさそうに見える。だが、スキャナの比較と選択の参考になるWeb Application Security Scanner Evaluation Criteria(英語)が公開されており、手軽に利用できる。これは、Webアプリケーションの脆弱性を特定する機能についてWebアプリケーションセキュリティスキャナを評価するための一連のガイドラインをまとめたものだ。
限られた脆弱性しか発見できない
スキャナが企業に定着していない理由の1つとして、ネットワークセキュリティの「よく知られた」脆弱性、つまり対応するシグネチャが用意されている脆弱性しか発見できないことが挙げられる。スキャナの機能に関する誇大宣伝により、ユーザーの期待は非現実的なものになっている。実際にはこのツールだけでは完全な脆弱性評価はできない。とはいえ一般的な技術的脆弱性、例えばSQLインジェクションの欠陥、クロスサイトスクリプティングの脆弱性、パラメータ改変、hiddenフィールド操作、バックドア、デバッグオプション、バッファオーバーフローなどの脆弱性の発見に、スキャナが威力を発揮するのは確かだ。
しかし、カスタム開発されたWebアプリケーションの場合はそうはいかない。Webサイトのカスタムアプリケーションコードは注意すべき危険な要素であり、Ajaxを採用しているものは特にそうだ。サーバ側の機能がそれぞれハッカーの攻撃ポイントになるからだ。ユーザーとサービスの間で発生するやりとりのバリエーションが非常に多いこうしたタイプのアプリケーションでは、テストを自動化しにくい。一部の脆弱性がスキャナのチェックをすり抜ける恐れがあるからだ。
任せきりにはできない
スキャナが真の人工知能を利用できるようになるまでは、一部のカテゴリの脆弱性はスキャナでは発見しにくいままだろう。スキャナは構文的な情報を処理することしかできない。コンテキストの中で例外事象をとらえたり、そうした事象について規範的判断を行ったりすることはできない。直感的な結論を生み出したり導いたりする技術が実現しない限り、分析的推論によってデータの流出を察知するようなことは、コンピュータにはまったく不可能だ。セキュリティ専門家だけがビジネスロジックの脆弱性を特定できる。こうしたタイプの脆弱性はコンテキストにかかわるものだからだ。
アプリケーション脆弱性スキャナに求められるもの
それでも、アプリケーション脆弱性スキャナがアプリケーションの開発ライフサイクルで果たせる役割は大きい。このツールを使えば、一般的なプログラミングエラーを迅速に発見できるため、人手によるコードのレビューや分析により多くの時間をかけられる。最新の既知の問題をチェックさせるために、スキャナは定期的にアップデートすることが望ましい。さらに、スキャナは完成したアプリケーションに対してだけでなく、その開発ライフサイクル全体を通じて利用できなければならない。効果的なツールであるためには、各スキャンで収集した情報を以降のチェックに生かす仕組みを備えている必要がある。また、手作業による分析と自動分析を組み合わせて活用できる機能も必要だ。例えば、HTTP/HTTPSリクエストおよびレスポンスの表示、変更、記録が可能なスキャナを使えば、開発者はアプリケーションの挙動をリアルタイムに、あるいは後でレビューの際に可視化して調べることができる。また、スキャンリポートは分かりやすいものでなければならず、スキャナ自体も使いやすくなければならない。スキャナで何がチェックでき、何がチェックできないかを示すガイドラインも必要になる。これらの要件はいずれもさまざまなスキャナで満たされているが、これらをすべてクリアするスキャナはまだ存在しない。
スキャナを習得して最大限に活用するには時間がかかるだろうし、開発者はただでさえ働き過ぎの傾向がある。しかし、本番環境で脆弱性を修正するコストを考えれば、このアプリケーション検証ツールは導入を検討するに値する。
本稿筆者のマイケル・コッブ氏は、データセキュリティおよび解析に関するトレーニングやサポートを提供するITコンサルティング会社、Cobweb Applicationsの創業者兼マネージングディレクター。CISSP-ISSAP(公認情報システムセキュリティプロフェッショナル―情報システムセキュリティアーキテクチャプロフェッショナル)の資格を持つ。共著書として「IIS Security」があり、主要なIT出版物に多くの技術記事を寄稿している。
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