小さな節約で大きな省エネ
IEEEの“グリーン”な新イーサネット仕様
IEEEの新しい省エネプロジェクト「P802.3az Energy Efficient Ethernet」は、ネットワークアイドル時のエネルギー浪費が大きいことに目を付けた。
IEEEの新プロジェクト「P802.3az Energy Efficient Ethernet」は、小さな節約の組み合わせによる大きな省エネの実現を目指している。
同プロジェクトは、ローレンス・バークリー国立研究所のマイク・ベネット、ブルース・ノードマン両氏と、南フロリダ大学のケン・クリステンセン教授の研究に基づいている。この研究において、ネットワークはアイドル時のエネルギー浪費が大きいことが分かった。
判明した事実は以下の通り。
- 現在デスクトップPCの大半は、数年前の標準だった100Mbpsより高速の1Gbpsインタフェース装備で出荷されている
- 典型的な1Gbpsインタフェースは100Mbpsインタフェースに比べ、電力消費量が約2ワット多い
- イーサネットインタフェースはネットワークのアイドル時もこのレベルの電力を消費し続ける
- 接続先にあるLANスイッチポートの1Gbpsインタフェースも、100Mbpsインタフェースより電力を2ワット多く消費する
- 従って、100Mbpsから1Gbpsにアップグレードすると、電力消費は接続されたPC 1台につき約4ワット増える
そこでIEEEプロジェクト作業部会は、アイドル時やネットワーク負荷が少ない場合にこのインタフェースの速度を落とすことを提案。負荷が軽くなるとインタフェースが速度を落とすようにネットワーク機器間の通信を調整し、負荷が増えると速度を上げる調整を行う方法が提案されている。
省電力計算
ベネット、ノードマン、クリステンセンの3氏は、デスクトップPCのネットワークインタフェースの平均稼働時間はわずか5%にすぎないとする研究に言及。さらに、現在利用されているPCの約3分の2は常時電源が入ったままになっていると推定した。2012年までに米国内のPCは8000万台になるとして、その半分が省エネイーサネットインタフェース搭載になると仮定し、PC 4000万台、キロワット時当たりの電力料金0.08ドルとして計算すると、米国内で推定7800万ドルの節約になる。欧州などの各国で同程度の市場規模を基準とすると、世界では約2億3500万ドルの節約になる計算だ。
この推計と提案は2006年に完成した。実際の省エネ量は、プロジェクトの提案を大きく上回る可能性もある。米政府の最新統計によると、米国各地で電力料金が大幅に高騰している。2007年はニューヨークでキロワット時当たり約0.15ドル、カリフォルニアで0.13ドルだった。冷却負担の軽減はこの計算には含まれていないが、削減量のさらなる増加につながる。
速度変更の仕組みとポリシー
P802.3az Energy Efficient Ethernetプロジェクト作業部会は、新しいMACレベルコマンドとレスポンスの作成を提案している。速度変更の必要性を感知するインタフェースは、接続先のパートナーに変更リクエストのコマンドを送り、パートナーは受け入れまたは拒否のレスポンスを返す。
速度変更は素早く行う必要がある。目標は1ミリ秒以下という記録的速度で同期し直すことだ。それ以上遅いと、転送インタフェースでバッファオーバーフローが起き、パケット損失につながる可能性がある。
省エネインタフェースは、提案された仕様を取り入れた装置を設置すると導入される。多くの場合、接続される両側の装置が同時にアップグレードされるわけではない。仕様には、アップグレードされたインタフェースが接続初期化の際に、反対側のインタフェースも同じ仕様をサポートしているかどうか判断する手段が盛り込まれる。
IEEE P802.3az作業部会はMACレベル構造に焦点を絞っているが、速度をいつ変更するかの決定は、どの程度の省エネが実現できるかに大きくかかわってくる。速度変更のポリシーは各メーカーが定める。速度変更は、転送用にメモリにバッファされるパケットの数や時間経過に伴う平均データ転送速度など、複数要因の組み合わせが基準となり得る。
光ファイバーも省エネ
作業部会はこれまでのところ銅線インタフェースのみに的を絞っているが、光ファイバーを含めることも提案されている。光ファイバーのインタフェース速度を落とすことは現実的ではないが、短時間の接続休止による省エネは可能だ。
光ファイバーの省エネは、米Verizonの光ファイバー通信サービス「FiOS」のようなFTTP(Fiber To The Premises)サービスを導入しているインターネットサービスプロバイダー(ISP)にとって重要な目標になっている。こうしたサービスの利用者が数百万人規模に到達すれば、個々の利用者の削減量は少なくても、全体では大きな省エネになる。
Energy Efficient Ethernet作業部会がやるべきことはまだたくさんある。仕様が完成して認可されたとしても、実際の省エネ実現までには数年かかる。新しいインタフェース装置が開発され、一定の導入数に達しなければならないのだ。
いずれ電力料金は上がり、省エネの重要性が増すと考えると、実際の削減量は2006年の研究予想を大幅に上回るかもしれない。
本稿筆者のデビッド・B・ジェイコブズ氏はThe Jacobs Groupを経営し、ネットワーキング業界で20年以上の経験を持つ。フォーチュン500企業ならびにソフトウェア分野の新興企業を顧客として、最先端のソフトウェア開発プロジェクトの管理やコンサルティングを手掛けてきた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー