マシンルームから愛を込めて【第1回】
運用管理に「コーン入りしょうゆラーメン」の発想を
システム運用管理と聞くと、どうしても「縁の下の力持ち」というイメージを抱きがちだ。しかし、運用管理を「サービス業」ととらえ直してみると、がらりと見方が変わってくる。
システム運用管理業務に従事していると、本当にいろいろな場面に遭遇します。わたしはシステム運用管理サービスに携わってはや10年目を迎えますが、いまだに現場では日々さまざまな課題が発生します。
でも、そうした課題に悪戦苦闘しながら取り組んでいるうちに、やはりそれなりにノウハウや知恵のようなものが身に付いてくるものです。本コラムではこれから何回かにわたって、わたしが現場で得たものを、読者の皆さんに紹介していきたいと思います。わたしと同じく、日々現場で戦っているシステム運用担当者の方々、あるいはシステム管理者の方々のお役に少しでも立てれば幸いです。
さて、第1回は少し大きなテーマで、「システム運用管理」というものに対する、そもそもの考え方について述べてみたいと思います。
真っ先に「できない理由」を考えてしまう……
先日、ある顧客との会議(定例会)に参加したときの話です。わたしたちのチームは、その顧客企業へインフラの運用監視サービスを提供しており、アプリケーションの開発と運用はその企業の情報システム部門(以下、情シス)が担当しています。
定例会はわれわれ運用監視チーム、情シスの担当者、システムを利用しているユーザー部門の担当者の三者で行われたのですが、その席上でユーザー部門の担当者から、「業務アプリが使いにくいと利用者からクレームが上がってきているので、改修してほしい」との要望が出ました。具体的には、「業務は行えるのだが操作感が良くない」「必要な機能にたどり着くまでに幾つもページを遷移する必要がある」「どこをクリックすればどうなるのか分りにくい」といった内容でした。
それに対する情シスからの回答は、以下のようなものでした。
「これは要件定義に基づき開発されたシステムで、指摘されている事項はシステムの仕様となるので、改修はできない。改修を行うとしても大きな変更となるため、かなりの費用が掛かる。逆にこれは、利用者の情報リテラシーが低いことが問題ではないか」
何とも取り付く島もないといった感じですが……しかしシステム運用の現場では、実はこういった場面を比較的よく目にするのです。ユーザーは期待通りに動かないシステムに対して改善を求めますが、開発と運用を担当している情シスからすれば、システムはきちんと要件を満たしており、利用者がシステムの仕様通りに使えば必要な機能は利用できるので、それに従ってほしいということになるのです。
どうもシステム運用にかかわる人たちは、こういう場面に遭遇すると、
「システムの仕様だからそれに合わせてほしい」
「仕様書に記載されている運用から外れるので対応できない」
「ほかの人からはそういう話が上がってこないので個別の要求には対応できない」
などなど、まず真っ先に「対応できない理由」を考える傾向があるように思えます。
システム運用は「サービス業」
ここで、ちょっとシステム運用に対する見方を変えてみましょう。
「ITIL」という概念が登場してから、ITの運用は「ITサービス」として定義され、いろいろな場面でこの考え方が利用されてきました。ITILの中では、システムも開発もITサービスを提供するためのプロセス、または構成アイテムという位置付けになります。実際のところ、ITILの考え方は本当によくできていると思います。個人的には、この概念を実際のシステム運用にうまく落とし込んで実装できれば、うまく回らない方がおかしいとさえ思えるほどです。
では、ITサービスとは一体何でしょうか? 「ITが提供するサービス」「ITを使って提供するサービス」とでも説明がつくかと思います。では、そもそも「サービス」とは一体何でしょう?
試しにWikipediaで調べると、サービスとは「売り買いした後にモノが残らず、効用や満足などを提供する、形のない財のこと」とあります。なるほど……ということは、ITというツールを使ってユーザーに効用や満足などを提供するのがITサービスということになるのでしょう。
もうちょっと突っ込んで考えてみると、開発・運用担当者はITサービスを提供する側にいるわけですから、サービス業だといえるでしょう。サービス業である以上、顧客がどういうサービスを求めているのか、どういうサービスに「感動」するのかを常に考える必要があるとわたしは思っています。
さて、冒頭の話に戻りますが、ユーザー部門担当者は本当の意味でのITサービスの提供を受けているのでしょうか? 少し極端な言い方かもしれませんが、使いにくいシステムを仕方なく押し付けられているという状況であり、満足もしていなければ納得もしていないわけですから、そうとはいえませんよね。
確かに、ユーザーが突拍子もない無理難題を言ってくるケースもあります。でもサービス業である以上は、そういったものにも対応していく必要があるとわたしは考えます。
「じゃあ個々のユーザー要求を、あり得ないような内容のものまですべて含めて、ITサービスに反映していくのか?」
そういうわけではありません。できない場合は代案を出す、理解してもらう、納得してもらうという対応を、普通に行う必要があるということだと思います。
しょうゆラーメンにコーン?
先ほども述べましたが、ITの運用にかかわる人たちの中には、ユーザーからのさまざまな要求に対して、まず真っ先にできない理由を考える人がいます。例えば、ラーメン屋でどうしてもしょうゆラーメンにコーンを入れて食べたくなって、店員さんにお願いしたとしましょう。そのとき、「コーンはみそラーメンに入れるために用意しているもので、しょうゆラーメンには入れられません」とつっけんどんに言われたらどうでしょう? 気長なわたしだったら、取りあえずは店主を呼んでもらいますが、短気な方ならその場でラーメンを食べずに店を出て、もう二度とその店には行かないでしょう。
少し脱線しましたが、ユーザーの要求に対して「できない理由」を考える前に、「どうすればできるのか」という考え方をしていく必要があるのだと思います。「じゃあメニューにはありませんが、特別にトッピングとして30円でおいしいコーンを乗せますね」というようなことを、普通に発想できるかどうかということです。
ITを運用するわたしたちは、ユーザーにサービスを提供する立場にあります。システムは、ユーザーにサービスを提供するためのツールでしかありません。わたしたちシステム運用者は、システムやテクノロジーと向き合う以前に、これらを利用しているユーザーにきちんと向き合っていくということが何よりも大事なのだと思います。
コーン入りしょうゆラーメンだって、ひょっとしたらほかのお客さんにもウケて、その店の定番メニューになるかもしれませんしね。
今回は少し抽象的なテーマで、システム運用という仕事に対する考え方について書いてみました。次回はもう少し具体的なところに落とし込んで、「システム運用の可視化・標準化」というものについて考えてみたいと思います。
<筆者紹介>
山本祥一
インフォリスクマネージ株式会社 ソリューションサポート事業部長
2000年インフォリスクマネージ株式会社入社。
システムダウン対策事業(MSP/ホスティング)のセールス、運用設計などに従事。2006年よりソリューションサポート事業部長として、50名以上のエンジニアを部下に抱え、官公庁はじめ、24時間365日止められない大型インターネットシステムの構築支援および運用設計を指揮・統括。また、情報セキュリティマネジメント(ISMS)の審査員も務める。
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