バイオ医薬品企業の事例
企業向けクラウド型ファイル共有サービスへの期待と懸念
IT部門の知らないところで、エンドユーザーがクラウドストレージサービスを利用することが大きな問題になっている。これ避ける手段として、企業向けのファイル共有サービスという選択肢がある。
企業利用が進んでいるコンシューマーツールは、スマートフォンやタブレットだけではない。今やIT管理者は、社内に盛んに導入されつつあるクラウドベースのファイル共有アプリケーションやコラボレーションアプリケーションに対処しなければならない。
米Box、米Dropbox、米YouSendItといった企業から提供されるクラウドストレージサービスは、企業の社員がドキュメントの送信や共有、大容量ファイルの移動、リモートワークを、インターネットに接続できる任意の端末で行うことを可能にする。しかし、このサービスのために使われるそうした端末は、IT部門が全くあずかり知らないものかもしれない。
この“何でもあり”のアプローチによるクラウドベースのファイル共有は、米AMAG Pharmaceuticals(以下、AMAG)のような企業にとって大きな問題となっている。
「数年前、われわれは最初の医薬品を市場に出そうとしていて、社内ではファイルのやりとりが活発に行われていた」と、バイオ医薬品企業であるAMAGのIT担当エグゼクティブディレクター、ネイト・マクブライド氏は語った。「すぐに発覚したのだが、社員は独自の工夫を凝らして、監査を受けずに機密ファイルを送信していた。送信中にファイルを傍受されていた恐れもあった」
そこで同氏は、IT部門が管理できるクラウド型ファイル共有サービスの導入を決めた。同氏が主に求めていたのは、IT部門がデータ追跡やファイル監査に利用でき、社員からも受け入れられるような集中管理型のアプリケーションだった。
企業向けのクラウド型ファイル共有サービスという選択肢
コンシューマー向けのクラウド型ファイル共有サービスの中には、データ保護、セキュリティ、アップタイム保証を提供する企業向けバージョンが用意されているものがある。また、英Ninian Solutionsの「Huddle」のように、企業向けバージョンしかないクラウド型ファイル共有サービスもある。
マクブライド氏は、「YouSendIt」の1ユーザー当たり月額14.99ドルのプランを採用している。AMAGはこのプランによって、無制限のストレージ、電子メールとの緊密な連係によるファイルリンク送信機能、電子署名機能(規制が厳しい業界に属するAMAGにとって重要な機能)、ファイルのセキュリティと制御に関連するIT管理オプションを利用できる。
AMAGの総勢4人のIT部門は、IT環境の運用にクラウドを全面的に利用している。YouSendItは、同社のドキュメントのプライマリストレージドライブでもある。マクブライド氏は、このアプローチはIT部門にとって望ましいと語った。IT部門はエンドユーザーの支援に集中でき、エンドユーザーはクラウドツールとITサポートに満足しているという。しかし、AMAGのクラウド中心のモデルは、全ての企業に適しているわけではない。
「他社のIT管理者からは、常軌を逸していると思われてしまった」とマクブライド氏は語った。これは、AMAGがデータストレージをオンプレミスデータセンターからクラウドに移行したことを話したときの反応だという。
その背景には、クラウドのセキュリティ問題が広く懸念されていることがある。米RES Softwareはこのことを踏まえ、「Dropbox」モデルの逆を行くファイル共有ツール「HyperDrive」を最近発表した。HyperDriveでは、ファイルはクラウドではなくオンプレミスに置かれる。
HyperDriveは、IT担当者が求める管理やデータ保護を実現する一方で、“Follow Me Data”(どこでどのような端末を使っていても、必要なデータに常にアクセスできる)機能をエンドユーザーに提供すると、RES Softwareは述べている。
HyperDriveのようなアプローチのデメリットは、ストレージおよびネットワーキングインフラを自社で持って管理する必要があり、そのためのコストが掛かることだ。だが、一部の企業はセキュリティ上のメリットを重視し、こうした負担を受け入れてもよいと考えるだろう。HyperDriveは4月に提供開始される予定で、1ユーザー当たり月額4ドルでサブスクリプションライセンスが販売される。
クラウド型ファイル共有サービスの懸念点
多くの企業がクラウド型ファイル共有アプリケーションを提供しているが、エンタープライズ対応で有名な企業はほとんどない。IT管理者は、こうしたサービスを導入する前に自分で調査を行う必要があり、データのリカバリ、バックアップ、セキュリティに関連するサービス契約を慎重に検討しなければならないと、アナリストは指摘している。
信頼できるサービスと、「Megaupload」のようなクラウドベースのファイルロッカーでは雲泥の差だ。Megauploadは先ごろFBIによって閉鎖され、運営者が著作権侵害データのホスティングで起訴されている。
「機密性の高い情報をクラウドに預けることを考える場合、自社のデータとともに、誰のデータが保存されるのかを詳しく調べなければならない」と、エンタープライズITの購入者向け調査サービス会社である米Real Story Groupのアナリスト、アラン・ペルズシャープ氏は語った。さもないと、何の予告もなしに突然データにアクセスできなくなる恐れがあると、同氏は説明した。
だが、企業の社員とIT部門にとって、エンタープライズ向けのクラウド型ファイル共有ツールやコラボレーションツールのメリットは、デメリットを上回るかもしれないとペルズシャープ氏は語った。
「こうしたツールの最大の利点は、例えば従業員2万人の企業の小グループ間や部門間で、手軽にドキュメントコラボレーションができることだ」(同氏)
クラウドベースのファイル共有ツールを使っているのはまだ少数派であり、その普及規模を把握するのは困難だが、このツールの市場は成長中だと米Forrester Researchのアナリスト、T・J・ケイト氏は語った。
「IT部門が社員のためにコラボレーションを容易にしなければ、あるいは、容易にする取り組みを行わなければ、社員が独自にそうするだろう」とケイト氏。「コラボレーションの方法は、もはや電話をしたり、相手の席に足を運んだりすることだけではない」
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