重視される非財務情報
「統合報告」は情報開示の新潮流となるか
統合報告が求められる背景には投資家が財務報告だけではなく、環境や社会貢献、企業統制などの非財務情報を、その企業の中長期的な成長性を測るための要素として重要視していることがある。
「統合報告」と呼ばれる新しい企業の情報開示の仕組みが注目されている。統合報告(Integrated Reporting)とは、財務報告と、環境や社会貢献への取り組み、企業統治に関する情報など、企業の非財務情報を統合した報告で、財務報告には現れない企業の姿や社会への姿勢、今後の成長性などを伝えることができるとされている。財務報告書と従来のCSR報告書、コーポレート・ガバナンス報告書を統合したともいえるが、それぞれの要素が関連付けられているのが特徴。統合報告では、環境や社会貢献への取り組みも含めて、企業のビジネスモデルとして理解されているのだ。
統合報告が求められる背景には、投資家が財務報告だけではなく、環境や社会貢献、企業統制などの非財務情報を、その企業の中長期的な成長性を測るための要素として重要視していることがある。後述のIIRCのディスカッションペーパーでは統合報告を以下のように説明している。
「統合報告は、組織が事業を行う商業上、社会上および環境上の背景を反映できるように、組織の戦略、ガバナンス、業績および見通しについての重要な情報をまとめ上げるものである。それによって、組織が、現在およびその将来に、どのように価値を創造するかについて、明瞭かつ簡潔に表明されることとなる」
2012年7月に会計教育研修機構のセミナーで講演した、あらた監査法人 あらた基礎研究所所長の安井肇氏は、投資家が企業がイノベーション(技術革新)を起こす力があるのかどうかを重要視していると指摘。一方でイノベーションを重視する経営にはリスクもあるとして「投資家は、企業のリスクを認識し、それを踏まえた企業活動を冷徹に分析しようとしている。これに応えるのが統合報告」と解説した。
安井氏は、公正価値会計を取るIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)でもリスク関連の開示が積極的に求められているとして、「イノベーションの進展という市場で生じている現実に対して、財務情報レベルで対応しようとするのがIFRS。非財務情報レベルまで広げて対応しようとしているのが統合報告」とも話した。以下はディスカッションペーパーが示す統合報告の基本原則と内容要素だ。
基本原則
- 戦略的焦点
- 情報の結合性
- 将来志向
- 反応性とステークホルダーの包含性
- 簡潔性、信頼性、重要性
内容要素
- 組織概要とビジネスモデル
- リスクと機会を含む、事業活動の状況
- 戦略目標と、この目標を達成するための戦略
- ガバナンスと報酬
- 業績
- 将来見通し
統合報告の内容は、「国際統合報告委員会」(International Integrated Reporting Council:IIRC)が議論している。IIRCはIOSCO(証券監督者国際機構)やIASB(国際会計基準審議会)、国際連合、世界銀行などの団体の他、企業や投資家、会計事務所の代表、会計士団体の代表などが参加する民間組織で、2010年7月に設立された。2011年9月には統合報告のフレームワークについてのディスカッションペーパーを公表(リンク)。さらに2012年7月にはフレームワークの公開草案を公表した(KPMGによる解説)。2013年中にもフレームワークのとりまとめが行われる予定だ。
日本が今後、どのように統合報告にかかわっていくかは不明。だが2011年11月に東京と大阪で開催されたIIRCのラウンドテーブルは金融庁と経済産業省が後援した(経済産業省:国際統合報告委員会(IIRC)ラウンドテーブルの結果概要について)。統合報告に各国がどう取り組んでいくかは不明ながら、仮に世界の潮流となるなら早い段階でリーダーシップを取りたいとの思いがにじむ。
これらの動きを受けて、監査法人がアドバイザリーサービスを充実させている。あずさ監査法人は2012年7月に「統合報告アドバイザリーグループ」を設置し、報告書作成支援や開示プロセス再構築支援、開示内容高度化支援などのサービスを提供すると発表した。また新日本有限責任監査法人も2012年3月に「統合報告推進準備室」を設置し、統合報告書を社内で作成するための態勢作りを支援するサービスを展開している。有限責任監査法人トーマツやPwC Japanも統合報告書作成のための他社ベンチマークや診断、作成支援のサービスを展開している。
IIRCのディスカッションペーパーでは「統合報告書は、組織の主たる報告手段となるべきである」と訴えている。今後、統合報告が何らかの形で日本に導入されるなら、日本企業の実務に大きな影響を与える可能性があるだろう。
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