マイナンバー法の影響はあるのか
政府の医療IT戦略はアベノミクスでどう変わる?
2012年末の政権交代、新たな医療計画の実施など、2013年は医療ITを取り巻く環境が変化した。IT化の推進体制や関連法案の現状をまとめた。
2012年12月に発足した第2次安倍内閣は、経済政策「アベノミクス」の3本の矢の1つである成長戦略の重点分野に「健康・医療」を挙げ、医療分野のIT化を重視している。経済・社会的な状況や医療政策に影響を受ける医療のIT化。政権交代によって今後どう変化するのだろうか。
内閣官房に「健康・医療戦略室」を設置し、政権交代後も注力
医療分野は、前・民主党政権の成長戦略「日本再生戦略」(2012年7月発表)でも重点分野の1つに位置付けられていた。内閣官房に設置された「医療イノベーション推進室」(2010年11月)は、2012年6月に「医療イノベーション5カ年戦略」を策定。この戦略では「最先端の医療技術の実用化」「国際競争力の高い関連産業の育成」を実現するとともに、国民の医療・健康水準の向上を目指していた。
現政権は2013年2月、医療イノベーション推進室を廃止し、内閣官房に「健康・医療戦略室」(室長:和泉洋人・内閣総理大臣補佐官)を新たに設置。健康・医療戦略室では、世界最先端の医療技術・サービスを実現し、健康寿命世界一を達成することを目指し、医療、医薬品、医療機器を戦略産業に育成して日本経済再生の柱にするという。政権交代後も医療分野を重視する政策を継続的に実施できる体制を整えている。特に、規制改革による「医薬品や医療機器の審査迅速化」「薬価制度の改定」などの推進が期待される。
また、健康・医療戦略室の設置に併せて、厚生労働省は厚生労働大臣を本部長とする「健康・医療戦略厚生労働省推進本部」(本部長:田村憲久・厚生労働大臣)を2013年2月に設置した。その配下に大臣官房技術総括審議官を主査とする「推進チーム」と、「医薬品」「医療機器等」「再生医療」「国際展開」の4つのタスクフォースを設置。タスクフォースでは、医薬品・医療機器の開発推進や再生医療の実用化、医療・介護サービスと医薬品などの国際展開などの方向性を検討し、具体的な施策の立案に取り組んでいる。推進チームがその成果物を2013年5月中に最終案をまとめ、政府の成長戦略に組み入れる予定だ。
新たな医療計画をITで支援
都道府県が5年ごとに医療提供体制を見直す医療計画。2012年度に策定された新たな医療計画が2013年4月に開始した。厚生労働省は2012年、以下3つの観点で医療計画作成指針を見直すことを各都道府県知事に要請している。急速な高齢化や社会構造の多様化・複雑化などに伴う患者の疾病構造の変化に対応するためだと説明している。
- 医療機能の分化・連携を推進するため、医療計画の実行性を高めるよう、二次医療圏の設定の考え方を明示するとともに、疾病・事業ごとのPDCAサイクルを効果的に機能させる
- 在宅医療について、達成すべき目標、医療連携体制、人材確保などを記載する
- 既存の4疾病に「精神疾患」を追加し、医療連携体制を構築する
特に(1)「医療機能の分化・連携」は「病院完結型医療から地域連携型医療に移行」、(2)「在宅医療」は「介護の連携を含めた多職種間の連携」が鍵となるため、IT導入による効果が期待される領域だといえる。
医療のIT化を促進する法制度も
安倍政権は「地域による医療格差をなくし、国と自治体が連携して、日本全国どこででも均一な医療サービスが受けられる社会の実現を目指していく」としている。また、内閣の協議機関「社会保障制度改革国民会議」は、「医療の質の検証やレセプトチェックに有効なデータベースの構築、ICTの継続的な活用が重要」としている。全国民が対象となるネットワークを構築するには、各地域の医療情報ネットワークを横断的に連携する基盤が求められる。その実現には、電子データの標準化や個人情報保護のセキュリティ対策などの課題が挙げられている(関連記事:今後の医療ITで求められるセキュリティレベルとは?)。
現在、そうした課題解決に向けた法整備が進められている。第183回通常国会(会期:2013年6月20日)では、社会保障と税の共通番号制度「マイナンバー」法案が5月9日付で衆議院で可決された。また、内閣官房に制度の推進役となる内閣情報通信政策監(政府CIO)を法的に認める「内閣法等の一部を改正する法律案」、マイナンバーの付番システムを運用する組織を設置する「地方公共団体情報システム機構法案」などの関連法案も可決した。
政府は2013年6月をめどに新たな成長戦略を策定する予定。現在、参議院で審議中の法案が成立すれば、重点領域である医療分野を中心に全国規模でのIT化が前進することも考えられる。社会保障制度改革国民会議や政府CIOなどは前・民主党政権時に設立された機関・役職であり、現政権下でも継続して活動している。政権交代に左右されることなく、医療のIT化が推進することを期待したい。
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