【連載コラム】医療ITの現場から
電子カルテ導入で医師が楽になるケース、ならないケース
業務の効率化を期待して進める診療所のIT化。しかし、思ったほど効果がなかったり、かえって負担が増えてしまったりすることもある。医師が楽になるケースとならないケースの実例を紹介する。
メディプラザで「電子カルテのクラーク運用」を支援するサービスを開始して以降、電子カルテや診療予約システム、医用画像管理システム(PACS)などIT化が進んでいる診療所に訪問する機会が多くなりました。
診療所がIT化を進める際、業務の効率化を期待します。しかし、実際に導入してみると思ったほど効果がなかったり、かえって負担が増えてしまったりといったケースもあるようです。そこで今回は、医師が楽になるケースとならないケースを、それぞれの現場の声を基に考えていくことにします。
楽にならないケース:スタッフに相談せず電子カルテを導入し、医師の負担が増大
A診療所の院長は、スタッフとよく相談せずに電子カルテの導入を決めてしまいました。導入はしたものの、看護師は「私たちにはあまり関係ない」と考え、従来の運用から変えようとはしません。また、受け付けでは電子カルテの「レセコン」(レセプトコンピュータ)機能のみを使用していました。
電子カルテを有効活用するためには、従来の紙媒体とレセコンの運用から、抜本改革といってもよいほどの業務フローの変更が必要となる場合があります。ある意味、診療所にとっての一大変革を院長が1人だけでやろうとしても、うまくいくはずはありません。A診療所では電子カルテ機能を使用するのは院長のみで、結果的にスタッフとの連携に負担が増えてしまいました。院長は「何のために電子カルテを入れたのだろう」と考えるようになったそうです。
このようにスタッフの協力体制がなければ、電子カルテを活用する業務フローはうまく回りません。まずはスタッフと話し合い、電子カルテの導入前と導入後で何が変わるのかを十分に話し合ってから導入すると、よりスムーズに導入でき、電子カルテを有効活用できるでしょう。
楽になるケース:電子カルテの研修を全員で受けることで運用がスムーズに
新規で開業することになったB診療所は、医師もスタッフもオープニングスタッフでした。そのため、診療所の運用を全員で考える必要がありました。電子カルテの導入に当たって、院長はスタッフ全員で協力する体制が重要だと考え、全ての電子カルテ研修に受け付けスタッフと看護師に同席してもらいました。通常の電子カルテ研修は、受け付け・会計の操作については受付スタッフ、カルテの操作については医師と看護師といった具合に、役割ごとに分かれて受けるのが一般的です。
B診療所では約2週間にわたって全員で研修を受講しました。その結果、全スタッフが電子カルテの操作や診療の流れを理解できました。さらに、同じ時間を共有したことでスタッフ同士で良好な関係を築くことができ、一体感を持って開業を迎えることができたそうです。そして、スタッフ全員で「医師の負担をなるべく減らそう」と考え、それぞれの役割分担を決めて業務フローを確立しました。
こうした役割分担、すなわち診療ルールを全員で考えて決めることは、電子カルテの導入に当たって大切なプロセスです。
このように電子カルテの導入は、スタッフ全員の協力がなければ成功することが難しいといえます。診療所では、ある意味レセコンは部門システムですが、電子カルテは診療全体を管理する統合システムに位置付けられます。全員が理解し活用できてこそ、その導入効果が得られるものです。
今回紹介した2つのケースの違いは「スタッフの関わりの深さ」です。A診療所は医師のみが、B診療所は全員が電子カルテ導入に取り組みました。その結果、電子カルテ導入後に明らかな違いが出ました。
診療所は規模の大小があったとしても、1つのチームです。本来、チームを構築するためには、全員が同じ方向、同じ理解レベルで取り組むことが必要です。これから電子カルテを導入する診療所は、ぜひB診療所のケースを参考にしていただければと思います。
著者紹介
大西大輔(おおにし だいすけ) メディキャスト株式会社 メディプラザ統括マネージャー
2001年一橋大学大学院MBAコース卒業後、同年日本経営入社。2002年に医療機関の“選ぶ”を支援する展示場「メディプラザ」の1号店を東京(神田)に立ち上げ、その後2003年にメディプラザ大阪、2005年にメディプラザ福岡を順次開設。2007年より東京・大阪・福岡の3拠点を統括する統括マネージャーに就任。専門の医療IT分野については、医師会、保険医協会などの公的団体を中心にセミナー講師を多数実施。
【関連サイト】
電子カルテ活用のためのショールーム「メディプラザ」
医師の右腕を育成する「電子カルテ+クラーク養成講座」
医院・クリニックのオフィシャルホームページ制作システム「Wevery!」
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