「Google Cloud Next 2017」メルカリ事例【後編】
メルカリ&ソウゾウ、Google Cloudで得られた効果を率直に語る(2/2 ページ)
ベンダーロックインはリスクではない
鶴岡氏がこれまでイベントなどに出演した際、GCPのことで一番多く聞かれた質問が「ベンダーロックイン」に関するものだったという。特定のクラウドベンダーに依存することはリスクなのか。鶴岡氏の見解はこうだ。
「GCPに依存するのは、それが代替不可能な高度な技術だからに他ならない。例えばグローバルでスケールするRDBが必要な場合、それをオンプレミスで開発することは技術力とコストの両面で現実的ではない。Googleの大規模分散環境向けRDB『Google Cloud Spanner』(以下、Cloud Spanner)を使えばわずか10分で環境を用意でき、初期費用もそれほどかからない。もちろんCloud Spannerを選べばGCPに依存することになるが、従来型技術を使い続けることと、Cloud Spannerを試すことではどちらのメリットが大きいかを考えれば自明だ」(鶴岡氏)。ソウゾウは、一見リスクに思えることでも、高度な技術を積極的に試すことがビジネスの成功に直結していると考えている。
データの民主化は進む
講演の最後は、Google Cloudのシニアアカウントエグゼクティブを務める中澤貴子氏がモデレーターとして加わり、メルカリ執行役員VP of Engineeringの柄沢 聡太郎氏と鶴岡氏にインタビューをした(以下、質問は中澤氏の発言)。その模様をかいつまんでお伝えする。
――海外とのチームとのやりとりや新規アプリ開発において、エンジニア組織をマネジメントする立場として開発・運用体制で工夫していることは何か。
柄沢氏 社内ではGoogleのグループウェア「G Suite」を活用している。海外を含む拠点間のコミュニケーションにはテレビ会議システム「Chromebox for meetings」を使い、Googleカレンダーで会議室を予約するだけで、ワンクリックで離れた拠点との会議をしている。Google ドキュメントのリアルタイム編集機能も活用している。
鶴岡氏 GCPの採用を決めた際、企業であまり使われていないサービスであることが懸念だった。そのため使うだけでなく、一緒に盛り上げていく必要があると考えている。社内でクローズドに使うのではなく、イベントや勉強会で積極的に情報を発信していきたい。
――両社とも分析基盤にBigQueryを使っているが、何が変わったか。
柄沢氏 BigQueryをエンジニア以外のスタッフも使うようになったことが大きな変化だ。これまでデータ分析基盤はエンジニア以外に操作することはなく、非エンジニアのスタッフが必要なデータはエンジニアに依頼して得ていた。しかしBigQueryによってデータが集約され、分析処理が高速化し、どこからでもアクセスができるようになったことで、カスタマーサポートのメンバーや経理担当をはじめとする非エンジニアのスタッフから、「自分たちでもできるの?」という問い合わせが自発的に寄せられるようになった。「自分たちでもできるのであれば、自分でSQLを書いてデータを抽出したい」という要望が出てきた。サービスに関わる人たちが数字を直接見るようになり、GCPによって社内の意識が変わった。
鶴岡氏 情報を社内で隠さず、誰でもデータに触れ、誰でも好きなタイミングで自由にBigQueryを使ってクエリを実行してよい、という心理的安全性が生まれた。一方で、BigQueryに触ることを強制もしない。知りたい人が自分で情報を取りに行く文化ができている。
――非エンジニアのスタッフがSQLを書けることはスタンダードなことか。
柄沢氏 スタンダードではないが書ける人もいる。カスタマーサポートのメンバーで1人、プログラミングにまで踏み込んでいる人がいる。例えば、最近カスタマーサポートが負っているKPI(重要業績評価指標)の1つに、サポート対応したユーザーのサービスへの回帰率がある。こうしたデータを抽出する際、エンジニアに依頼して週次でデータを出してもらうのではなく、自分たちでデータを出せた方が、利便性が高い。プログラミング環境の「Google Apps Script」経由でBigQueryにクエリを送り、「Google スプレッドシート」に結果を返してグラフ化し、チャットサービスの「Slack」宛てに通知する仕組みを作ってしまった人もいる。
鶴岡氏 社内Wikiには、データ集計の目的ごとにSQLのひな型のようなものがある。カスタマーサポートでSQLの知識がない人の中には、そうしたWikiを基に日付やユーザーIDの部分を変えるなどして、自分でSQL構文を組み上げ、エンジニアにレビューを求める人もいる。キャッチアップの仕方は(柄沢氏のケースとは)違うが、自ら学ぶ姿勢は同じだ。
――最後にGoogleへ期待することは。
鶴岡氏 講演を聞いた人は「GCPは良いことばかりだ」と思うかもしれないが、細かい部分で不満はある。例えば、DataStoreを使っているときに、バックアップをどう取るか。今は何時間もかけて日次バックアップを取っているが、工夫の余地がある。
DataStoreの費用を節約しようとするとクエリをキャッシュしなければならないが、キャッシュすべき対象をどうやって見つけるかは課題だ。実践的なノウハウが必要になる。Googleとミーティングをして解決していくことも多いが、それ以上のサポートも期待している。
柄沢氏 Googleは「TensorFlow」に代表されるようにAI(人工知能)への取り組みが活発なので、研究成果をオープンにしていってほしい。Googleのサービスを活用した後に、どこかのタイミングで、自前でサービス開発をするときがあると思っている。Googleが知見を公開してくれることに期待している。
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「Google Cloud Next 2017」メルカリ事例
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