急がば回れ
業務アプリケーションのクラウド移行に立ちはだかる3つの関門(2/2 ページ)
2.どの移行手法を採用すべきか
移行するアプリケーションが決まったら、次は移行の方法を決定する必要がある。一般的な選択肢は「リホスト」(リフトアンドシフト)と「再構築」(リファクタリング)の2つだ。
リフトアンドシフトは、そのままクラウドに移行できる部分だけを先に移行し、変更の必要があるものだけ改修を加えて移行する方式である。リファクタリングは、システム要件を整理し、移行先(クラウド)の制約に従ってアプリケーションなどの全般を作り替える方式である。
リフトアンドシフトは、リファクタリングよりも短時間で行えるというメリットがある。というのも、開発者がアプリケーションのアーキテクチャ(設計)を変更する必要はなく、そのまま移行するためだ。リフトアンドシフトはリファクタリングよりもシンプルなアプローチだが、デメリットもある。例えば、何も変更しないでIaaSに移行したアプリケーションは、自動拡張(オートスケール)などクラウドの主要機能を活用できない可能性がある。その結果、ピーク時には結局オンプレミスのシステムで運用していたときと同じように動作することになる。企業はピーク時に合わせた起動時間、リソースに課金することになるため、実際に使用しているよりも多く支払いが生じることになる。
このようなデメリットがあることから、一部のレガシーアプリケーションでは、時間とコストのかかるリファクタリングの方が適切な選択肢になることがある。ただし、常にリファクタリングが適切な選択肢というわけではない。例えばクラウドの災害復旧(DR)についてはリフトアンドシフトが最適な選択肢となるだろう。
ここでいうレガシーアプリケーションとは数年~数十年という長期間で運用されており、サポートが切れていたり、当時の担当が不在で保守が難しくなっていたりするアプリケーションを指す。
いずれにせよアプリケーションを急いでクラウドに移行してはいけない。まずは、クラウドへの適応度が最も高く、機密データが少ないアプリケーションを移行するのがお勧めだ。その後、まずは試験的な計画(パイロットプロジェクト)を実施し、クラウド移行したアプリケーションをテストして、移行プロセスの感触をつかんでから、重要なアプリケーションの移行に着手してほしい。
3.適切なクラウド移行ツールの選択肢は
クラウドへの移行は、さまざまなリスクがあり、注意しないと移行にかかるコストも高額となってしまう。このクラウド移行という複雑なプロセスを支援するために、企業は幾つかのサポートツールを用意している。サポートツールはクラウド提供企業が提供しているものと第三者企業(サードパーティー)が提供しているものがある。例えば、クラウド提供企業ではMicrosoftの「Microsoft Assessment and Planning Toolkit」があり、アプリケーションをMicrosoft Azureに移行する手助けになる。サードパーティーでは、Cloudynの同名ツールやCloudVeloxの同名ツールなどのツールが役に立つ。
Cloudynはイスラエルのクラウドスタートアップ企業で2017年6月29日にMicrosoftが買収を発表した。CloudVeloxはクラウド環境向けに移行および障害復旧(DR)ツールを提供する企業である。
大容量のデータをクラウドに移行する必要がある企業は、オフラインでデータを移行することもできる。オフラインでデータを移行するには、データを物理ディスクに保存して、そのディスクをクラウド提供企業に送る必要がある。これは古い、非効率な方法であるように見えるかもしれない。だが、テラバイト規模のデータを保有している場合は、ネットワーク経由の移行よりもコスト効率が良い。大手クラウド提供企業が提供しているオフラインのデータ移行サービスには、AWSの「AWS Snowball」「AWS Snowmobile」、Googleの「Google Transfer Appliance」、Microsoftの「Azure Import/Export」がある。
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