ストレージベンダーの群雄割拠が加速
データストレージ2018年のトレンド:話題を独占する5つのテクノロジーとは(3/3 ページ)
マルチクラウド
マルチクラウドストレージは最新のテクノロジー用語の1つだがまだその意味が定まっていないため、業界の専門家の想像力をかき立てている。ハイブリッド構成か純粋なパブリック構成かを問わず、クラウドを導入する企業が増えるにつれて、真のITサービス機能を提供することがクラウドに求められるようになるため、マルチクラウドが2018年の最新テクノロジートレンドの1つになる。
Taneja Groupで上級ストレージアナリストを務めるジェフ・カトウ氏は、クラウド以外の支出はインフラ市場全体の半分以下になると予測する。Amazon Web Services(AWS)は年率40%以上の成長を続け、年間収益は150億ドルに上る。Microsoftも同社のSaaS(Software as a Service)「Office 365」を含めれば同程度の収益を誇る。
マルチクラウドストレージのメリットを無視するのは難しい。マルチクラウドのメリットには、異種クラウド間でのデータの移植性、クラウド環境間でのアプリケーションのリフトアンドシフトが容易、データの可用性と災害復旧の向上、プライベートクラウドとパブリッククラウドとの間でデータサービスの連携(橋渡し)機能がある。また、エンタープライズデータサービスの一貫性を高め、アプリケーションとコンピューティングリソースを使ってこうしたサービスを同じ場所に配置することもできる。
「この分野の動きは速い」とカトウ氏は話す。
Taneja Groupではマルチクラウドストレージを「複数の異種クラウド環境にまたがって同時に動作するプライマリーデータサービスが、処理のリソースやアプリケーションと共存できる場所を提供するもの」と定義している。このプライマリーデータストレージサービスは、AWS、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなどの大手パブリッククラウドベンダーを1社以上サポートしなければならない。ベンダーロックインを前提に構築されるクラウドサービスはどのような種類であろうと、真のマルチクラウドサービスを提供する機能を制限されることになる。
ただし、マルチクラウドストレージには依然課題がある。クラウド間でデータを移動するのはオンプレミスのシステム間でデータを移動するよりも複雑になる。そのため、異なるクラウドに格納されたデータを管理するには新たなアプローチが必要になる。
幾つかのベンダーはソフトウェア定義のストレージ(SDS)に基づくマルチクラウドプライマリーストレージの概念を既に提供している。こうしたベンダーにはHedvig、Qumulo、Scality、SoftNAS、SwiftStackなどがある。ScalityのマルチクラウドソフトウェアはAmazon S3互換のオブジェクトストレージを基盤に構築されているが、一部ファイル機能も提供する。SoftNASとQumuloのSDSサービスはクラウドファイルに重点を置くが、Hedvigはブロック、ファイル、オブジェクトストレージを提供する。SwiftStackが提供するのはオブジェクトとファイルのストレージだ。
「もっと多くの企業がこの分野に参入している。他のSDS企業がクラウドに直接移行しない理由はない。バックアップベンダーは自社のテクノロジーをクラウドに直接移行し始めている。ハイパーコンバージドベンダーも例外ではない。ハイパーコンバージドベンダーは次を見据えている。Scale ComputingはGoogleとパートナーシップ契約を結び、パブリッククラウドにソフトウェアを移行することを発表した」(カトウ氏)
Taneja Groupは独自の調査に基づいて、ストレージの利用者にとってはクラウドに関わる主な懸案事項の1つがベンダーロックインにあると認識している。これはハードウェア全盛時に直面したのと同じ問題だ。真の異種マルチクラウドサービスとは、AWSとAzureなど、異なるパブリッククラウド間や、パブリッククラウドとプライベートクラウド間をまたがって、アプリケーションやデータを実行できることを意味する。
「そのため、Amazonでデータを作成するのであれば、別のパブリッククラウドやプライベートクラウドでそのデータにアクセスできるようにする。それがパブリックであろうとプライベートであろうと、異種クラウド間でデータを移動できなければならない」(カトウ氏)
マルチクラウドを提供していると主張するベンダーもあるが、実際はそうではない。こうしたベンダーは単一ベンダーの基盤テクノロジーを使って、クラウドを階層化しているか、近くにある複数のデータセンターからクラウドサービスを提供している。この種の同種(マルチクラウドではない)クラウドサービスの例には、クラウドがその両端にVMwareテクノロジーを備えたAWSの場合がある。
NVMe over Fabrics
パフォーマンスを向上し、遅延時間を短くするNVMe(Non-volatile Memory express)は、ホストコンピュータのPCI Expressバスを使用するSSDでは既に最新テクノロジートレンドの1つになっている。2018年になると、NVMe over Fabrics(NVMe-oF)の収益が拡大し、データストレージの重要なトレンドの1つになると考えられる。業界アナリストは、大規模な導入は2019年以降になると見込んでいる。
2016年6月に公開されたNVMe-oF 1.0仕様は、NVMeプロトコルに大きく依存する。NVMeプロトコルはコンピュータのPCI Expressバスを利用するために設計されたものだ。NVMe-oFは、ホストコンピュータと対象のストレージシステム間のデータ転送を高速化するためにNVMeのメリットをネットワークに拡張する狙いがある。NVMe-oFトランスポートの初期オプションには、RoCE(RDMA over Converged Ethernet)とNVMe-FC(ファイバーチャネル)が含まれていた。ちなみにRDMAはリモートダイレクトメモリアクセスの略だ。
NVMe市場を調査する企業G2Mで業務執行役員を務めるマイク・ホイマン氏は次のように話す。「2016年のNVMe-oFは足場を築こうと奮闘していた。だが、その存在感を示したのはNVMe over RoCEを使用するMicrosoftの『Storage Spaces Direct』を基にする製品だけだった。2017年は、Kaminario、Pure Storage、Western DigitalブランドのTegilenadoといった各オールフラッシュアレイベンダーがNVMe-oFをバックエンド連携の仕組みとして使用する動きを見せている」
NVMe-oFのホストからターゲットへの接続はまだ作業が続けられているが、導入の潜在的なハードルが下がり、大手ベンダーが参入するにつれて導入が進むとホイマン氏は予想する。同氏によれば、例えば、アレイベンダーはCPUを集中的に使用する作業負荷を軽減するために、NVMe-oFを利用して「速度を上げた」アダプターを採用している。NVMe仕様をまとめているNVM Expressによるもう1つの重要な作業の進展は、既存のIPネットワークでのNVMe-oFの使用を可能にする新しいNVMe-TCPトランスポートだ。
「イーサネット環境にNVMe-oFを導入できるようになることには多くの期待が寄せられている。NVMe over RoCEにまつわる導入のハードルを認識し導入に消極的だったユーザーにも、このTCPオプションによって道が開かれるだろう」(ホイマン氏)
調査会社のG2MではNVMe市場は2021年までに600億ドル市場に達すると予測している。これには、SDS、アダプター、エンタープライズストレージシステムと製品、エンタープライズサーバによる収益や、NVMeを使用するように設計されたSDSを搭載するサーバによる収益が含まれる。G2Mの調査によると、予定されているエンタープライズサーバの大半が2019年までにNVMe対応になり、オールフラッシュアレイの70%以上が2020年までにNVMeベースになるという。G2Mでは、NVMe-oFアダプターの出荷台数は2021年までに150万台を超えると予測するが、10%程度上乗せされる可能性もあるという。
主要OSではNVMe-oFドライバをまだ開発している途中だ。そのため、Apeiron Data Systems、E8 Storage、Pavilion Data Systemsなどのストレージベンチャー企業の多くは自社独自のアダプターとドライバを使用してNVMe-oF機能を提供していると、調査会社のIDCでリサーチ部門のディレクターを努めるエリック・バーガナー氏は語る。
バーガナー氏によれば、NVMe-oFベースの初期製品の主なユースケースは、ビッグデータのリアルタイム分析アプリケーションだという。IDCは、2020年までに世界的有力企業の60~70%がリアルタイム分析システムを1つ以上抱えると予測する。ベンダーの分析システム利用が進むにつれ、遅延時間の短縮を必要とするハイエンドデータベースもNVMe-oFに興味を示す可能性があると同氏は付け加えた。
Cisco Systemsで研究開発エンジニアとしてNVMeテクノロジーに取り組むジェイ・マイケル・メッツ氏は次のように語る。「NVMe-oFは当初ファイバーチャネルで成長し、現在データセンターで見受けられる種類の機能を複製することになるだろう。やがて、人々がこのテクノロジーに精通するにつれて、イーサーネットベースのオプションが導入されると見込まれる」
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