サーバレス、PaaS製品が再注目される結果に
「Meltdown」と「Spectre」で明らかになったクラウドベンダーの対応能力(2/2 ページ)
当初の予想ほどのパフォーマンス低下はない
SpectreとMeltdownのもう1つの悪影響として危惧されているのは、パッチの適用によるパフォーマンスの低下だ。当初の予想では最大30%の処理速度低下が推計されたため、インターネットで不安の声が相次いだ。しかし、クラウドベンダー各社はこの推計を否定。ユーザーの代わりに膨大な数のサーバを管理するマネージドサービスベンダーも、大半のワークロード(システムの稼働状況)は影響を受けないと述べている。
これからパフォーマンスの問題が発生し始めるかどうか、まだ分からないが、IT担当者たちの実感はベンダーの主張と一致しているようだ。
TechTargetの取材に応じた10人以上の担当者(多くは匿名を希望)が、パッチの影響はほとんど見られないと答えた。
CloudHealthのキンセラ氏は、影響を受けるシステムの数は少なく、パフォーマンスへの影響はかなり、ばらつきがあると述べ「本当に30%も低下していたらムーアの法則を2年も逆戻りすることになり、違う状況になっていただろう」と語る。
コールセンターソフトウェアベンダーZendeskの技術運用担当バイスプレジデントを務めるスティーブ・ロイド氏は、2017年末にかけてAWSから再起動の通知が増えたため「クラウド環境で何かが起こっていると思っていた」と言う。こうした再起動は決して歓迎できないが、同社では今のところ、パッチテストで大きな影響は見られないという。
Googleは、クラウドの顧客から顕著な影響があったという報告は受けていないという。MicrosoftとAWSは当初、一部の顧客についてパフォーマンスが低下すると述べていた。Microsoftがこうした顧客にどのように対処したのかは不明だが、一般提供が始まったばかりの高速ネットワークサービスへの切り替えを推奨している。AWSは声明で、パッチのインストール後、影響を受けた顧客のワークロードを最適化し、「ほぼ全てのケースでコストの大幅な変更を防いでいる」と述べている。
クラウド利用への影響は無視できる程度とみられるが、例外として、分散データベースやキャッシュシステムなどOSカーネルの使用度の高いシステムでは影響が大きくなる可能性がある。オンプレミスでも同様のワークロードには同じ問題が考えられるが、わずかな影響でも規模が大きくなれば積み重なる。
ハイブリッドクラウド管理ベンダーTurbonomicのチーフエバンジェリストを務めるエリック・ライト氏は、「1件のシステムが受ける影響がわずかであれば違いはほとんど分からないだろう。しかし、そうしたシステムが100件あれば、新しい仮想システムを1件追加しなければならなくなる。いずれにしても何らかの影響はある」と語る。
クラウドベンダーは課金制度によって影響を受ける可能性もある。自社用のデータセンターだけなら、使用率の低いサーバを使えば対応できるかもしれない。しかし、CPU利用時間に基づいて課金するクラウドベンダーは、処理速度が低下すると影響が大きくなる可能性がある、とIDCのアナリスト、ピート・リンドストロム氏は指摘する。「問題は実際の月々の請求がどう変わり、本当に影響が発生するかどうかだ」と同氏は話す。
パフォーマンスの点で最も影響が少ないと考えられるのは、サーバレス型サービスやPaaS(Platform as a Service)などの抽象化サービスだ。ベンダーが全てのパッチの責任を負うため、顧客からはサービスに変化がないように見えるだろうとアナリストは見ている。
ニュースやソーシャルメディアの情報を集約、配信するコンテンツアグリゲーターACI Information Groupは、仮想マシンサービス「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」のインスタンス(仮想マシン)と、ベースとなる仮想マシンイメージ「Amazonマシンイメージ」や、コンテナ管理製品「Docker」のイメージにパッチを適用した。同社のテクノロジー担当バイスプレジデントであるクリス・モイヤー氏によると、サーバレスのワークロードには自分たちで対処する必要がなく、パフォーマンスへの影響もないことを従業員が実感したという。
「現在、当社のワークロードの約40%をサーバレスにしていたことも大きな成功だ。これで完全にサーバレスに移行する理由がもう1つできた」とモイヤー氏は語る。
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