IBMフェローは「ユーザーとの関係性」について指摘
「チャットbot」「対話型エージェント」「仮想アシスタント」の微妙だが明確な違いを比べる
皆さんは「チャットbot」と「対話型エージェント」と「仮想アシスタント」を同じものとお考えだろうか。それならば、考えを改めた方がいい。
「チャットbot」や「対話型エージェント」や「仮想アシスタント」といった用語はよく、明確な区別なしに使われている。だがこれらの用語は本当に同じものを指しているのだろうか。IBMでAI(人工知能)システム「Watson」の担当バイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)を務める、IBMフェローのロブ・ハイ氏によれば、これらの用語が言い表しているものは同じではない。本稿ではハイ氏が、これら3つの対話型技術の微妙だが明確な違いとその背後の意図について説明する。これらの用語の違いを理解する上で鍵となるのは、各技術におけるエンドユーザーの関与の度合いだ。
――チャットbotや対話型エージェント、仮想アシスタントなどの用語にはどのような区別があるのでしょうか。
ハイ氏 これらの用語は、明確な区別なしに似たような意味合いで使われることが多い。IBMはこうした用語をそれなりに区別して考えている。最大の差異化要素は、エンドユーザーが問題解決にどの程度関与するかだ。
簡単な例で説明するとこうである。今日多くのチャットbotが実行するのは、単発の短いやりとりだ。チャットbotは「Alexa、電気をつけて」や「OK, Google、世界で一番高い山は」といった問いかけに答える。いずれもその都度完結する簡単なやりとりだ。エンドユーザーが言葉を投げかけると、チャットbotはその発言の意図を理解し、それを具体的な作業(タスク)に落とし込む。
簡単な質問であれば、これでいい。だが「私の預金口座の残高は」といった質問の場合はどうだろう。質問した本人は自分の口座残高を知る必要があるのだろうが、その背後には別の目的があるはずだ。買い物をするために残高を確認したいのかもしれないし、子どもの教育費の貯蓄について検討しているのかもしれない。請求書の支払いについて考えている可能性もある。この質問の背後には、何かしらの意図があるはずだ。
私の考えでは、エンドユーザーを関与させることによって質問の背後にある真意を理解しようとするのが、対話型エージェントだ。そのためにはまず、深く掘り下げるべき質問であるかを見極めなければならない。そして質問の背後には多くの場合もっと大きな目的があることを理解し、エンドユーザーを巻き込んでその意図を探る必要がある。対話型エージェントはときに、質問の意図をエンドユーザー自身が理解できるよう手助けしなければならない。私たちは時々、自分でも本当の目的が分からないまま、ただ質問することがあるからだ。
質問の意図を探ることは、顧客サポートや修理サービスでは特に重要となる。購入した製品に何か問題が発生した場合、まず必要なのはその問題を説明することだ。だがそうした説明は、問題の本質というよりも症状を説明しているにすぎない場合がある。
製品に何が起きているのかを確認し、何が問題かを見極め、それが製品の問題であるのか、使い方の問題であるのか、あるいは一時的な状況であるのかを判断するためには、症状の説明だけでは不十分だ。問題の背後にはさまざまな原因が潜んでいる可能性がある。対話型エージェントには、そうした原因を見極める力が必要だ。
――あなたは対話型エージェントという用語をお使いですが、多くの人々は仮想アシスタントという用語を使っています。どちらの用語を使うべきなのでしょうか。明確な区別はあるのでしょうか。
ハイ氏 ある意味、同じコインの表と裏のようなものだ。対話型エージェントは、会話の継続に重きを置いている。一方、仮想アシスタントやパーソナルアシスタントといった用語は、対話型システムがそれぞれ独自の個性を持ち、エンドユーザーとの間で何かしら特別な関係性を築くことができるという前提で使われることが多い。
少なくとも私の考えでは、仮想アシスタントは例えるなら、専属の執事のようなものだ。常にあなたの側にいて、あなたのことを深く理解し、あなただけに仕え、あなたのニーズに応えてくれる。対話型エージェントにこうしたパーソナライゼーションの要素を組み合わせ、その行動や振る舞いから「自分だけに仕えてくれている」という感覚をエンドユーザーに与えるようになれば、仮想アシスタントと対話型エージェントという2つの概念が融合する。
個々のエンドユーザーに合わせて対応できる優秀な仮想アシスタントを実現するには、エンドユーザーに関する大量の情報を保持し、それをエンドユーザーとのやりとりに活用する必要がある。そのためには対話型エージェントの技術を用いて、エンドユーザーのニーズを予測するだけでなく、エンドユーザーのニーズに着実に応え、エンドユーザーをより深く理解することによって、将来的に同じニーズにより適切に対応できるようにすることが重要だ。
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