作業者の安全性向上に大きな需要
「ウェアラブルデバイスの普及は職場から」と専門家が明言する根拠(2/2 ページ)
回復力のある労働力の構築
2017年7月、American Society of Safety Engineersによってコロラド州デンバーで開催された「Safety 2017」カンファレンスの話題の中心は、企業向けウェアラブルデバイスだった。
ディスプレイ上に設置されたデバイスは、作業者の危険を減らし、生産性を向上するよう設計されているというもので、建設業界での利用を明確に想定していた。Occupational Safety and Hazard Administrationによれば、建設業界は世界でも最も危険な業務を行う業界の1つで、毎年米国の労働災害のほぼ4分の1を占めるという。
カンファレンスでは、大型機械の動きを追跡するため、あるいは制限区域や危険区域を定義するために、現場に設置されたワイヤレスビーコンからの警告信号を聴覚や視覚に訴えるリストバンドなど、注目すべきテクノロジーが発表された。
北米を拠点とする建設情報の大手プロバイダーConstructConnectの専門家は、作業者に警告する機能は、同時に監督者や緊急対応チームにも同時に警告を送るようになると予測する。また、手袋や作業靴、ヘルメット、安全ベストなどの個人用保護具や衣服に埋め込まれたウェアラブルやリストバンドが建設現場で毎年発生する何千件ものけがや傷病を防ぐようになるという。のみならず、インテリジェンスを備えたIoT対応の腕時計や眼鏡、ブレスレット、帽子、履物などさまざまなものが急増するのに伴い、全ての業界で作業者の安全性が向上する新たな時代が到来するのだ。
コストがかかる事故を減らし、大切な人間生活を守るのに優れた可能性を秘めた多くのデバイスを幾つか以下に紹介する。
- 生体認証ウェアラブル:衣服やアクセサリーに埋め込まれるセンサー。このセンサーが体内や体外の要因を監視し、リスクを判断する情報をリアルタイムに取得し、早期警告信号を送信する。こうしたデバイスは、心拍数、体温などの生体信号を追跡することで、作業者の動き、反復動作、姿勢を監視し、スリップ、転倒、過労、過熱の事態が生じたときに警告を送信できる。
- 全地球測位システム(GPS)と位置追跡ツール:GPSや位置追跡ツールは作業者の位置を特定し、その移動経路を導き出す。また、安全な区域を設定し、逸脱時には警告を発して、危険地帯や有害な化学物質や薬物から作業者が安全な距離を保てるようにする。物流業界の場合、特に危険物を輸送する場合は、こうした監視機能によって輸送スタッフと商品の位置を正確に追跡し、タイムリーな到着を確保し、遅れが生じる場は対策を講じることができる。
- 耐久性の高いスマートフォン:電気、ガス、化学物質の危険を伴う業界、遠隔作業が条件になる業界、極度の高温や低温の過酷な環境が強いられる業界では、特殊な状況でも機能するように設計されたタッチスクリーンやキーボードを備え、手袋をはめた手での入力にも反応する耐久性の高いスマートフォンによって、高い水準の保護が提供される。センサーやプッシュツートーク機能を装備することで、軍事規格の耐久性を備えた、シームレスな通信、監視、リスク検知を可能にする。
安心と健康の感覚を提供する
幅広いデバイスでのIoTの導入と応用を実現するには、センサーが重要であり、現在進められているウェアラブルテクノロジーの開発と実装の中心に据えられている。調査企業IDTechExの予測が正確であれば、全世界のセンサー市場の規模は2018年度に推定50億ドル、2028年には1600億ドルに達すると見込まれる。企業向けウェアラブルデバイスは、フィットネスファンや健康マニアのぜいたくな小道具と見なされることはなくなり、科学から農業まで、あらゆる分野の作業現場を変える潜在能力がある。
世界初のスマートリングが登場して以来、AIやテクノロジーは進化を続けている。にもかかわらず、人間の本質はあまり変わっていない。人類が果たした幾つかの偉大な業績の根底には、単純性、安全性、利便性、速度の追求が前進の原動力として存在し続けている。
指輪型そろばんや電子の鼻と同様、今日の企業向けウェアラブルデバイスは、生産性の向上やリスクの低減といった明らかな利点を作業者にもたらしている。だが、より重要なのは、作業者が自覚を持つよう力を与えることにある。安心で健康だという感覚と、自身の行動を変える動機を身に付けることで、作業者は自身の健康と環境を自分でコントロールできると確信できる。これは職場でも私生活でも変わらない。
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