サーバレスはPaaSの再来か
コンテナ派とサーバレス派に分かれるIT部門 理想のインフラは?(2/2 ページ)
運用が追い付かない、サーバレスの普及を妨害する要因
業界関係者が語るところによると、メインフレームが使用されている限り、市場は新しいものに一斉にシフトすることはない。それがサーバレスとは根本的に違うものであればなおさらだ。毎度おなじみの話ではあるが、コンテナ、サーバレス、PaaS、その他のどれを選ぶかと聞かれれば多くのITプロフェッショナルは「場合による」と答える。
大企業の場合、サーバレスのアプローチは問題外というわけではないが、コンテナはクラウドプロバイダー、マネージドサービス、セルフマネージド環境において柔軟性を発揮する。
特化しているのがPaaSかコンテナかにかかわらず、どのクラウドプロバイダーも大規模企業の顧客を完全に受け入れることはできない。そう話すのは、ソフトウェア調達の企業でインフラアーキテクトを務めるジョン・ミッチェル氏だ。さらに、負荷が高いデータベースなどの大規模なステートフルアプリケーションの場合、サーバレスのアプローチはコンテナより費用がかさむ。そうしたアプリケーションはデータを常に高速処理し関数を絶えず呼び出すためだ。
「この20年間に分かったことがあるとすれば、ITエコシステムがシンプル化、小型化してはいないということだ。小さくなるどころか多様性を増している。この流れを変えるであろう歴史的な強制関数を私は知らない」(ミッチェル氏)
IBMのサンジーブ・シャルマ氏によれば、同社ではコンテナとサーバレスのどちらが優れているかという議論が急速に関心を高めているという。同氏はDevOpsの採用を必要とする企業を担当するディレクターで、著名なエンジニアでもある。IT運用がコンテナまたはサーバレスの管理に追い付くまでには長い時間がかかるだろうと同氏は話す。そのうちに、メインストリームITにとってコンテナはFaaSより概念をつかむのがずっと簡単になると考えられる。
「圧倒的大多数が仮想マシンやクラウドを正しく扱えていないのだから、コンテナとサーバレスを使いこなせるようになるとは思えない。コンテナとサーバレスは、現在実行しているもののインスタンスを桁違いに増大させる。組織の運用面や管理面をこのスケールに対応するよう整備しないのなら、一体これにどうやって対処するというのだろうか」(シャルマ氏)
また、他にも違いはある。コンテナはKubernetesにおいて複数クラウド間の相互運用性を実現しているのに対し、サーバレスのコミュニティーは統一されたオープンソースのアプローチをいまだ確立していない。オープンソースのFaaSプロジェクトは、その多くがクラウド間でKubernetesのような移植性を実現するとしているが、勝者はまだ出ていない。
結論は出ていないがサーバレスが勢いを増す
SAP Aribaのミッチェル氏は、エンタープライズアプリケーションの最新の開発について、その大半を構成するものが基盤となるサービスなどを呼び出すコードであることを認める。これに特に適しているのはサーバレスプラットフォームだ。
同氏はサーバレスがエンタープライズワークロードの大半を占めるようになるかどうかの予測まではしなかったが、それに賭けているITプロフェッショナルはいる。
「AWSの『API Gateway』やStep Functionsはワークフロー全体を管理できるようにする」と話すのは、自動車保険ソフトウェア企業Mitchell Internationalでソフトウェアエンジニアリングマネジャーを務めるリチャード・フォン氏だ。同氏はコンテナオーケストレーションプラットフォームを試したが、Lambdaを好んでいる。
サーバレスプラットフォームの背後は複雑だが、ユーザーはそのことや、アプリケーションに組み込まれている回復性を気に留める必要がないという。サーバレス環境における各関数はそれぞれが独立していて、停止した関数が他の関数に影響を与えることはない。
一方、AWSはコンテナ対サーバレスの議論における市場トレンドの代表的存在だ。同社は2017年秋に米国で開催した「AWS re:Invent 2017」で「Amazon Elastic Container Service for Kubernetes」と「AWS Fargate」を発表し、Kubernetesの勢いに屈した形だ。だが同時に、同社がLambdaへの高い野望に燃え続けていることも示している。同カンファレンスでは、同社の「Amazon Aurora」のサーバレス機能である「Amazon Aurora Serverless」というプロジェクトも発表された。これは多くのIT担当者が議論しているのと同じ種類のステートフルアプリケーションで、コンテナにのみ適している。
パロアルトを拠点とするWikibonでシニアアナリスト兼運用担当ゼネラルマネジャーを務めるスチュアート・ミニマン氏は次のように語る。「AWSは、顧客にあらゆる最高のオプションを連続的に提供することについて語った。だが同社はサーバレスの時代が来ると考えている」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー