調査会社Forresterレポート
人間はAI、RPAとどうコラボレーションをすべきか、先進事例を見る
人間と機械のコラボレーションが進めば、働き方はよりシンプルで生産的で人間らしいものになる――調査会社Forrester ResearchのAI、RPAに関するレポートを紹介する。
調査会社Forrester Researchが最近発表した報告書によると、企業が人間と機械のコラボレーションを推進すれば、働き方はよりシンプルで生産的で人間らしいものになるという。そのためにIT担当者が果たすべき役割がある。
同報告書によれば、企業は従業員エンゲージメントや従業員エクスペリエンスの向上のために多額の資金を費やしているが、あまり進展が見られないという。多くの企業ではレガシーシステムや統合しにくいアプリ、さまざまな規制とチャネルが混在し、従業員の仕事は複雑化する一方だ。
同報告書は、考えられる解決策の1つに人工知能(AI)の活用を挙げる。例えば、顧客対応に利用しているのと同様の対話型AI技術を従業員に応用し、ビジネスデータや知識、規則に関する質問に答えたり、単純作業を代行したりすることができる。
同報告書はITインフラとオペレーションの責任者を対象としている。これを執筆したクレイグ・ルクレア氏は「機械を恐れる必要はない。私たちは毎日いろいろなことを機械に頼っている」と述べ、人間にはGPS(全地球無線測位システム)のようなナビゲーションはできず、単純な検索エンジンのように膨大な数のWebサイトのコンテンツを記憶する力もないと指摘する。「こうした作業は機械の方が人間より得意であり、その急速な進歩が日々の仕事を支えている」(同氏)
ビジネスプロセスや社内オペレーションにAI技術を適用し、従業員がそれを活用して業務を効率化するように促進する役割は、企業とそのIT部門にかかっている、と同氏は述べている。
サイボーグの発想を取り入れよう
企業でAIを効果的に活用するための第一歩は、どの作業が人間に向いていて、どの作業が機械に向いているかを把握することだ。機械は、データの検索、相関性やパターンの照合、反復的なデータ入力、計算的推論やマルチチャネルコンテキストの把握、リスク管理などに優れている。一方、人間は、対話や共同作業、ブレインストーミング、感情分析、データと概念の結合、学習に優れている。
このように能力を分けることで、人間と機械のコラボレーションの可能性が広がり、人事、ITサービス管理、コールセンターサポート、財務アドバイザーサポート、保険仲介サポートなどの分野に利用機会があるという。
次の実例は、人間と機械のコラボレーションの効果的な活用を示している。
- ある保険会社は、ビジネスルールと機械学習、自然言語処理モデルを組み合わせた人事関連のAIアドバイザーを作成し、従業員の問題解決を支援している。
- ある世界的な金融機関では、個人年金口座の移し替えや新規口座開設など複雑な作業について担当者にアドバイスするチャットbotを作成した。
- ある保険会社では、無資格の担当者がテキスト入力で質問したり、無資格者が対応してもコンプライアンス違反にならない案件かどうかを確認したりできる仮想アシスタントを作成した。
- 金融、銀行グループのSEBは、社内のITサービスをサポートする認知アプリケーションを開発した。チャットbotとロボティックプロセスオートメーション(RPA)を組み合わせることで、「Microsoft Active Directory」アカウントのパスワードリセットやロック解除を行ったり、適切なITサービスソリューションを従業員に示したりする機能を作成した。
「SFの世界では、人間の頭脳と機械の身体を持ったサイボーグが登場する。企業の業務もサイボーグのように人間の役割と機械の役割に分けることができる。通常は“頭脳”の部分を人間が受け持ち、“身体”の部分の多くをAIやRPAに任せればいい」(ルクレア氏)
それは従業員にとって劇的な転換になる。現段階の目標は、従業員に「機械に助けを求めることに慣れてもらう」ことだ。
そのような転換を促進するためにCIOとITリーダーは何をすべきか。
「価値の低い仕事をbotに任せればキャリアアップやスキル向上につながること」を従業員に示し、「AIの開発においては(従業員と)コミュニケーションを密にして意見を聞き、トレーニングやフィードバックのプロセスに参加してもらう」ことをルクレア氏は勧める。
企業向けAIの導入では単に仕事を置き換えるのではなく再構築することが重要だと同氏は考えている。ITリーダーは、まず仕事を構成する具体的なタスクを全て割り出し、その中から特に価値が低くて面倒で単調なタスクを特定し、機械に分担させる。そうすれば、段階的にAIを導入でき、全てを一斉に置き換える必要がない。
「定型的な仕事は多い。パターン化した案件処理、データ入力、レポート作成、記録、書類作成などが多くを占めている。こうした仕事は作業が中心で、人間同士のやりとりはあまり重視されない。しかし、人間同士のやりとりこそ、やりがいを実感できる部分であり、AIを活用すればそこを充実させることができる」
残された課題
AIの導入は楽な道のりではない、とルクレア氏は警告し、職場で人間と機械のコラボレーションを推進する上で生じる課題を挙げた。
- AIによって、コントロール(意思決定)が人間から機械に移る可能性がある。これをどのように統制するか。
- 起こり得る弊害への対策。例えば、トレーニングに由来するバイアス(偏り)や透明性の低い意思決定によるブランド力低下や訴訟など。
- 変更への対応。自動化を進める上で従業員の受け止め方や不安にどのように対処するか。
AIの導入を検討するCIOへのアドバイスとして、「自動化を大局的な観点で捉える」ことをルクレア氏は強調する。
多様な自動化(単純なワークフローからRPAやAI、機械学習に至るまで)に分類可能なフレームワークに基づいて自動化運用モデルを構築することを同氏は勧める。また、用途に合わせた適切なレベルの自動化を会社に提言するのもCIOの役割であるとした。
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