新技術への反対勢力も、その便利さに驚く
「紙至上主義」から「デジタル至上主義」に切り替え成功 ワークフロー自動化の力とは
自動化ソフトウェアは、デスクトップPCやモバイル端末を利用するエンドユーザーのワークフローを簡素化するのに役立つ。紙文化が残る裁判所での成功事例を紹介する。
米ロサンゼルス上級裁判所は約5年前、エンドユーザーの全リソースをクラウドに移行する作業を開始した。この移行はIT管理に効果を上げた。だが従業員の業務プロセスの簡素化という面では課題が残った。複雑なワークフロー(システムの処理)をいかに自動化するかという問題だ。
組織が、紙による管理からデジタルによる管理への変換を目指す場合、定型業務を効率化するワークフロー自動化ソフトウェアを利用するケースが多い。同裁判所は「Microsoft Office 365」を導入した。判事やその他のスタッフが「SharePoint Online」などを利用してデータを保存、共有、編集するプロセスを効率化するためだ。1つのワークフローに5~10人のスタッフがかかわる場合、複数のアプリケーションやユーザーにまたがるプロセスを連携させなければならない。ワークフローのサービスを提供するNintexの自動化ソフトウェアが役立ったという。
同裁判所でSharePoint担当マネジャーを務めるマーコ・パーパ氏は「スタッフが必要とするシステムを構築できるようになった。われわれの目標は、スタッフが案件を処理し、有用な情報を得る能力を高めるシステムを構築することだ」と話す。
Nintexのワークフローアプリケーションを利用
調査会社Research and Marketsによると、ワークフロー自動化ソフトウェア市場の規模は、2023年までに173億ドルに達する見込みだ。これらのソフトウェアは、多くの企業が抱えている「紙によるプロセス管理」問題を克服できるかもしれない。
パーパ氏が率いる開発チームはNintexの製品である「Forms」と「Workflow」を利用し、約20種類のアプリケーションを開発した。これらは、従来紙を使って処理をしていた複数のタスクを、単一のワークフローに統合するのに役立つ。
これらのアプリケーションはいずれもSharePointと連携する。例えば、裁判所の判断に対する苦情が市民から寄せられた場合、スタッフはNintexのワークフローアプリケーションを使って、これらの投書に関連する情報(事件番号、原告氏名、担当判事など)をフォームに入力すれば、複数の関係者がSharePoint経由でデータを共有できる。トリガーを設定することも可能だ。例えば、監督担当判事が苦情に対応する必要がある場合には、Nintexアプリケーションから判事に通知を送ることができる。
「驚くほど多くの苦情が寄せられ、これらの投書の処理を管理するワークフローは複雑だ。ワークフローの自動化機能なしでは、こうした管理は不可能だ」とパーパ氏は語る。
同裁判所のスタッフは、デスクトップPCあるいはモバイル端末からOffice 365にアクセスできる。Nintexのワークフロー自動化ソフトウェアで作成したアプリケーションは、基本的にSharePointの拡張機能である。ユーザーはWebブラウザからURLを通じてこれらのアプリケーションにアクセスできる。パーパ氏によると、モバイル環境からSharePointのネイティブアプリを使用しないように、IT部門がスタッフに指示しているという。SharePointアプリからNintexのフォームを操作するのが簡単ではないことが理由だ。大型画面を備えたタブレットでWebを利用すれば、デスクトップと同じようにフォームを表示できるとIT部門はアドバイスしている。「長い情報リストの場合は、タブレットの方が読みやすい」とパーパ氏は話す。
パーパ氏によると、IT部門はまだ「Windows 10」に移行していないという。スタッフが同裁判所のクラウドベースのアプリケーションにアクセスするには「Internet Explorer 11」だけで十分だからだ。今では、ユーザーは自分のPCのデスクトップアプリケーションを利用しなくなっているため、Office 365に移行することにより、同裁判所は以前のようにOSに依存することがなくなった。「ブラウザがOSの代わりとなった」(パーパ氏)
Office 365への移行は、アプリケーションのメンテナンスとアップデートをMicrosoftに任せられることを意味する。言い換えれば、同裁判所のIT部門にとって時間と労力の両面で負担が軽減するということだ。
また、Nintexのワークフロー自動化ソフトウェアの導入は、ワークフローの簡素化を実現した。パーパ氏によると、8カ月にわたる評価プロセスの中で、同裁判所のIT部門は「K2」という競合製品も検討したが、このソフトウェアは開発環境が複雑だった。「Nintexのワークフロー自動化ソフトウェアが使いやすかったのは、開発基盤がC#に似ており、マウス操作(ポイント&クリックとドラッグ&ドロップ)で視覚的にアプリケーションを作成することができる」と同氏は語る。「開発フレームワークにメンバーを追加するのも実に簡単だ」(同氏)
Nintexのワークフローを作成する開発チームには、コンピュータサイエンスの知識があり、SharePointで約10年間の経験を持ったような専門家も含まれる。パーパ氏によると、若手スタッフにワークフロー自動化ソフトウェアの使い方をトレーニングするのも簡単で、短期間の研修でワークフローの作成方法を教えることができたという。だが、エンドユーザーが自分でワークフロー機能を作成できる段階には至っていない。
「恐らく、サポートの問い合わせが多くなるだろう」とパーパ氏は話す。既にIT部門の業務時間の20%がSharePointのサポートに費やされているという。「エンドユーザーによるワークフロー作成までサポートする余裕はない」と同氏は打ち明ける。
今のところ、ユーザーの反応は良好だ。パーパ氏によると、同裁判所で勤務する600人近くの判事の中には、いつも新技術の採用に抵抗する人がいるが、こうした人々も新しいワークフローには満足しているという。判事たちが最もよく使うアプリケーションでは、事件を担当する際に必要な情報のリストにアクセスし、確認する必要があるデータに関する通知をメールで受け取る作業をSharePointでできる。
「IT部門がこうしたワークフローアプリケーションの提供を始めると、ユーザーたちはもっと欲しいと言い出した」とパーパ氏は語る。Nintexとのライセンスは当初、ワークフロー単位で契約していたが、同裁判所はその後、最終的に何種類のアプリケーションが必要になるのか分からないまま、ワークフローを追加することはできないと判断した。このためパーパ氏はNintexと共同で、同社がそれまでワークフロー自動化ソフトウェアで提供していなかった新しいライセンス方式を策定した。これは、定額のサブスクリプション価格を支払い、ワークフローの数には制限がないという方式だ。「裁判所としては翌年の予定支払額を把握しておきたい」(同氏)
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