人事部はツールとルールの整備を
SlackやGoogleハングアウトが鍵に 従業員の士気と定着率を維持する6つの課題と解決策
人材の確保が困難な時代、企業の人事部門にとっては離職防止の施策の重要度が上がっている。従業員が「職場環境に満足している」かどうかを確認して士気と満足度を維持するための、6つの課題と対策を紹介する。
そう遠くない未来、あなたの会社にもロボットが労働力として導入されるかもしれないが、今事業を成功させたいなら、差し当たっては人という労働力をつかまえておく必要がある。今日の売り手市場においては、これは至難の業だ。実際、従業員維持という課題の解決は達成目標の中でも最優先課題となるはずである。
「しばしば見落としがちなのが、完全雇用の市場が従業員維持にどの程度影響を及ぼすかということだ」と採用担当者向けソフトウェアベンダーであり候補者追跡システムを提供するJazzHRの人事部長コーリー・バーキー氏は言う。「従業員が職場環境に満足しているなら、外部からの人材引き抜きに応じる可能性は常に低くなる」
従業員が「職場環境に満足している」かどうかを確認可能にするに当たって企業や人事部の統括者がしばしば直面している、従業員維持に関する6つの課題とその解決法を紹介する。
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一方、ネガティブな評価も
1.エンゲージメントを測定することから始める
従業員が自社にとどまるか、他社へ移ることを検討し始めるかに影響する要素は非常に多い。そのため、従業員の維持という課題に取り組むに当たって、どこから手を付ければよいかを見出すのは難題となるだろう。
企業はまず、従業員のエンゲージメント測定から着手するとよいとバーキー氏は提案する。「どのような会社でも改善の余地がある。しかし、まずは従業員の意見に耳を傾けることから始める必要がある」
良い実施例としては、定期的にフィードバックを与えたり、毎週1対1の面談を設定したり、フィードバックをもらうことによって常に変わり続けるさまざまな事象を把握したりすることなどが挙げられる。これらと綿密な調査を組み合わせることによって、従業員維持における特定の課題に焦点を当てることができる。「結果を見たらがくぜんとするかもしれない」とバーキー氏は言う。
この調査を担当・実施する人は「少々のことではへこたれない」ぐらいでなければならない、とパーキー氏は指摘した。自社に関する従業員の不満に耳を傾けるのは簡単なことではない。しかし、守りに入ったり、またはどうしてこれらの問題を見落としていたのかをくよくよと考えたりするよりも、改善することに重点を置くべきだ。「気を落とさずに改善して先へ進むことを考えよう」とバーキー氏は言う。
2.職場に関するネガティブな意見に対処する
現在、特に重要な従業員維持の課題の一つとして、企業のブランド力が重視される。新しく企業に入ってきた人が企業のブランドを肯定的に捉えなかった場合、他社へ移る選択を検討する可能性が高くなる。「この問題を解決するために企業が取れる基本的な対策は幾つかある」とBersin by Deloitte Consulting LLPで副社長兼人材獲得調査統括者のロビン・エリクソン氏は言う。
エリクソン氏は、自社に対する評価の良しあしの両方を把握するために、あらゆるWebサイトやジョブフォーラムを見て精査してみることを推奨する。さらに、自社の職場や社風をどのように捉えているかを探るために従業員にインタビューしてみる。特定の個人でも部門でもよいが、組織に献身的な人的リソースを他の人材やマーケティング部門と協働させて良好な仕事経験を育むことを検討するのも望ましい。「これらの努力によって、従業員がソーシャルメディアやジョブフォーラムで良い体験を話すことにつながる」とエリクソン氏は言う。さらに「ブランドが大きな組織内で一様に認知されていると思い込んではいけない」という指摘とともに「大企業は、領域別に人事部門から送るメッセージを変更する必要があるかもしれない」と付け加えた。
3.従業員の成長と職務変更を重視する
従業員は現在勤めている会社でキャリアパスが描けない場合、退職してしまう可能性が高くなる。「企業はしばしば、内部での昇進や他部署からの引き抜きに関して構造的障害を抱えている」とエリクソン氏は言う。
この問題を解決するには、企業は人材やキャリアの管理体制、学びと成長の機会、他部署からの人材の公募制度など全てを一体化し効果的なプロセスを構築し、最良の技術を導入する仕組みを確実に整えるべきである。これらを組み合わせれば、部門統括者が、従業員一人一人が新しい職務への備えとなるスキルを向上させるよう奨励や支援をし、結果としてキャリアプランを立てられるような企業文化を構築できる。
この従業員維持の課題を解決する上でもう1つ重要な要素が、社内における人材公募だ。従業員が社内公募にアクセスしたりキャリア開発リソースを利用できたり、人材を求めている人が適したスキルセットを持つ社内の候補者を見つけ出しコンタクトを取れるような社内情報ソースの構築をしよう。
従業員の採用や訓練、育成においてROI(投資利益率)を徹底的に追い求める考え方を取らないことも重要である。そのようなことをしてしまうと、従業員は息苦しく感じることになる。Deloitte Consulting Human Capital practiceの常務取締役バート・レア氏は次のように注意を促した。「息苦しく感じていたり、抑え込まれたりしている状態の従業員は職場環境に満足しているのとは真逆の状態だ。こうなると、従業員は諦めを抱き退職する可能性がある。さらに悪いケースでは、この状態に諦めを感じながら会社に残る選択をし得る」
現代の多くの従業員は仕事において、より速いペースで成長し、仕事が変わることを求めており、この傾向はミレニアル世代で特に顕著である。10万ドル以上の仕事を扱うキャリアサイトであるLaddersの最近の調査では、ミレニアル世代の80%が入社後2年以内に昇進したいと考えていることが分かった。「若い従業員には新しい業務に比較的速く移行させる『tours of duty(決められた期間内に目標を達成する働き方)』でさまざまな職務を短期間経験させる。この体験によって従業員は職場環境に満足できる」と、Laddersの編集ディレクターであるライアン・サガー氏は言う。
「『自分たちが会社にいるのを会社は当たり前のことだと思っている』と従業員に思わせないことだ。自分たちは評価されており、昇進していける環境があることを知ってもらう必要がある」(サガー氏)
4.従業員に権限を与え、信頼する
従業員は信頼されていない、自律できていないと感じると、退職する可能性が高くなる。単に仕事を任せて放っておけばよいというものではない。それは逆効果の結果を生むだろう。「信頼とは、信頼を寄せている人が成功するためのツールを与えることだ。そして、自力で仕事にトライさせ、失敗しても良いとすることだ」と面接の自動化やオンラインシミュレーションを提供するプラットフォームVervoeのCEOオメル・モラッド氏は言う。
仕事のやり方を教えるのは、マイクロマネジメントであり、信頼ではない。一方で完全に関知しないのも、信頼ではなく怠慢だ。従業員はツールやサポート、励まし、指導や助言、同僚からの意見を必要としている。失敗して学び改善する機会を与えられ、最終的に独力でできるようになりたいと考えている。
信頼して自律させる上で重要な他の側面としては、従業員が最も効果的に、集中して業務を遂行できる場所や時間、方法を柔軟に選べるようにすることにある。レア氏は、あるクライアント企業の例を挙げた。その会社は、職場環境に柔軟性を持たせる新しい取り組みを、誰かが近くで監督していなくても自律的に責任をもって仕事を完遂できると会社が判断した業績の高い従業員だけに展開したという。しかし、その取り組みの統括者は、「会社は全従業員を信頼しているわけではない」と受け取られかねないような、士気を落とすメッセージを発していたとすぐに気付き、この取り組みの対象を全従業員に拡大する決断をしたという。
5.旧式の仕事用ITツールを刷新する
多くの企業は、旧式のIT環境を従業員に貸与している。これが原因で、非常に優れた一部の人材が退職してしまう可能性がある。従業員は、スマートフォンで休暇の予約をするような、一般的になっているおなじみのツールやアプリを自分の仕事では利用できないことに疑問を感じる可能性がある。「常に最新の状態を維持する必要がある」とレア氏は言う。
しかし、明るく輝かしいわなにはまってはいけない。「世の中には、素晴らしい技術ではあるが、事業用途が明確になっていない技術がたくさんある」とレア氏は言う。新しいイノベーションや新しい考え方には常に注目しておく必要があるが、その技術がどのような事業に役立つかを常に自問自答する必要がある。初めから、どのような技術を導入するのかを紹介し、新機能への移行をサポートする方法を検討しよう。
6.従業員エクスペリエンスを最優先事項にする
企業が現在直面している最もありがちな従業員維持の課題が、従業員の期待に応える技術の提供である。最も役立つとされる技術でさえ、優れた従業員エクスペリエンスを促進できなければ企業の役に立たない。「従業員は、社内の他部署の人とやりとりをするのと同じように、企業内のチャネルを使用して人事部と連絡を取れることを期待している」と、人事書類管理サービス会社PeopleDocの最高人材活用責任者兼チーフエバンジェリスト役員アドリアーナ・ボーケル・ヘアダー氏は言う。「『Slack』または『Googleハングアウト』を介して一律的にコミュニケーションが取れることが今後重要な戦略となる」
優れた従業員エクスペリエンスは、単により優れた技術を従業員に提供することで完結するわけではない。企業はセルフサービスの方向にますます移行していっており、多くの人材管理作業は人事部ではなく各部署のマネジャーが担うようになっている。従って、マネジャーが自分の部下をサポートするために必要なコミュニケーションツールや、情報に即座にアクセスできる環境を提供することが不可欠だ。「部署移動や成果評価など完了すべきプロセスがある場合、これらのプロセスをサポートするツールは従業員エクスペリエンスを向上させるだけでなく、マネジャーのエクスペリエンスも向上させることが鍵となる」とボーケル・ヘアダー氏は言った。
従業員エクスペリエンスを向上させるためにどこに優先して投資すべきかの判断は非常に難しい課題だ。その判断には、従業員がどのような場合に、どのようなトピックに関してサポートを求めているかを把握する必要がある。標準化したシステムを介してやりとりを追跡することで、企業は問題を特定し、対処できるだろう。
「従業員エンゲージメントはまだ十分とは言えない」と、ボーケル・ヘアダー氏は言う。「従業員はキャリアを積み業務を行う上で理解され、サポートされることを望んでいる」
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