業界の半分の離職率を達成
「7カ月続いたら良い方」離職率の高い職場を変えた“不満を見極める”機械学習
コールセンターの離職に歯止めをかけるために始めた機械学習で、離職率が大幅に改善したという。ITサービスベンダーTELUS InternationalのCIOが解説する。
コールセンターを運営するITサービスベンダーTELUS InternationalのCIO(最高情報責任者)マイケル・リングマン氏は多忙を極めている。
リングマン氏はCEO直属の部下だ。300人のチームを率いて同社の社内IT運用を監督しながら、デジタル変革への取り組みに苦労する顧客に、専門知識を提供する3000人のチームの指揮も執っている。その上、機械学習などの高度な分析技法を実験する同社のデータサイエンティストの大多数を監督する。
そのリングマン氏が、コールセンタービジネスで大きな問題になっているスタッフの離職率を抑えるためにITチームが引き受けた機械学習のユースケースについて解説する。
――社内IT運用のリーダーとして、機械学習を自社にどのように取り入れていますか。
リングマン氏IT部門の社内での役割は、当部門の実践を通じて、コールセンターの効率をできる限り高めることだ。そのため、幾つかの統計分析をスタッフの離職率などに応用し始めている。会社を去ろうとしているスタッフをもっと早く見極めることはできないだろうか。そしてその事実を企業全体に警告し、その従業員にプラスの影響を与えて会社にとどまるように説得できないだろうかと考えた。
これは、コールセンター事業に大きな意味を持つ。非常にコストがかかることの1つがスタッフのトレーニングだ。ほとんどの企業では、コールセンターのスタッフが7カ月その仕事を続けたら運が良いといえる。この仕事は、どの会社で担当するとしても、暫定的な職務とみられている。当社は、スタッフを採用する方法や、人事ポートフォリオ全体に機械学習をどのように生かせるかを検討するなど、幾つか手段を講じて退職を考えているスタッフを見極めやすくしている。現在、同社のスタッフ離職率は業界平均の半分になっている。
平均の50%未満の離職率が全て機械学習とデータ分析によるものだとは言わない。だが、当部門が社内でこの種のことを調査して、全体的なコストの削減と顧客に価値をもたらす方法を理解しようとしているのは確かだ。
――データサイエンティストのチームは、どのような課題に直面しましたか。
リングマン氏スタッフの離職に関して検討できるデータソースは大量にあった。例えば、応募時の履歴書、採用された方法、初期トレーニングの様子、誰が監督を担当したかなどだ。この種のデータは全て保存されている。
チームがデータを人事部門に持参すると「これはすごい。ぜひ詳しく調査しよう」となった。チームは、どうすれば分析によって離職を考えているスタッフを適切に見極められるようになるかを解明しようとした。そのためには、素早く焦点を絞り込み、離職を考えているスタッフのグループを抽出する必要があった。そのグループに特別なトレーニングクラスを用意するか、それともそのグループが抱えるさらなる兆候を幾つか絞り込んで定義すべきかを考えた。この作業は簡単ではないため、何度も失敗する覚悟をしておいた方が良い。
離職の初期の兆候と考えられるものを調査すれば、スタッフのトレーニングが離職に全く関係ないか、それとも非常に大きな影響を与えるかが明らかになるだろう。そのため、スタッフの離職率のような複雑な事柄を特定するのに必要な種類のデータソースを調査し、絞り込み、理解する必要がある。最終的には特定のパラメーター内で判断できるかもしれない。だが、100%解明することは決してできないだろう。
――今回のユースケースでは、どのようにパラメーターを特定しましたか。
リングマン氏チームが実施したのは、非常に狭い範囲から始める方法だ。保持している全てのデータと分析を使ってスタッフの離職を見極めるのに役立つ仮説を作成した。チームは、分析するデータセットを用意し、データサイエンティストが数学アルゴリズムを駆使して、これらの分析をもとに離職する恐れのあるスタッフのグループがどのようなものかを予測した。サイエンティストはこのような分析セット全体を見て、離職するスタッフを予測するモデルを作成する。その後、モデルの出力を実際の離職率と比較する。モデルが100人のスタッフを分析してそのうち10人が離職の恐れがあるとし、7人が実際に離職したら、モデルの成功率は非常に高い。
これは後方分析になる。次に、この調査結果を新しいデータセットに当てはめ、予測の正確性を高めていく。データセットも拡大し続けた。その結果、70%、80%、90%と離職するスタッフを見極める確率を高めていく。チームは再度人事部門に出向き、幾つか明確な兆候を伝えることができた。それは、スタッフが離職する傾向が高いことを示す強い兆候だ。そして、1人で全てのデータを調べただけでは見つけることが難しい、離職の幾つかの原因の解明に着手した。
小さいデータセットから始めて、徐々に大きくする。機械学習はすぐには90%や100%の確率はもたらさないかもしれない。だが、企業全体では良い傾向が見られるようになる。
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