回路設計の見直しも必要に
「IoTの暗号化」に代わる3つのセキュリティ対策、それぞれの長所と短所は?
IoTデバイスのセキュリティ対策として、暗号化に代わる3つの対策「PUF電子回路」「パブリッシュ/サブスクライブ方式のプロトコル」「Entropy as a Service」を紹介する。
電力の消費とコンピューティング能力への負荷を抑えながら、モノのインターネット(IoT)やコネクテッドデバイスのセキュリティ確保に努めることは、まるで永遠の課題のように思える。セキュリティ確保の大きな課題になるのは暗号化だ。IoTやコネクテッドデバイスの多くは、標準的な暗号の処理に必要な能力を備えていない。
本稿では、IoT暗号化に代わる3つの対策について考える。
- PUF電子回路
- フォグコンピューティングを基にするパブリッシュ/サブスクライブ方式のプロトコルにおける楕円曲線暗号
- Entropy as a Service
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「IoT」の基礎
対策1:PUF電子回路
IoTシステムはメモリサイズが小さい。そのため、暗号化や計算能力が物理的に制限を受ける可能性がある。IoT暗号化問題の解決策の1つがPUF(Physical Unclonable Function)電子回路だ。この回路は、異なるチップでは複製できない機密の秘密鍵をランダムに生成する。
PUFはチップの製造時に自然に生じる物理的な差異に基づく。PUFはデバイス固有のチップの個体差を利用して、そのデバイスの一意IDを作り出す。秘密鍵はメッセージの転送前に署名の準備が整った時点で生成されるため、デバイス所有者が秘密鍵にアクセスすることはない。秘密鍵はマイクロコントローラーの小さなメモリマップには保管できないため、不要になると破棄される。
デバイスのメーカーが異なれば、IoTデバイス向けのPUFテクノロジーの利用方法も異なる。通常のシナリオでは、デバイスメーカーはデバイスにコマンドを発行して、秘密鍵に対応する公開鍵を算出できる。メーカーは、その公開鍵に署名するため、企業の秘密鍵が必要になる。証明書は、デバイスが提示する公開鍵とメーカーが作成した公開鍵が一致することをさらに確認する。デバイスの導入後、メッセージ受信者は秘密鍵だけを所持し、メッセージを送信したデバイスを確認する。
カリフォルニア大学の研究者は、幾つか不安定なPUFが見つかったので、複数のPUFテクノロジーを用意することを提案している。安定したPUFとデジタルパブリックPUFによって、データのセキュリティが高まる。
対策2:パブリッシュ/サブスクライブ方式のフォグコンピューティングにおける楕円曲線暗号
情報源に近いIoTデバイスのイベントを処理して応答速度を上げるため、フォグコンピューティングの利用が増えている。パブリッシュ/サブスクライブ方式のプロトコルは、送信(パブリッシュ)側当事者と受信(サブスクライブ)側当事者を切り離す場合に使用されている。この方式では、MQTT(Message Queue Telemetry Transport)やAMQP(Advanced Message Queuing Protocol)のようなメッセージブローカーが新しいメッセージを全てのサブスクライバーに送信する。
フォグコンピューティングを基にしたパブリッシュ/サブスクライブ方式のプロトコルを導入する場合の1つの問題は、リソースに制約のあるIoTデバイス向けのセキュリティメカニズムが存在しないことだ。SSLやTLSのような従来のプロトコルはリソースを大量に使って、セキュリティが確保されないネットワーク経由での通信を暗号化する。フォグネットワークシステムが大きくなると、パフォーマンスのオーバーヘッドが増加する。
ラトローブ大学の研究者は、SSLプロトコルとTLSプロトコルの脆弱(ぜいじゃく)性を示すために、中間者攻撃のシナリオを用意した。研究者はホワイトハッカーとして、サブスクライバー、パブリッシャー、フォグブローカーの間でメッセージを交換した。送受信全体が研究者の支配下に置かれていたが、サブスクライバーとパブリッシャーの両当事者で相互に直接通信していると確信していた。
IoTの暗号化の課題に対応するため、研究者は楕円曲線暗号(ECC)を使用して、パブリッシュ/サブスクライブ方式の軽量プロトコルを基にフォグコンピューティングのセキュリティを確保することを提案した。ECCによって、鍵が短くなり、メッセージサイズも小さくなって、リソース使用量も下がる。さらに、フォグノードはIoTノードと極めて近く、IoTノードの一部のコンピューティング処理やストレージのオーバーヘッドを解消する。軽量の手法を組み合わせることで、SSLやTLSが採用するRSAベースの手法よりもスケーラビリティが上がり、オーバーヘッドが削減される。
対策3:Entropy as a Service
強力な暗号化は、ノートPC、ワークステーション、サーバにあるデータのセキュリティを確保する。こうした環境には、暗号鍵をランダムに算出できる適度なリソースがある。IoTデバイスは小型でリソースに制約のあるヘッドレス型や内蔵型になることが多い。こうしたIoTデバイスで機能するように、さまざまな軽量の暗号鍵が導入されている。IoTデバイスから取得するエントロピーのランダムデータは、強力な暗号鍵を生成するには不十分だ。IoTデバイスにはマウスの動きなど、信頼できるエントロピーソースが足りないため、エントロピーは枯渇する。推測が難しいランダムデータの生成には、ノートPCの各種HDD特性が必要になる。
軽量の暗号にまつわる課題を克服するため、米国立標準技術研究所(NIST)は、IoTデバイスに時間と量子によるエントロピーソースを提供するEntropy as a Service(EaaS)を推奨している。主なコンポーネントは、クライアントシステムにおける量子エントロピーデバイス、EaaSサーバ、ハードウェアRoot Of Trustデバイスだ。ハードウェアRoot Of Trustデバイスには、TPM(Trusted Platform Module)、Intelの「アイデンティティー・プロテクション・テクノロジー」、ARMの「TrustZone」などがある。
NISTによると、EaaSは鍵を生成することはないが、クライアントシステムでの強力な暗号鍵の生成を可能にするという。EaaSはIoTデバイスへの起動時にエントロピーをデバイスに提供するため、EaaSサーバには、クライアントシステムが鍵を生成する方法を認識する手段がない。サービスからクライアントにエントロピーペイロードを転送するため、EaaSはHTTPを使用する。一方、サーバはクライアントから提供される公開鍵を使用してデータを暗号化する。転送を完了するため、サーバは独自の秘密鍵を使用して、ペイロードにデジタル署名をする。
結論
エネルギー消費量の少ないエントロピーを増やすため、IoTの回路は設計の見直しが必要になる。やがて、暗号化対策は完全なものへと成長し、リソースに制約があり、エントロピーが足りないIoTデバイスのセキュリティを確保する課題に対応できるようになるだろう。
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