ビジネスプロセスを変えるスマート製造テクノロジー
AIやARで実現 エンジンの部品交換が人手を介さず自動的に完了する未来
思い描いた未来が現実になる。AIの使用可能性とスマート製造テクノロジーによって、現在のビジネスシステムに変革が起きている。製造業では間もなく自律型のサプライチェーンが登場するだろう。
パリからボストンに向かって飛行中、エンジンの燃料ノズルに取り付けられたセンサーが過剰摩耗を警告する信号を発したというシナリオを想像してみよう。着陸したら、航空会社は交換部品を探し、取り付ける。その間、当該機は数時間から数日にわたって運航を中止することになる。
そのプロセス全体には時間とコストがかかり、乗客にとっても搭乗員にとっても不便だ。だが、もっと優れた方法がある。それがスマート製造テクノロジー、そしてAI(人工知能)対応のビジネスプロセスとシステムだ。こう話すのは、テクノロジーの未来を研究するコンサルタント、ジャック・ショー氏だ。「現在、AI対応のビジネスエコシステムにはデジタル変革が起きている」――米国で2018年5月に開催された「Smart Manufacturing Experience」のプレゼンテーションで、ショー氏はこのように語った。
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インダストリー4.0とは
自律型の自己完結型プロセス
スマート製造テクノロジーのエコシステムでは自律型の自己完結型部品交換プロセスが生まれている。このプロセスは現状よりもコストや時間がかからない。
エンジンのノズルに組み込まれたインダストリアルIoT(IIoT)スマートセンサー回路によって、飛行機の自律型メンテナンスシステムがトリガーされ、このプロセスが始まる。そして、飛行機がボストンに着陸したときに交換が必要な部品を伝えるメッセージが航空会社の総合メンテナンスシステムに送られる。
この通知は航空会社の総合調達システムに送られる。調達システムは数千のWebサイトを探し回り、米国連邦航空局(FAA)の認定を受けた部品供給業者を特定する。その後、調達条件をその供給業者のAI対応注文管理システムと交渉し、部品を調達するためスマートコントラクトを実行する。調達契約が認可されたら、燃料ノズル部品の設計ファイルがボストン空港近くに設置された3Dプリンタにダウンロードされる。欠陥のある部品を特定し、設計ファイルを3Dプリンタにダウンロードするまでのプロセスにかかる時間は4分未満だ。しかも、人間の介入は不要だとショー氏は述べる。
だが、このスマート製造テクノロジーとAI対応のエコシステムはこれで終わりではない。自動調達プロセスでは、この特定の部品を交換した経験のある技術者のうち、その作業に取り掛かれる技術者が特定され選択される。次に、この部品を取り付ける技術者は拡張現実(AR)ゴーグルを着用し、取り付け作業中、交換プロセス全体に関する3D動画をその部品に直接表示する。それにより、正しい工程に従っていることを確認する。そのゴーグルは、航空会社とFAAの両方の記録用にその工程が動画を録画する。取り付けが完了したら、ノズルのIIoTセンサーによって航空会社のメンテナンスシステムとの自己診断通信が自動的にトリガーされる。
航空会社の調達システムに部品が取り付けられたことが通知される。これによりスマートコントラクトが更新され、部品と、その取り付けに関するエンジニアリングサービスの料金が供給業者に支払われる。
「これら全てが実現する見込みがある。問題は、プロセス、システム、エコシステム全体においてこのレベルの革新を実現するものは何かということだ。多数の変革的なテクノロジーが関与するのは間違いない。例えば、IIoT、3Dプリント、AIや、その他の重要な新しいスマート製造テクノロジーなどだ」とショー氏は語る。
3Dプリントと新しいビジネスモデル
ショー氏によると、事を可能にするテクノロジーとして、3Dプリントは大きく進化しているという。初期の3Dプリントは試作品の作成や、治具や取り付け具のような製造支援テクノロジーだった。だが、今では運用部品を製作できるようになっている。
「多くの場合、部品の製造は1カ所の一元管理される製造現場ではなく、消費現場の近くで行われるようになるだろう。製造現場で製造した部品は、使われる場所まで輸送するコストがかかる。つまり、在庫を持たないサプライチェーンが増えることになる。航空会社が部品を在庫として保持していなくても問題ない。数時間あれば、利用可能な部品が3Dプリントされる」
この新しいテクノロジーにより、UberやAirbnbの共有経済に倣った全く新しいビジネスモデルも実現することになる。このような共有経済では所有よりも利用に重点が置かれる。General Electric(GE)は「時間単位動力」モデルに取り組んでいるとショー氏は述べる。このモデルでは航空会社にジェットエンジンを丸ごと販売するのではなく、GEがその管理と運用を行う。初期コストを支払った後、航空会社はエンジンを稼働させたときにGEに1時間単位で料金を支払う。
ショー氏は次のように説明する。「これにより、多額の固定費が使用量と連動した変動費に変わる。こちらの方が航空会社のコスト管理要件に沿っている。また、エンジンの稼働を確実に保つことがGEの責任になるため、GEは継続的に時間単位でその料金を請求できる。各エンジンを注意深く監視することが同社の財務的な最大の関心事になる。これらの新しいテクノロジーが進化し続けるにつれ、このような変化は増えていくだろう。主要資本項目に関しては特にそうなる」
自律型企業の増加
スマート製造テクノロジーとAI対応のシステムの導入が自律型企業の実現につながるとショー氏は主張する。自律型企業では、一部の機能が自ら考えるように進化する。その際、AIに加えて、センサーデータやIIoT、さらには3DプリントやARなどの機能が併用されるという。「製造会社での日常業務は人が関与することなく自動的に行われるようになる。ただし、これらの管理と指揮を人間の管理者、幹部、エンジニア、技術的専門家が担当することは変わらない」
この変化が最初に起きるのは企業内のプロセスだ。製造、調達、サプライチェーン管理などがその例だ。だが、最終的には企業全体に広がり、ビジネスエコシステム全体が変革されることになる。「自律型のサプライチェーンが登場するようになる。そこでは、部品や素材、製品やサービス、情報や金銭が企業や人の間を流れていく。その全ては、これらのシステムやプロセスの所有者や管理者が定めた目標に従う」とショー氏は話す。
請求書の処理など、一部の機能は付加価値がなくなる時点で消えることになる。その一方で、新しいテクノロジーに適合するものもあるだろう。調達プロセスがなくなることはない。企業は部品、素材、リソースの新しいプロバイダーを常に探し求めるためだ。だが、ショー氏の説明によると、調達は進化を続けることで高度に自動化されるという。
スマート製造テクノロジーとAI対応のビジネス変革は、組織的な努力がなければ実現しない。企業は考え方を変え、物事をより適切に行えるようになる必要がある。変化するためだけに変わってはならない。
「ビジネスプロセスに変更を加える必要がある。恐らく、根本的なビジネスモデルを変えなければならないだろう。変わりゆくビジネスエコシステムにおいて価値を高めるために、中核技術をより適切な方法で活用するためだ。近い将来、企業ではこうしたことに取り組むことになる」(ショー氏)
スマート製造戦略に必要なのは明確な目標
スマート製造テクノロジーを導入するには、慎重な管理に加え、明確な期待と目標が必要になる。Boston Consulting Groupの社長を務めるジャスティン・アーマッド氏はそう述べる。同氏も「Smart Manufacturing Experience」カンファレンスで講演を行った1人だ。
スマート製造の取り組みでは、付加価値があり、コスト効率に優れた方法で企業の弱点に対処し、問題を解決しなければならないとアーマッド氏はいう。
「全体的に見て、製品を構築する工場や従業員に関与し、職務上の枠を超えたチームを作る上で重要なことがある。それは、企業の実際の弱点を解決するために、こうしたビジョンの形成や設計が行われるようにすることだ。導入する1つか2つのテクノロジーによる特効薬的なソリューションとは見なさないようにする。企業経営者に提示した用途に経営者がビジネス価値を見いだせば資金を援助してもらえるだろう。だが、明確な価値がなかったり、戦略の集まりにつながりがなかったりすれば、こうした取り組みを一部推進する上で不可欠な広範なチームと勢いを整えることは難しい」(アーマッド氏)
スマート製造戦略で成功を収めるには、短期的な価値を生み出す必要があるとアーマッド氏は述べる。それがひいては、自己資金で稼働するプログラムの作成を後押しし、次の進化の波へとつながる。また、容認できるリスクレベルを取り入れるべきだという。
「保守的になり過ぎることは勧めないが、度を超して資金を浪費したくもないだろう。所属企業に合わせてバランスを取ることが必要だ」(アーマッド氏)
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